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金融論を楽しく学ばせてくれた著作たち:池尾和人氏死去

あまり見ないツイッターを見ていたら,池尾和人氏がお亡くなりになったことを知った.まだお若かったのにと思ったが,死因はがんとのことだ.

直接教えを受けたことはないが,氏の著作には多くを学ばせていただいた.初めて読んだのは『ゼミナール 現代の銀行』(東洋経済新報社)だったと思う.学部向けに書かれ,特に銀行に焦点をあてた金融論の入門書であった.その後,学部生として氏の著作をいくつか読む中で「金融のミクロ経済学」という言葉が気に留まった.

学部教育における金融論では,これだけでも十分なボリュームになる制度の話になるか,マクロ経済学でも学ぶ貨幣市場と債券市場を対比した話やその延長線上にあるIS-LM分析における金融政策の話などが多かったように思う.その中で,氏による金融市場や組織のミクロ分析に,とても難しかったが興味を持ち,それと関連して不確実性や情報の非対称性などを勉強したことを思い出す.

一般向けに書かれた『現代の金融入門[新版]』(ちくま新書)は,多くの方に読まれるべき名著である.現在,多くの国で顕在する低金利について,まだまだ十分ではないが新しい理解が進んでいる中,わかりやすく受け入れやすい俗説に惑わされることのないよう,地に足をつけてこのコンパクトではあるがとても濃い入門書に取り組んでみることをお勧めしたい.

ご冥福をお祈りします.




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