ガチな起業話:その2 Steve BallmerとのExit Interview

Microsoft を辞める決断をした私は早速上司の David Cole に伝えました。David は、Windows 95 の開発の際にも私の上司だった人ですが、最近の Microsoft に私がウンザリしていることは良く理解していたようで、驚きもせずに「そうか。俺は Microsoft を辞める時は引退する時さ。その後は釣りでもしてのんびりと過ごすつもりだ」と妙に感傷的な物言いをします。Microsoft が大好きだった David には、他の会社で働くことなんて考えられなかったのだと思います(実際、数年後に Microsoft を離れた David は、この業界から完全に引退してしまいました)。

辞める日は会社の規定に従って、2週間後に決めたのですが、数日後に人事の人から、「辞める前に Steve Ballmer と会って欲しい。でも彼のスケジュールが合わないから、辞める日を二日伸ばして欲しい」との連絡が来ました。

Steve は、当時、引退を決めた Bill Gates から CEO の職を継いだばかりでしたが、開発の現場からは遠いところにおり、私に何の用があるのかさっぱりと理解できませんでした。妙に説得されても鬱陶しいので、「辞める日は変えられない。どうしても会いたいならその前にして欲しい」と返事をしました。

するとしばらくして、「では火曜日の朝7時に Pro Club のラウンジで」との指定が来ました。火曜日は、私の最終出社日で、Pro Club は会社が契約しているスポーツクラブです。

火曜の朝に Pro Club に行くと、すでに Steve が来ています。いつものように大きな手で「おはよう、Satoshi」と手を握ってくれたのですが、なぜかいつもと少し雰囲気が違います。Steve Ballmer といえば、エネルギーの塊で、(冗談抜きで)同じビルにいると存在が感じられるような人物でしたが、その日は、あまり元気が無く、オーラが小さくなっていたのです。

少し話して、その理由がすぐに分かりました。当時、Microsoft を辞めると言い出したのは私だけではなかったのです。

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