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春のような温かさがいつもある学校に… 小さい子たち、特に1年生にはわからないから 〜心の宝物96

🌷さあ、マラソン大会


山に囲まれた小さな学校
 秋が深まり、周囲の山々が色づく中、マラソン大会に向けた取り組みが始まろうとしていました。

 のどかな農村風景の中にあるこの学校は、校区の田園地帯を巡る2㎞ほどのコースを設定します。安全で気持ちのよいコースですが、高台にある学校が発着地点であるために、それなりのアップダウンがあり、距離の割にはハードなコースになっています。そのため、1か月ほど前から、グラウンドでトレーニングをすることが恒例になっていました。
 ある日の全校朝会で、体育委員会から、当日に向けた取り組みの提案が行われました。

🌷小さい子たち、特に1年生にはわからないから…


 6年生の彼女は体育副委員長。この日の説明の責任者でした。
「マラソン大会を成功させるためには、それまでの取組が大事です。体育の授業や朝のランニングの練習だけでなく、毎日の授業や掃除、係の活動も頑張りましょう。私たち一人一人の力で、マラソン大会を成功させましょう」

 前期は生活委員長として、挨拶の向上を呼び掛け、自らも実践した彼女の語りには強い説得力があります。説明の前には、自ら作成したチラシを下級生に配布していました。
 「言葉で説明するだけでは、小さい子たち、とくに初めての1年生はわからないから」そう言って自ら時間をかけて作ったチラシは心のこもった温かなデザインでした。
 そんな心遣いは着実に伝わり、全校児童が彼女の話に聞き入りました。
 心に話がすうっと入り、子供たちの思いが一つになっていくのが分かりました。

 「話す」と「伝える」行動としては大きな違いはないかもしれない。しかし、構えがちがう。必要とする覚悟がちがう。何より相手に願う想いがちがう。
 1年生も、他の子達も、私たちも、マラソン大会のことだけではない、大切な何かを、あなたから受け取りましたよ。ありがとう。

 そんな思いでお伝えしました。

 後年、20歳になった彼女と会う機会がありました。教職を目指していることを生き生きと話してくれる笑顔に、6年生のときの、この日の姿が重なり、胸が熱くなりました。

かけがえのないあなたへ。
素敵なきらめきをありがとう。
出会ってくれてありがとう。
生まれてきてくれてありがとう。
どうか、ありのままで。
どうか、幸せで。

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