デジファブで課題解決!地域資源を使って持続可能なものづくりを|Fab VOICE Vol.2 森川好美
Fab VOICEとは…
半蔵門にあるシェア工房、LIFULL Fabが運営するクリエイターインタビュー。デジファブクリエイターへのインタビューを通じて、ものづくりへの思いの発信や、クリエイター同士の接点を作ることを目的とした「人と想いが出会う、繋がりの発信地」です。
人生100年時代で必要とされている無形資産に出会える場として様々な分野で活躍するクリエイターの方々にお話をお伺いします。
本日お話を伺うのは、高知県佐川町を拠点とする、地域資源の循環をコンセプトにものづくりやデザインを行うNPO法人「MORILAB」の森川好美さん。
デジファブをテーマに、コミュニティの課題解決のためのものづくりについてお話していただきました。
MORILABとは?
ー現在様々な活動をされている森川さんですが、代表的な活動のひとつであるMORILABについて教えてください。
森川:MORILABは、持続可能な地球環境を維持するために地域の資源の循環をデザインし情報発信を行うことで、人々がしあわせな暮らしを実現する社会にすることを目的としたNPO法人です。
現在は高知県佐川町にある古民家工房を中心拠点として活動しています。
ー具体的にはどんなことを行っているのでしょうか?
森川:例えば、町には農家さんや猟師さんがいらっしゃるんですが、そういった方々は自分で捕獲のための器具を作ったり、良い意味でローテクな製作を行っています。
そういった方々のローテクさとデジファブを掛け合わせた取り組みを行ったり、「モチツモタレツ」というプロジェクトでは、設計料の代わりにモノやコトでリターンをいただくことでお金の壁を取り除くといった活動も行っています。
モチツモタレツプロジェクト
ー先ほどもお話いただきました、「モチツモタレツ」について教えてください。
森川:モチツモタレツはMORILABと何人かのデザイナーによって立ち上げたプロジェクトです。
このプロジェクトでは設計料の代わりにモノやコトでリターンをいただくことでお金の壁を取り除き、生産者と消費者という非対称的な関係性ではなく、対等にモノづくりに参加できる仕組みです。
リターンは本当になんでも良くて。
実際に、「英語ができるのでWEBサイトの英訳でお返しします」とか「ダンスを動画にしてお返しします」とか、色々なリターンがありました。
どれも自分にはできないことなので、とても面白いですね。
生産者と消費者という関係性でお金が発生してしまうと、少し傷がついていただけでものすごいクレームになると思うんです。
でも、少しでも作る側に回ったらそういうこともなくなる。
完成品もあえてやすりがけは行わず、自分の手で体験してもらうようにしたり、新しいコミュニケーションの形になったと思います。
このプロジェクトがきっかけで、自分でものづくりを初めてみたという人もいます。
地域貢献のためのものづくり
ー東京生まれ東京育ちの森川さんですが、なぜ高知県佐川町で活動しているのでしょうか。
森川:元々大学でデジファブの研究をしていました。
2011年にファブラボ(多様な工作機械を備えた市民工房のネットワーク)が始まったんですが、そこを立ち上げた研究室に入りました。
その中でさかわ発明ラボ(佐川町の市民向けファブ施設)を立ち上げるプロジェクトがあると知り、やってみたいと思ったのがきっかけです。
都心でデジファブと扱っていると、自分のため、クライアントのために使用することが主で、コミュニティのために使うことがほとんどありません。それがあまり面白くないと個人的には思っていて。
農家の方と一緒に抱えている課題を解決したり、その地域で生活している人の課題解決のためにデジファブを使いたいという想いがあったので、それなら地方の方がやりやすいと実感し、高知に移りました。
ーなるほど。同じく都会で育った僕からすると、とても思い切った判断だと感じてしまうのですが、移住の決め手となったポイントはありましたか?
