高齢期リハビリのココロエ24『老衰だから積極的な食事介助はやめましょう、寝かせておきましょう』は本当に正しいのか

 老衰(ろうすい、英語: Senility)とは、加齢により脳を含めた全臓器・細胞の力がバランスを保ちながらゆっくり命が続かなくなるレベルまで低下していき、最後に下顎呼吸後に死亡することである。(Wikipediaより引用)つまり老衰は『全身の細胞が死に向かい、生が途絶える』という感じでしょうか。
 老衰の前兆は『体重減少』『食事量減少』『睡眠時間の増加』だそうです。「あれ?あのご利用者、食事量減ってるね、しかも日中もずっと寝てるし…、老衰かな。」とそんな会話が高齢者施設ではスタッフの間で交わされることがあります。
 実はうちの祖母も老衰でした。食べなくなって1週間後に自宅にて車椅子に座ったまま眠るように亡くなっていました。そもそも食べなくなる2週間前くらいから表情が乏しくなり目に光がなくなっていました。
 最期は医師の指示と家族の総意で「食べられる分だけ食べる」「口を湿らす程度の水分」を祖母に促していました。
 さて、ここで問題が生じます。老衰と考えられる方でも脱水・低栄養を改善すればまたもう一度盛り返すのでは?生活パターンを改善すれば元気になるのでは?という希望も捨てきれません。「あぁ、この方はもう老衰だから食事介助も必要ないです。寝かせておきましょう。」と医療職が指示した場合、どうにかしたら元気になる可能性があったとしても、その可能性は消えてしまいます。当然、食事をとらない、寝かせきりにしていると人は意識レベルが下がり、より食事をとらない、起きることがしんどくなる悪循環になります。そしてますます「あの方はやっぱり老衰で間違いなかった」となるのです。
 つまり老衰だと思うから、そっとしておきましょう、という考え方は時としてかなり危険な考え方になりえます。「あの人は老衰だから積極的な食事介助はやめましょう、寝かせておきましょう」はある意味、その一言で当人を意図的に死へ向かわせることができるのです。
 そこに至らないためにも、なぜ弱ったのか、なぜ食べなくなったのか、どうしたら食べられるのか、もしくは食べることや起きる時間を増やすこと、楽しみを増やすことで回復する可能性があるのか、今一度多職種で協議することが重要といえます。
 判断は非常に難しいかもしれませんが専門職が心を折ってはいけない課題だと考えられます。

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