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消毒薬の選び方~消毒薬の大別~

現在、新型コロナウイルスの流行によりエタノール消毒をはじめとする様々な消毒法が注目され始めています。
しかし、その中には根拠の不明なものや、用途の誤っているもの、また、健康被害に直結するようなものが非常に多く散見されるのが現状です。

そこで今回は各種消毒薬の選び方使用方法、危険性などを述べていこうと思います。

※消毒と滅菌の違いについては次項にて説明しますので、今回は割愛させていただきます。

1. 消毒薬に影響を与える因子

消毒の効果に影響を与える因子として濃度温度時間の3つが非常に重要となります。

濃度:消毒薬には最大の効果を発揮し、かつ、人体、素材への影響を最小限にとどめる適正濃度があります。
濃度が高すぎると消毒効果は上昇しますが、有害作用のリスクも同様に上昇してしまいます。
逆に薄すぎると有害作用のリスクは極めて低くなりますが、同様に消毒効果についても低下してしまいます。

温度:温度が高くなるほど殺菌力は強くなります(熱による菌への影響)。よって、使用時には20℃以上の液温んにて使用することが望ましいとされています。

時間:消毒薬は一定以上の接触時間(作用時間)が必要であり、一般的には接触時間を長くするほど低濃度でも有効な消毒効果を発揮するとされています。

2. 消毒薬の種類

消毒薬は大きく高水準消毒薬、中水準消毒薬、低水準消毒薬と分類されます。
※本項ででてきますスポルティングの器具分類については本記事の最後にありますのでご参照ください。

高水準消毒薬(high-level disinfection)
定義:芽胞多数を除くすべての微生物を死滅させる
グルタール、フタラール、過酢酸など
・・・ここに分類される消毒薬は主にセミクリティカルの器具(呼吸器系療法に用いる器具、麻酔器具、南西内視鏡、喉頭鏡、気管内挿管チューブなどの傷のある皮膚や粘膜に接触するもの)を消毒するのに用いられます。また、残留性が高いため十分なすすぎ(リンス)が必要です。

中水準消毒薬(intermediate-level disinfection)
定義:
結核菌、栄養型細菌、一部のウイルス、一部の真菌を殺滅するが、必ずしも芽胞を殺滅しない
次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード、エタノールなど
・・・ここに分類される消毒薬は主にセミクリティカルの器具(口腔よう体温計など)や正常皮膚術野食料品関連機材環境などの消毒に用いられます。

◆低水準消毒薬(low-level disinfection)
定義:
ほとんどの栄養型細菌、ある種のウイルス、ある種の真菌を殺滅する
ベンザルコニウム塩化物、ベンザト二ウム塩化物、クロルヘキシジン、両性界面活性剤など
・・・ここに分類される消毒薬は主にノンクリティカルの器具(便器・尿器、血圧計のマンシェット、松葉杖、聴診器、ベット柵、テーブルなど)や環境への消毒に用いられます。

※備考

スポルティングの器具分類について
患者へのケア器材について処理を行う際、使用目的の感染リスクに応じて処理するという考え方が重要です。
その際、器材の感染リスクを高いほうからクリティカル、セミクリティカル、ノンクリティカルに分けたうえでリスクごとの処理を行う必要があります。
なお、このリスク分類はどのような感染症症例に使用した器具かではなくどのような用途に再使用するかが重要となります。

・クリティカルに分類される器具
ここに分類される器具は、無菌的な組織や部位、血管などに挿入されるものと定義されています。
なお、これらの器具は微生物に汚染されていると高い感染の可能性が考えられますので、滅菌済みのディスポーザブル品を使用するか、高圧蒸気滅菌等の滅菌措置を講じてから再使用する必要があります。(消毒薬による消毒は不適)

・セミクリティカルに分類される器具
ここに分類される器具は、内視鏡などの粘膜または傷のある皮膚に接触するものと定義されています。
これらの器具に関しては材質的に可能であれば熱消毒が望ましいですが、非耐熱性の器具に関しては最低でも高水準消毒薬を使用して確実に消毒を行ってから再利用する必要があります。

・ノンクリティカルに分類される器具
ここに分類される器具は、傷のない正常な皮膚と接触するもので、粘膜とは非接触の器具と定義されています。
これらの器具に関しては特に予防策が必要になる患者に対して使用する際は患者専用もしくは使いすてにするのが望ましいですが、複数患者間で共有する場合、ほかの患者の使用前に低水準消毒薬もしくはエタノールにてスワブする必要があります。


最後に・・・

本記事は2021年6月12日時点での一般的な通説をもとに作成しております。
よって本日以降、通説が覆された際には本記事の内容を参照しないようご注意ください。

参考文献
1)一般財団法人医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財
団:第十七改正日本薬局方,じほう,2016
2)国公立大学附属病院感染対策協議会:病院感染対策ガイド
環境感染誌 Vol. 32 no. 6, 2017

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