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HRTech全盛時代に陥る罠、あるいはデータの消化不良と組織開発について

これからの人材・組織開発の話をしよう。久々のマガジン記事をお届けする。

数年前から衰えることを知らないHRTech。コロナ禍によってさらにそのトレンドは加速したように思える。HRTechといってもその領域は無数にあり、採用や労務、学習、オンボーディング、人事評価、モチベーション、組織の活性化などさまざまだ。この記事では主に、ぼくの専門分野である“学習”以降の領域についての所感である。

利用が進むHRTech

ぼくは現在、サービス開発の責任者でありつつコンサルタントの仕事もしているので、クライアントと直接話をすることが少なくない。今やどこもかしこもHRTechの話ばかりで、商談の話の内容もプロダクトの機能の話やデモをおこなうことが増えた。そして、やはり少なくない数のクライアントがHRTechのサービスを利用いただき、その活用が進んでいる。

今はおおくのクライアントがHRTechサービスを利用しはじめて1年から2年という状況だ。ある程度、プロダクトが有する機能を把握して利用もこなれてきている印象を受ける。プロダクトの利用によってデータがおおくとれ、人や組織の内情が見えるようになったと感謝の声をいただくことも少なくない。

たとえば、オンボーディングについていえば、パルスサーベイをとることによって、つねに社員のコンディションが把握でき、メンタルダウンや離職の予兆をつかむことができる。これまではブラックボックスだった情報が可視化されたことはおおきい。

データの消化不良が進むHRTech

情報の可視化というおおきな前進の一方で、人事のみなさんの悲痛の声をお聞きすることも増えてきた。それは、とれたデータが使いこなせておらず消化不良に陥っているという声だ。

HRTechは人や組織の内実を可視化することに成功した。ただし、その成功は大量のデータというお土産つきだった。今、人事はそのお土産に頭を悩ませている。

たとえば、組織活性化診断をテーマにしたプロダクトについて。組織活性化診断はクラウド上で、いつでも、質問内容をカスタマイズしたりしながら、年に何回でも、かつ安価に実施することが可能となった。おおくのユーザーが年に1回から2回実施していると思う。ただし、この診断実施の頻度は実は15年あまり前と変わっていない。

どういうことか。組織活性化診断なるものはHRTechと呼ばれるブームの前からサービスとしては存在していた。紙のアンケートを回収したり、アンケートシステムを利用しながら、多少アナログ感はあっても実施していたのだ。そして、当時も年に1回か2回実施していた企業が多かった。

つまり、診断実施がいかに楽にクラウド上でできようとも、その診断後の価値を享受できる頻度は変わっていない。もうお気づきだろう。診断結果のデータの解析や施策の実行にかかる手間は15年前と変わっていないからだ。

HRTech全盛時代に今こそ求められる組織開発

HRTechは確かに“ラクに“人と組織を可視化することを可能にした。一方で、大量のデータの消化不良の真っ只中にいる。

ぼくたちは改めてそのデータを使ってどう人と組織の生産性を高めていくかを考え、実行しなければならない。つまり、組織開発しなければならない。データを分析し、トータルシステムとしての組織を俯瞰的に捉え、多様なソリューションのなかから最適な解決策を選択し、実行に移すという愚直な組織開発が今こそ求められているのではないだろうか。

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