見出し画像

【往復書簡/8通目】晩秋の関西から、大きな根菜のポタージュを

いがらしさんへ

札幌から兵庫県の宝塚に引っ越してきて、そろそろ1ヶ月になります。窓の外からは、ゴミ収集車のテーマソングの宝塚市歌が聴こえています。ゴミ出しの曜日を覚える程度には、こちらの生活にも慣れてきました。いがらしさんも、リノベーションして、生まれ変わったキッチンに慣れてきた頃かしら。

さて、前回贈ってくれた「門出のための祝福の食卓」ごちそうさまでした。モロッコインゲンは、1年に二度も収穫できるのね。彼らなりの、種としての存続の可能性を高めるための戦略なのかな。その営みのおかげで、二回も楽しませてもらえるのはありがたいね。美味しそうなお肉とワインを見たら、いがらしさんの家に泊まりにいくと、夫君がお気に入りのワインを開けてくれて、3人で遅くまでおしゃべりしていたことを思い出しました。次に行けるのはいつかな。

この1ヶ月は、まずは食卓のライフラインを把握するために、恋人に近所のいろいろなスーパーに連れていってもらいました。最近は、どのスーパーにも大抵「ご近所野菜」のコーナーがあるので、売り場をみると、今このあたりで何が採れているのかわかります。引っ越し直前の札幌のご近所野菜のコーナーは、青物がほとんどなくなって、冬に向けての漬物用の白菜やキャベツの山、ジャガイモやカボチャの箱が積みあがっていたけど、こちらは、ほうれん草や菊菜がわさわさしてる。柚子やレモンがたくさん袋に入って安かったりするのも、柑橘の実らない北海道にはないもので、この値段なら常備しておけるなと嬉しくなったりします。

関西でスーパーに行くのは、もちろん初めてではないけど、滞在者ではなく、生活者として、売り場を眺めると、いつもは気にならないものが目につくもの。そんな感覚で、すごく地味なんだけど気になって買ってしまったのが「頭芋」と素っ気なく書かれた、赤ちゃんの頭くらいの大きさの里芋でした。頭が2つ、3つで200円くらい。普段買っている小芋、孫芋ではなく、その親芋ってことなのね。売り場でみたときは、なんとなく、安くてお腹いっぱいになる、お助け野菜みたいなものなのかなと思ったけど、帰ってきて調べてみると、お正月の縁起物と書かれていて。男性が立派な「頭(かしら)」になれるようにと、お雑煮に丸ごと(!)いれて食べるらしい。品種名だと思っていた「八頭」も、頭芋の意味なんだ、とそこで気づきました。北海道でイモといえばジャガイモだから、里芋文化は、知らないことばかりで、面白い。

関西からの最初のお手紙で、いがらしさんに食べてもらおうと思ったのは、この頭芋でつくった一皿です。お雑煮以外だと、出汁で煮ることが多いみたいだけど、私は、いつもの根菜ポタージュのつくり方で。玉ねぎをオリーブオイルでゆっくり炒めた鍋に、最小限の水を加えて、頭芋をやわらかく煮て。ブレンダーで滑らかにしたら、牛乳を加えて、塩だけで味を整えて、胡椒を振って。

「はじめましての頭芋のポタージュ」

画像1

それでは、どうぞ召し上がれ。

みやう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?