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学校の話。

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子供たちの間で行われていたのは本当に「いじめ」だったのか。 大人の目線で描く学校の話。
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#小学校

【小説】学校の話。<起>

【小説】学校の話。<起>


1)

小渕沢 丈二は、教員生活二十二年目となる今年度、とある町の小学校に赴任した。
児童や同僚たちは、彼を「丈二先生」と呼ぶ。
 
三学期現在、3年3組の雰囲気はかなり砕けたものになっている。

「ウチ、あの子キライ」

漢字の書き取りノートの山に目を通しているとき、その声を聞いた。

(やれやれ)

赤ペンを走らせながら、小渕沢は嘆息した。
金縁眼鏡のブリッジを押さえて声の方向を見遣ると、廊

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【小説】学校の話。<承>

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▼前話

1)

問題が起きたのは、二月に入って間もなくのことだった。

「こんな手紙が落ちていました」

3年1組担任、学年主任の及川が声を張り上げた。
朝の会の時間帯に急遽、学年集会が開かれている。児童たちは、狭い廊下でぎゅうぎゅう詰めになって並んでいた。

手紙は二通。
1組付近の廊下に落ちていたものを及川が拾い、問題視した。

手紙はいずれも自由帳を破って折り畳んだもので、次のようなことが

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