森川:私も最初に高知に来たときは6年もいるとは思っていませんでした。
ただ、祖父母が鹿児島県にいたり、育った地域も東京でも田舎の方だったので、元々自然との距離が近かったような気がします。
漠然とですが、ビルに囲まれて過ごすよりは自然に囲まれている方がいいなと。
あとは、佐川町の人たちがいい意味で大雑把というかおおらかというか。(笑)田舎だけど排他的なところがそれほどないと感じました。
あとは気候が比較的暖かいとか…
挙げたらたくさんありますが、たまたま色々な条件がマッチして今があると思います。
フリーランスとして受けているお仕事は都心の方が多いので、月の半分は東京に出張していることもよくありますが、それでも高知に帰りたいと思えるのはそういった理由からですね。
デジファブは道具のひとつ
ー3DプリンターやCNCルーターなどのデジファブ機材から、丸ノコなどの木工工具まで使いこなす森川さんですが、今後のものづくりとの関わり方はどのように考えていますか。
森川:デジファブはまだ体系的にまとまった学問ではないので、どこから始めたらいいのか分からなかったり、機材を動かすのに必要な知識がたくさんあったりと、最初のハードルが高いと感じています。
私自身ずっとものづくり一本で生きてきたので、ものづくりがなかったらしんどい人生だったんじゃないかと思っていて。
ものづくりをすることで救われる人もいると思うので、そういう人をサポートしたいと思っています。
また、自分で手を動かすことが全てじゃないとも思っています。
アイデアはあるけど形にできないとか、ソフトが使えないとか。
そういった人にもぜひ声をかけて欲しいですね。
ー「自分で手を動かすことが全てじゃない」というお話は、前回のFab VOICE Vol.1 渡鳥ジョニーさんとのお話でも話題に上がりました。
アイデアを形にする翻訳者が必要になってきそうですね。
森川:まさにそうだと思います。デジファブでやることに意味があるというよりは、紙とペンと同じように使いこなせることに意味があると思っています。
ー最後に、現在取り組んでいるプロジェクトや告知があれば教えてください。
森川:今まではデジファブだけで完結するプロジェクトが多かったので、なるべくアナログ、地域資源にこだわったものづくりをしていく予定です。
今畑を借りていて、そこでスツールの座面で使う綿を育てています。
また、スツールの本体部分は邪魔だという理由で切られたまま転がっている桜の木を使い、自然豊かな佐川の植物で草木染めを行ったりと、可能な限り地域の資源を使ったものづくりプロジェクトが進行中です。
さいごに
デジファブは道具のひとつと言う森川さん。
畑で綿を育て、捨てられている木材を製材し、地域の植物で草木染めを行う。本来であれば加工に時間をかけるところを、デジファブを使うことで見事にアナログとの掛け合わせを実現しています。
まさにデジファブは道具のひとつだということを体現していますね。
CNCルーターやレーザーカッターなどのデジファブ機材は、LIFULL Fabでも1時間¥880(税込)〜お使いいただけます。
▶︎プロフィール
森川好美
デザイナー/エンジニア
NPO法人MORILAB代表
1993年生まれ、東京都出身。
慶應義塾大学SFCにてデジタルファブリケーションを専攻。
大学在学中よりファブ施設の運営に携わり、2016年より高知と東京の二拠点生活を開始し、全国でデジファブを活用した教育/企画運営やデジタル加工機の導入・研修業務に関わる。
2021年にNPO法人MORILABを立ち上げ、「デジタル技術による地域資源の活用と循環」を軸に活動。
自らものづくりをするだけでなく、ものづくりによって人やモノの関係性を変えていく仕組みづくりを目指している。
▶︎過去のFab VOICE
▶︎LIFULL Fab
半蔵門駅から徒歩2分。
「あなたらしい暮らしをデザインしよう」をコンセプトに、たくさんの機材や工具でものづくりをサポートするシェア工房。
ShopBotやレーザーカッターをはじめとしたデジタルファブリケーション機材やDIY工具を¥880/1H〜でご利用いただけます。
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