熱帯雨林に学ぶ「多様性が高いとどうなるのか?」
はじめに
2022年に半年近くかけて友人たちと英書の『Regenerative Leadership: The DNA of life-affirming 21st century organizations』を読み探究していく会を開いていました。
その中で、「多様性」というテーマで対話していた時に「多様性が発揮されている状態とはどんな状態なのか?」という問いを友人が投げかけてくれたのです。個人的にこの問いはとても興味深く、深めたいと思ったものでした。
今回は、上記の書籍で紹介されていた関連本の中で「熱帯雨林における多様性」について書かれていた章があったので、こちらを参照しながら友人が投げかけてくれた問いを「多様性が高い状態ではどんなことが起こるのか?」という問いにアップデートした上で探究してみたいと思います。
その関連本とはこちら。和訳本が出ているので和訳本の方を紹介します。(絶版になっている模様)こちらの書籍は「熱帯雨林に学ぶ企業の未来」というテーマで書かれています。
熱帯雨林に学ぶ多様性とは?
著者の主張は?
この本で提示されている多様性が高い状態のメリットと言えそうな内容は、「多様性が高い」イコール「選択肢が多い」であり、選択肢が多いことによって「ダメージからのすぐれた回復力」と「持続可能性が高い」という効果?を得ることができている、という箇所がそれに当たりそうです。
該当する箇所をピックアップします。
また、「多様性が持続可能性の向上につながる」説の裏付け的に、脳のシステム理論研究を専門としていたロス・アシュビーという人物が1958年に打ち立てた多様性必要条件則を紹介しています。
この法則によれば、
そうです。
それを受けて書籍では、
と書かれています。
紹介されている3つの学説
他にこの章では、以下の3つの学説も紹介しています。
森の多様性が高い方が回復力が高い
↑
A:カリフォルニア大学サンタバーバラ校のジョセフ・コンネル教授同バークレー校のウェイン・スーザ教授の主張
↑
B:ミネソタ大学のデービッド・ティルマン教授の主張
↓
C:モンタナ州立大学の生物学者、ダニエル・グッドマン氏の主張
↓
森の多様性が低い方が回復力が高い
著者の2名は実際に熱帯雨林を冒険した結果、A・Bの見解に傾きつつあるとのことでした。(原著は2001年に出版されたそうなので、今はどんな見解なのでしょうね)
学説を見て思ったこと
Aの情報がほとんどないに等しい説は別として、B:ティルマン氏の説とC:グットマン氏の説を見比べて思ったことは、そもそも両者において「回復した状態」の定義が異なっているように思えるため、前提が違うイコール比較ができないなと思いました。
C:グットマン氏の説でいう回復とは、もともとあった種類の樹木が元の数に戻ることを指しており、B :ティルマン氏の説では生態系内における生物量の単位で捉えています。グットマン氏のフォーカスである生物種単位でいうと個体数は変動しやすいと書かれています。
両者は木を見ているか森を見ているかの視座の違いがあり、共存できる学説だと思ったんですよね。
また、この観ているところがそもそも異なっているという点に関連していうと、そもそも「健全な森とはどういう状態なのか?」という定義が1人1人で違うという話に広げられるかもしれません。
さいごに
簡単にまつめると、森の多様性(イコール生物多様性)が高いとその森という生態系自体の生物量は適切に回復する、というのが著者の主張のようです。
うーん、分かったような分からないようなw
何となくですが、生物多様性が高いと→土壌が豊かである→植物も単一ではないと土壌の栄耀をまんべんなく活用できるため、1年を通して一定以上の繁栄を保てる(畑で単一な作物を育てていると土壌の栄養が不足し、休むために作物を育てられない時期が出てくるのですが、それを防げるイメージ)というようなことなのかなぁ。
となると、カギとなるのは「色んな栄養が含まれている豊かな土壌」の方なのかもしれないなぁ。(だから多様な生物が暮らせる?暮らしているから豊かな土壌になっている?不可分の関係?)
などと、さらに色んな問いが生まれています。
今回は、熱帯雨林という自然そのものから学ぼうと試みましたが、次はこれらの情報を参照しつつ、会社組織に置き換えて生物多様性や回復力について考察する内容を書いてみたいと思います。
おまけ
本格的に熱帯雨林に学ぼうとするならばやはり一次情報にあたらないとダメですね。ビジネス書の引用レベルでは、生まれた疑問は解消できないので浅い考察になるなぁと感じたのでした。(当たり前!)
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