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映画感想『身代わり忠臣蔵』

10歳のムスメも笑って泣いて、楽しんでいた。
忠臣蔵を知らなくても、ムロツヨシが好きなら大丈夫。

とにかく「ムロツヨシ劇場」。
彼が全力で作り出す笑いを、楽しむ映画。

※以下、ネタバレを含みます。

あらすじ
吉良上野介(ムロ)は、家柄と権力をかさにきた嫌な奴で、浅野内匠頭(尾上右近)に斬られて傷を負う。傷は深く、上野介は寝ついてしまう。
上野介には、孝証(たかあき。ムロの二役)という弟がいる。当主が健在である限り孝証は厄介なだけの存在で、吉良家から追い出され、極貧生活を送っている。
お家のため、斎藤宮内(林遣都)は当面の間、孝証に上野介のフリをさせる。
孝証は、上野介が回復するまで僅かの間という約束で、大金のために身代わりを引き受けるのだが、上野介は傷がもとで死んでしまう。
お家の存続のため、上野介のフリを続ける羽目になる孝証。
世間でも上野介の評判は悪く、特にお家断絶となった浅野家の家臣は、仇討ちを企む気配がある。
しかし側用人の柳沢吉保(柄本明)の態度を見れば、幕府は助けるどころか、赤穂浪士に討ち入りさせて吉良家も潰してしまおうという意図は明らか。
兄の非道は償いたい、しかし吉良家の家臣も守りたい。
孝証は大石内蔵助(永山瑛太)と、大芝居に出る。

吉良家に仕える斎藤宮内が林遣都。
笑いの間合いが良いので、ムロとの掛け合いには映画館でもクスクス笑いが起きる。

大石内蔵助は永山瑛太。
飾らない優しさ、家老としての苦悩、お座敷遊びなど、人間味のあるシーンが多いわりに、いまひとつ魅力に欠ける。それぞれのシーンを貫く芯というか内蔵助像があらわれてこない。
大石内蔵助が魅力的であれば、最後の孝証の「大石が死んじゃった…!」という号泣シーンは、もっと涙を誘ったはずで、もったいなかった。

森崎ウィンが堀部安兵衛。
橋の下で人相書きを斬るシーンは、刀を鞘に収める仕草が非常に美しい。
このシーンだけ良かったのか、殺陣(たて)もいいのか見たかったが、清水一学との斬り合いが短すぎて判断できず。

清水一学(寛一郎)は、謎センスぶりが面白い。残念キャラの前半から、後半での意外な活躍へと変化する美味しい役で、マンガめいた雰囲気でうまく表現している。

尾上右近が浅野内匠頭。
短い登場シーンの中でも、短気な性格と、殿様の清々しいオーラを見せて、後半まで赤穂浪士の仇討ちの志の根拠たり得ている。

片岡源五右衛門は廣瀬智紀。
この人が、ただひとり、赤穂浪士らしかった。
尾上右近と、柄本明と、廣瀬智紀。
この3人だけが、この映画の中で時代劇の空気を持っていた。

もしも上野介が、松の廊下の後は別人だったら? という設定が特異であるものの、ほかは忠臣蔵の基本的なストーリー。
上野介は首を取られ、大石はじめ討ち入りした赤穂浪士が切腹という筋も変わらない。

正直、いまさら忠臣蔵映画? という気持ちもある。
広く知られたストーリーは、「誰(役者)で見るか」になるので、「吉良をムロツヨシがする」ことに興味があれば、忠臣蔵を知っていても楽しめる。

ムロが作り出す、悲哀と笑いの絶妙なバランスがあって成り立っている映画。
原作を読んでいないので映画だけの感想になるが、ひどい扱いを受ける孝証の姿も、おかしさを交えて表現できるのはムロツヨシだからこそ。

とはいえ、斬り落とした首を、ラグビーのように投げ渡しながら進むところは、途中で蹴ったりスクラム組んだりもあるので、カボチャによるダミーが言い訳としても、笑いか不快か、感じ方が分かれるところかもしれない。
わたしは、おいおい、と思った。

最後に。
東京スカパラダイスオーケストラによるエンディングテーマが、かっこいい。
エンドロールのあとにオマケ映像などは無いのだが(せっかくのムロなのに)、曲がかっこよかったので、まあいいか。

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