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【映画#75】「女が階段を上る時」『空の冒険』より

こんにちは、三太です。

来週から1学期の期末考査が始まります。
生徒も教師も考査に向けて頑張っています。
それが終わるといよいよ夏休みも近づいてくるなと思っている今日この頃です。

では、今日は『空の冒険』に出てきた映画、「女が階段を上る時」を見ていきます。
『空の冒険』に出てくる17作の映画のうちの1作目です。

基本情報

監督:成瀬巳喜男
出演者:圭子(高峰秀子)
    藤崎=銀行支店長(森雅之)
    小松=マネージャー(仲代達矢)
    関根=工場主(加東大介)
上映時間:1時間50分
公開:1960年

あらすじ

銀座のバーで働く未亡人のママ、圭子
数年前にトラックにはねられ夫が他界。
その夫の死に際し終生、夫だけを思い続ける(=他の誰にも体を許さない)という手紙を書いて骨壺に入れます。

その美貌が銀座のマネージャー、こまっちゃんの目に留まり、銀座のバーで働くことに。
銀座のバーの世界は結婚か店を持つかが終着駅という価値観で、そこで好きでもないお酒を飲みながら客の接待をして、身を粉にして働く圭子。
しかし、夫への誓いがあったのでどんなことがあろうと一線を越えることはなく、5年が過ぎました。
そんな圭子をライバルの女性の自殺、自身の体調不良、兄からのお金の無心、男性客とのトラブルなど様々な試練が襲います。
それでも階段を上る女の強さ。
階段を上るとはすなわちバーで働くということ
銀座のママとそれを取り巻く人々のリアルな人間模様が描かれた映画です。

設定

・銀座のバー
・女の戦う世界
・未亡人

感想

高峰秀子が演じるママ、圭子が美しいです。
ただ、外見やその立ち居振る舞いが美しいだけではなく、その裏側に隠れたリアルな欲望や人間的弱さもしっかり描かれています。
そこがこの映画の見どころだと思いました。
圭子はライバルのママとバチバチのやり合いをしますし、色んな試練が訪れ、追い詰められたときに、酔いつぶれて男性客に体を許してしまいます。
そんな人間的弱さは圭子だけに限らず、マネージャーであるこまっちゃんやバーに通う男性客も同じです。
こまっちゃんはずっと圭子に気があって、ただマネージャーとして店の女性に手を出すことは我慢していましたが、どうしても我慢しきれずバーにいる他の女の子に手を出してしまうなどのシーンがあります。
そんな感じの人間的弱さの見られるシーンが一つ一つ丁寧に描かれていく作品です。
それでも最後にあるシーン、まさにこの映画のタイトルにもなっているシーンが映画のメッセージとなっています。
圭子は「階段を上る時が一番嫌だった」ということを冒頭に言っているのですが、色んな試練があっても、それでも最後に階段を上ります。
人間の弱さを描くとともに、それに抗おうともがく人間の強さ、特に女性の強さをこの映画は描きたかったのだと感じました。

階段を上る女の冷奴

その他

ウィキペディアより
→成瀬と高峰によるコラボレート映画の代表作の一つ

→成瀬は女性映画の名手として知られており、とくに高峰秀子とのコンビによる多数の作品を手がける。

→森雅之の父は小説家の有島武郎。

『空の冒険』内の「女が階段を上る時」登場シーン

短篇のタイトルの一つとして出てきます。 

吉田修一が書いた「女が階段を上る時」はみつこという語り手が、東北から上京して色々あった過去を振り返る話です。
みつこはアイドルが好きで上京します。
高校時代にずっと追いかけていたのは本城真人という男性アイドル。
始めて追いかけた男性アイドルでもあります。
その本城の人生の浮き沈みとともに、みつこの人生も浮き沈みする様が描かれます。
映画との共通点としては「女性に試練が訪れるということ」「頑張れるための支えがいること」が挙げられます。
相違点は、小説の方は試練を乗り越えたあとの様子も少し描かれているところです。

吉田修一作品とのつながり

2022年1月31日の文春オンラインの記事、

「20代男性と80代女性の恋愛物語はなぜ成立しづらいんだろう」 吉田修一が“優しい物語”を描くときに思い出した“叔母の一言”
吉田修一さんインタビュー#2

 
に、次のような記述がありました。

――吉田さんはもともと、幅広く映画を御覧になっていますよね。昔の日本映画で好きな監督や作品は?
吉田 あちこちで言っているんですが、成瀬巳喜男監督の映画は大好き。決して派手ではないけれど、日常におけるドラマティックなことが洗練された形で表現されているんです。たとえば『女が階段を上がる時』という映画は、主演の高峰秀子さんが演じる銀座のバーの雇われマダムが、ちょっと男に騙されるというだけの話なんですけれど、これがなんとも味わいがあって。騙される顛末や登場人物ひとりひとりにリアリティがありますし、ちゃんと最終的に“階段を上る”という、女性の力強さを感じさせる作りになっている。成瀬作品は、人間が生きていく上でのしぶとさみたいなものを感じさせるところが好きですね。

まさにこの記事では、今回取り上げた「女が階段を上る時」について語られていました。
吉田修一さんが成瀬巳喜男監督作品好きということもここからわかります。
また、その他で書いたことも含めて言えるのは、吉田修一さんも成瀬巳喜男監督も「女性を描くのが得意」という点で通じるのかなと思いました。
成瀬巳喜男さんの映画をもっと見てもいいのかもしれません。

以上で、「女が階段を上る時」については終わります。
初めて見た成瀬巳喜男監督作品でした。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

画像の出典:Amazon「女が階段を上る時」

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