映画感想『身代わり忠臣蔵』
10歳のムスメも笑って泣いて、楽しんでいた。
忠臣蔵を知らなくても、ムロツヨシが好きなら大丈夫。
とにかく「ムロツヨシ劇場」。
彼が全力で作り出す笑いを、楽しむ映画。
※以下、ネタバレを含みます。
吉良家に仕える斎藤宮内が林遣都。
笑いの間合いが良いので、ムロとの掛け合いには映画館でもクスクス笑いが起きる。
大石内蔵助は永山瑛太。
飾らない優しさ、家老としての苦悩、お座敷遊びなど、人間味のあるシーンが多いわりに、いまひとつ魅力に欠ける。それぞれのシーンを貫く芯というか内蔵助像があらわれてこない。
大石内蔵助が魅力的であれば、最後の孝証の「大石が死んじゃった…!」という号泣シーンは、もっと涙を誘ったはずで、もったいなかった。
森崎ウィンが堀部安兵衛。
橋の下で人相書きを斬るシーンは、刀を鞘に収める仕草が非常に美しい。
このシーンだけ良かったのか、殺陣(たて)もいいのか見たかったが、清水一学との斬り合いが短すぎて判断できず。
清水一学(寛一郎)は、謎センスぶりが面白い。残念キャラの前半から、後半での意外な活躍へと変化する美味しい役で、マンガめいた雰囲気でうまく表現している。
尾上右近が浅野内匠頭。
短い登場シーンの中でも、短気な性格と、殿様の清々しいオーラを見せて、後半まで赤穂浪士の仇討ちの志の根拠たり得ている。
片岡源五右衛門は廣瀬智紀。
この人が、ただひとり、赤穂浪士らしかった。
尾上右近と、柄本明と、廣瀬智紀。
この3人だけが、この映画の中で時代劇の空気を持っていた。
もしも上野介が、松の廊下の後は別人だったら? という設定が特異であるものの、ほかは忠臣蔵の基本的なストーリー。
上野介は首を取られ、大石はじめ討ち入りした赤穂浪士が切腹という筋も変わらない。
正直、いまさら忠臣蔵映画? という気持ちもある。
広く知られたストーリーは、「誰(役者)で見るか」になるので、「吉良をムロツヨシがする」ことに興味があれば、忠臣蔵を知っていても楽しめる。
ムロが作り出す、悲哀と笑いの絶妙なバランスがあって成り立っている映画。
原作を読んでいないので映画だけの感想になるが、ひどい扱いを受ける孝証の姿も、おかしさを交えて表現できるのはムロツヨシだからこそ。
とはいえ、斬り落とした首を、ラグビーのように投げ渡しながら進むところは、途中で蹴ったりスクラム組んだりもあるので、カボチャによるダミーが言い訳としても、笑いか不快か、感じ方が分かれるところかもしれない。
わたしは、おいおい、と思った。
最後に。
東京スカパラダイスオーケストラによるエンディングテーマが、かっこいい。
エンドロールのあとにオマケ映像などは無いのだが(せっかくのムロなのに)、曲がかっこよかったので、まあいいか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?