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ずっと、フランスで暮らしたかった

学生時代はパリへ留学。2023年春には、パリとリヨン、アヌシーに2週間弱の滞在。

それでもずっと、フランスで暮らしたいという思いが消えなかった。

もちろん日本に比べたら、治安も悪いし、不便なことも多いし、ここに住む人を冷たいと感じることもしばしば。そういうところを十二分に承知した上で、「この国で生活を営んでみたい」と思ったのだ。

フランスで暮らし始めて2週間が経った。計画的になにか行動していたわけではないのにもかかわらず、トントンと事が運んでしまった。経緯はまた別の機会に書くとして。ここでは、フランスに関することで最大の好きポイントである、アンティークが生活にもたらしたあれこれを紹介したい。

フランス各地では、蚤の市が頻繁に開催されていて、手頃な値段でアンティークやヴィンテージのものが手に入る。なかでもアンティーク食器は、日常的に使えて空間を瞬時に華やかにしてくれるから、積極的に集めている。

これらの食器を3Dプリンターでまったく同じように作ったとして、同じように魅力を感じるだろうかと、ふと考えた。アンティーク食器には、作られた当時の水と土と、火、すなわち”自然”が、多くの場合、人の手で閉じ込められている。色や形、質感を3Dプリンターで完全に再現できたとしても、完全に同じではないだろう。

数十年から百年以上もの昔に、光が注ぎ、風が吹いたフランスの大地。その風景を想像することしかできないけれど、その想像はどこまでも精神を豊かにしてくれるようにおもう。既に存在しない当時の自然で作られた食器に実際に触れられるなんて、ちょっとしたタイムトラベルだ。

カップに熱いコーヒーを注ぎ、お気に入りのうつわにパンをのせて、朝食の支度をする。日々の当たり前は、ひとつふたつのうつわがあれば、ずっと壮大な瞬間を作り出してくれるのだと、静かにおどろいてしまう。幻想に酔いしれるのは現実のほうなんじゃないか、ほんとうは。

今夜の料理にどのうつわを使おう?夢を見ているようにそんなことを考えている。

時代を横断するうつわは、できるだけ手作りの料理につかいたいとおもうようになった。努力や工夫をしているわけではなく、SNSにありがちなすてきな暮らしを目指しているわけでもなく、ただ自然に、そういう気持ちが湧いてきた。食器たちが長年親しんできたフランスの家庭料理をたくさん習得することが目下の目標だ。

エッセイストとして活動することが夢です。自分の作品を自費出版する際の費用に使わせていただきます。