見出し画像

心理的安全性のもうひとつのリアリティ

マネジメント経験が増えるにつれて、どんな人が成長していくかがわかってくる。それゆえに、自分が携わっている人材開発や組織開発という領域で、どんなサービスが提供できるかを考えている。

最近、よくあたまに浮かぶテーマは”いかに働く人たちの不安を取り除くか”である。最近のトレンドワードでいえば、心理的安全性ということになるのだろうか。いずれにせよ、働く人の不安は仕事のパフォーマンスの低下に大きく影響している。特に、学習効率という点で。

不安に苛まれているひとは、多くの場合、自分が無能だと思われていないか、重要な存在でいられているか、好かれているかという3つの恐怖におびえている。よって、仕事の目的がこの3つの恐怖の払しょくに向けられていることが多い。このことが学習効率の低下につながっている。本来は顧客のニーズに応えるために、新しい知識や仕事を覚え、技能を高めなければならない。でも、不安に苛まれている人は、そうはならない。いつも恐怖と闘っている。

誰にでも3つの恐怖はあるものだ。誰しもが有能で、重要で、好かれる存在たらんとしている。それでも、3つの恐怖に自分がコントロールされてしまってはいい仕事はできない。

心理的安全性は重要である。でも、それは働く人の不安を取り除くには不十分である。なぜならば、どれだけ安全な環境構築に努めていても、それを安全だと認識するのは個人だし、人は生存本能をとおしてネガティブなものに敏感だからである。

心理的安全性は魔法の杖のような喧伝のされかたにぼくは疑問を覚えている。心理的安全性は上司が構築するものであり、いったん構築されてしまえば働きやすい職場が生まれるのではないか。そんな安易な見方が広がっているのではないか。でも、上司がどれだけ努力しても無駄である。個人の認知の力は大きな影響力をもっている。ぼくたちは、心理的安全性のもうひとつのリアリティに気づかねばならない。心理的安全性を構築するのは上司だけではない。まさに、ぼくたち自身なのである。

サポートいただいたお金は、“誰もがが自己実現できる社会をつくる”ために使わせていただきます。