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祖父と祖母の冒険 「空気のような存在」とは

「新年、あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます」
「今年もよろしくお願いします」
「こちらそよろしくお願いします」
「さぁ、中に入って」
そこには笑顔な祖母の姿があった。

白い内装の壁にカーテンから差しこむ眩しいくらいの夕日と、
少し開いた窓から漏れた冷気が僕の足元をじんじんとくすぐってきた。

今日は新年挨拶に祖父母の家に行った。
リビングでは祖父が精一杯の笑顔で出迎えてくれた。あんなに元気な祖父の姿はもうない。一昨年のことだったか、胃に癌が見つかって手術は成功したものの、それからどんどん食べる量は減り、ますます顔の脂肪が減りシワが増え骨ぼねとしてしまった。おしゃべりな口も今や何を言いたいのかわからないくらい口が回っていない。いっぱい元気なうちに会話しとけばよかったと後悔があったが、今は生きていているだけで幸せ。長生きしてね。


二人の関係が気になって聞いてみると祖母はにこう言った。
「空気みたいな存在だからなんでもわかるのよ」

空気みたいな存在ってなんだろう。そんな存在って心地良いのかな。
まだわからない感覚だけどそんな人に出会ったら幸せになれると思った。
頭の中でリピートする空気と存在の言葉に私はグッと心が締め付けられた。

私も素敵な存在にレベルアップしたいな。
今日は素敵な時間をありがとう。
また話聞かせてね。

人生も長くて100
明日も冒険しに行こう







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