参加者の約8割が「生成AI活用による校務改善の可能性を感じる」 教員向け生成AIワークショップレポート 【経産省「未来の教室」生成AIの教育活用に関する実証事業】
現在、世界中で生成AIの普及が急速に進み、働き方改革の文脈における活用事例が多く創出されています。
教員の多忙化や長時間労働が社会的課題となる中、教員現場においても、生成AIをはじめとするテクノロジーを活用し、先生の負担軽減やより良い学びづくりのための環境整備が求められています。
ライフイズテックでは今年度、経済産業省「未来の教室」生成AIの教育活用に関する実証事業に採択され、鎌倉市教育委員会のご協力のもと、開発中の生成AIサービスを活用した、学校教職員の校務の効率化を図る実証事業を進めてきました。
3月には、実証事業の結果を元に、生成AIへのさらなる理解拡充と有効的な活用を見出すため、鎌倉市内の小中学校視聴覚部会の先生方向けに生成AI研修を実施しました。
本レポートでは、実証事業の結果に触れながら、研修の模様と先生方の声をご紹介します。
基本知識の講義と生成AIワークショップ体験後、意見交換を実施
研修にご参加くださったのは、鎌倉市内の小中学校25校、鎌倉市学校教育研究会の視聴覚部会の先生方約50名。
今回の研修では、生成AIに関する基本的な講義を行ったのち、ライフイズテックが開発中の生成AIサービスを活用して授業案作成を体験いただきます。
体験後には生成AI活用に関するディスカッションを実施し、意見交換を行うことで、より解像度高く生成AIの活用イメージを持っていただくことを目的としています。
講義「生成AIの教育利用の最新状況と課題」
「ChatGPTなどの生成AIを活用したことがありますか?」という問いから講義はスタート。ちらほらと手が挙がる中、生成AIの最新動向、活用リスクや懸念点を取締役・讃井が解説します。
講義内では、中高生がAIを活用して制作した動画も視聴。「創造的・探究的な学習の場でのAI活用は、ポジティブな学習効果が大きいように感じている」と、AIによって子どもたちの創造性が引き出され、学びが深まった事例を紹介しました。
最後に、生成AI活用を具体的にイメージいただくため、鎌倉市2校で行った「校務に関わる生成AI活用」の実証結果を解説しました。
小テスト作成・授業案作成・その他校務を対象とした本実証事業においては「授業案作成の業務の一部に掛かる時間が、先生の体感で3~4割減少」
「小テスト作成にかかる時間を1~2割減少」とのアンケート結果もあり、会場の先生方も驚いていた様子でした。
実証事業で出た活用例としては、以下のようなものが挙げられます。
授業案作成、画像生成も体験。参加者の80%以上が「校務をより良く改善できる可能性を感じる」と回答
具体的な活用方法をシェアし、先生方にイメージいただいたところで、いよいよ生成AI体験ワークショップに入ります。
今回先生方に取り組んでいただいたのは、授業案作成や校務文書作成です。
教科書に沿って自己紹介文を生成し、まずは生成AIとの対話に慣れていきます。その後は、ライフイズテック独自のアシスト機能を用いながら、授業案を作成。気になるアイデアが生成できたら、授業案を深めるため、そのアイデアについて生徒との会話例などを生成していきます。
授業案の他にも、新学期の挨拶文や保護者への連絡文書なども作成しながら、「どのようなシーンで生成AIを有効活用できるか」試していただきます。
さらには画像生成にもトライ。「鎌倉での卒業式」をテーマに画像を生成した先生は「鎌倉のイメージがなんだか江戸っぽくて違う」などとトライ&エラーを繰り返していました。
あっという間に体験時間は終了。グループに分かれ体験に基づき「校務で使えそうな場面・事例」「校務で使う上での課題や懸念」「課題を解決するための要望」を話し合います。
校務で使える場面で最も多く挙げられたのは以下でした。
研修後のアンケートでは、
参加者の約90%が「生成AIの校務活用のイメージを持てた」
80%以上が「校務をより良く改善できる可能性を感じる」と回答。
先生方の約70%が校務で生成AIを活用したことがない中、たった50分の体験で数多くの活用案を出していただいたことに、私たちも大変驚きました。
一方、懸念として上がったのは生成AIのアウトプットの精度や利用上のリスク、ガバナンスの観点です。
その上で、このような声が聞かれました。
「完成を求めるのではなく、アイデア出しをしてくれるアシストとしての利用ができることがわかりました」
「活用イメージがうかんだ、メリットとデメリットを可視化して使っていく必要がある」
「個別最適化された授業にはAIは必須だと思う」といった声も
最後に、ある先生からこんな発表がありました。
「自分自身、絵を描くのが苦手です。児童にも絵を描くことが苦手な子がいる中で、生成AIを活用して自分の頭の中をアウトプットできることに、可能性を感じました」
そして、発表を聞いた他の先生からはこんな印象的な一言が。
「グループ意見の共有の最後に出た図工、絵画の苦手な児童への活用方法に大きなヒントがあったように思う。個別最適化された授業にはやはりAIは必須だと思う。個別最適化された授業についてイメージがますますできるようになった良い機会でした」
ライフイズテックは今後も、先生方や学校、自治体のみなさまと連携し、コミュニケーションをとりながら、学校現場でのAI活用を模索し、新たな価値を創造できる教育環境の構築を目指していきたいと思います。
本実証事業を共に進めてくださった鎌倉市教育委員会の皆さま、ご参加くださった先生方、ありがとうございました!
経済産業省「未来の教室」実証事業報告書は以下よりお読みいただけます。
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