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泣けなかったあの日

先日、新入社員時代の同期数人と久しぶりに会いました。新入社員時代の思い出話になり、「そういえばあの合宿なんだったんだろう」ということに。

新入社員になってすぐ、新入社員研修と題して合宿がありました。どこの企業にもあると思うのですが、新入社員は人生で1度しかないので、他の会社がどんな研修をしているか知ることはありませんし、私の会社が特別だったかどうかもわかりません。でもまあ自己啓発に近いものだったと思います。

合宿場で朝から晩まで色々な研修を受け、夜は先輩たちが合流し、徹夜レベルで飲み明かし、次の日はまた早朝からランニング。体育会系なのでしょうか。そしてまた朝から晩まで研修で、最終日にはプレゼンテーションが必要なのでその日の夜は必死にグループに分かれて徹夜で資料作り。もちろん最終日の朝もまた運動場に集合。

最終日のプレゼンテーション終わりにはもう寝不足なのか二日酔いなのか疲労困憊を通り過ぎてハイになるパターンです。謎の結束力で、これからこの会社に骨を埋める覚悟くらいのマインドが仕上げられていました。

そして最後に、親に手紙を書くという研修が用意されていました。それまでの伏線回収にも思えましたが、こうやって社会人になれたこと、初任給を目前に感謝を最高に高めるためだったようにも思います。その時は、本当に走馬灯のように生まれてから親がどれだけ頑張って育ててくれて、あの時ごめんねという気持ちや、これからは恩返ししたい気持ちになっていました。

便箋が配られて、シーンとしているなか、手紙を書きます。

はい。

泣きます。どんどん泣いていくんです。手紙を書きながら思い余って、自分で自分の文章に泣くのです。泣きすぎて書けない人も出てきます。恐怖ですよね。ちょっとその光景に笑ってしまった私も、書き進めていくことで空気にのまれて、例に漏れず、泣きました。泣きながら書いている自分に酔っているのか、まだお酒に酔っているのか、とりあえず頭が痛くなるまで泣きました。

しかし、その場にもこの場にもいる1人が「あれ、全然泣けなかった。本当に頑張って泣こうとしたけど泣けなくて泣けないことに焦った!」と言っていた。

わかる。全然泣かなくてよかったと思う。とその場は「あそこ泣くとこだったよね、泣けなかった」という懺悔大会になりました。

どれも今思うと泣く必要がなかったのですが、「泣かなくてはいけなかった」シーンを思い出しながら笑うことができる今、まぁ思い出作りだったような気がしました。

ちなみに、私が泣けなかったエピソードは、会議室に8人くらいその当時のリーダー層が集められて、閉じ込められて、その当時の統括上司にめちゃくちゃ怒られた日です。多分今そんなことやったら問題レベルの罵倒でした。なにを罵倒しているのかそもそも謎だったし今思い返してもやっぱり謎ですが、そんな事ですごく急に沸点に達して怒ってました。

最後に会議室に入った人に

「その扉、閉めて。」

と統括上司が言った瞬間からやばいな、と思った空気はまだなんとなく覚えています。

沸点に達しているほどの罵倒はさらにご自身の沸点を上げていきます。めちゃくちゃ怒ってて、1人1人にどの点が自分は悪いと思うのかを言わせるタイムに入りました。それぞれ言いながら泣いていきます。言う前から泣いてしまって、泣きすぎて言葉にならない人もいました。

いやいや、絶対おかしい。

私は思いながら、しかしながら、これ泣かないと終わらないパターンじゃない?と思ってめちゃくちゃ焦りました。どうしよう、どうしよう、何もわからないし、泣けないし、そっちの方がドキドキしていました。

ちなみに、私はこの世で無理なことランキング3位以内に入ることは「怒鳴られる」です。嫌じゃなくて、無理なのです。もう、怒鳴っている人を見た瞬間全てをシャットアウトしてしまうんです。耳に届かないというか、声も聞こえないし顔も見えないような、もう何も無理なのです。だから、フリーズです。でも、泣いてないってわかったら、殴られたらどうしようという気持ちになってきて、泣かなきゃ!なんとか泣かなきゃ!と思って、机に突っ伏してみました。とりあえず泣いているフリをしようと。

しかし、反省を言わされる私のターンはまだ回ってきていません。顔を上げたら泣いていないことがバレます。しまった、言い終わってから机に伏せるべきだった、と後悔しました。とりあえず私の番が回ってきた時は声が聞こえる程度に顔を伏せがちに起き上がってなんか適当に言いました。

そしたら、会議室にあった内線用の電話機が壁に投げつけられました。

ヤバいでしょ。さすがにヤバすぎるでしょ。

そこで私、鼻で笑ってしまったんですよ。ヤバすぎるじゃないですか、いやいやどういう流れよ。あなた何歳よ。子どもなの?って思いましたね、でも殴られたらどうしようと思って、鼻で笑ったのではなく、咳払い兼泣いている雰囲気を演出しました。

最終的に、会議室から漏れる音で危険を感じた取締役が入ってきました。どうやって折り合いがついたか忘れましたが、私たちは解放されました。メンタル的に大丈夫か?ケアした方がいいんじゃないか?と人事部の面談があった気がします。

しかし、会議室の中でも、その後のフォロー面談でも結局私は泣けなかった。なんで泣けなかったんでしょうねぇ。

その統括上司は、普段はそこそこ温厚な人で、その後しばらくした後にこの日の会議室のホラー話になった時は「あの時は、キミが泣いたら終わりだったのに、最後まで泣かなかったね。キミの泣き待ちだったよ。」って言われました。

ゾゾゾ。。

パワハラはよくない。心に刻まれるやつ。

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