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おばあさんとチェンジ•ザ•ワールド 〈アレクサ活用〉

リモート”同居”とはいえ、もちろん実際は一人で暮らすmy母(83)宅にアレクサを設置したのは2年ほど前。80代で認知症で、どう使っているのか、設置のプロセスや活用についてご紹介します。

要介護1の認知症で使用スタート

my母の認知症の初期症状が現れたのが2018年の夏、画面つきスマートスピーカーAmazon Echo Spot (※上の画像)が日本で発売されたのがまさに同じく2018年の夏。要介護1の認定になったのが2019年の1月なのですが、急いでこのEcho Spot を購入したのを覚えています。

もちろん、不安はありました。

my母の記憶力がこの先どんどん衰えるとなったら、正しい使い方は覚えられないのではないかという不安。



そもそも使う使わないの前に「何が何だかわからなくて怖い」という幻覚などのきっかけになるかもしれない、という不安。



なにせ、80の高齢でしかも認知症になってから新しい通信機器を使うということの影響ががいかほどか、まだ世の中に潤沢な知見があるわけではないからです。

しかし、良いことの方が多いだろうと踏んで、思い切ってmy母宅に導入しました。

まずはWi-Fiの設置


どれだけ使いこなすかわからないので、契約期間の縛りがなく、いつでも契約解除できるWi-Fiを探すことに。
で、選んだのがこれです。

FUJI Wifi  30GB  約3000円/月  ルーター

30GBも使わないのですが、容量不足が引き起こすトラブルを回避するためにまずは”気持ちの余裕”を選んだといいましょうか。


ちょうど先日、2年ほど使ったからか、謎にバッテリーが膨張していてバッテリーの買い替えに。消耗品として諦めましたが4400円+送料となかなかのお値段でした。

次にメールアドレス・デバイス・アプリ

我々は当たり前に保有している、IDに活用するメールアドレスやデバイス。気がつけばそうしたものがゼロ状態なので、アレクサデバイスのセットアップ前にも、あれこれセッティングが必要でした。

アレクサセットアップ前のプロセス:
① my母のdocomoメールアドレスでGoogleアカウント/gmailアドレスを取得
② アンドロイドタブレットをWi-Fiに接続
③ GooglePlayからアレクサアプリをダウンロード
④ my母のgmailアドレスでAmazon IDを取得しアプリにログイン
⑤ アプリとアレクサデバイスを連携
⑥ アレクサデバイスにAmazon IDでログイン!

これ、メールアドレスがなかったらメアド取得からスタートということ。個人に紐づくメアドのひとつもないと、全くお話にならない、ということですね。
まるでロールプレイングゲームのように、これを達成したら次これ、と攻略していき、ようやくアレクサ様に辿り着けるのでありました。

最近、②のアンドロイドタブレットの機種が古すぎるため、アプリのアップデートができずアレクサに不具合がありました。そこで下取りせず保管しておいたiphone7を提供して差し替えたのですが、またApple IDの取得からスタート。こうして日本の83歳活用データも、ついにGAFAの3社に仲間入り!

悩ましいのがクレジットカード

映画をみたり、音楽を聴いたり、多様なサービスを便利に使うには引き落としが簡単にできるようにクレジットカードもつくりたいのですが、、、
高齢者とカードには危険がつきまとうのでは、と用心して様子見していたところ、「やっぱりクレジットカードと紐付けはやめよう」と思わせたひと幕が。

ある日、my母と過ごしているときに、「アレクサ、落語をきかせて」と呼びかけてみました。ところが落語がなかなか始まらずに、アレクサの「有料会員」と読み上げる声がきこえてきました。ん?と画面を見ると、下の方ににちゃっかりひとこと、
『アレクサ、有料会員について教えて』と、呼びかけを促しているではありませんか!(以下の画像をよーーくご覧ください)

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かつて、同じように「落語をきかせて」と言えば、即座にアレクサは抑揚のない語り口で小咄を聞かせてくれた記憶なのですが… このときは特別プログラムをお勧めしていたようです。



なかなか油断も隙もないな(※認知症の高齢者にとって)と、心配ごとが増えないように、支払いを紐づけるのはやめておくことにしました。

実際使ってみて

アレクサは現在Echo Spot から Echo Show8 に買い替えて、my母が主に過ごしているダイニングテーブルの上に視界に入るように置いています。

実は一番使っているのは、ホーム画面の時計・天気・ニュース。朝まずアレクサを見ているようです。

そのほかは音楽(Amazonミュージックの無料版)を聴いています。

例えば、「アレクサ、プレスリーをかけて」など。

先日の出来事なのですが、my母宅で一緒に過ごしているときに、ちょっとしたことで母がやや苛立っていました。私はそそくさと別室に移動してmy母の心の平穏を待とうとしていたら、向こうから

「アレクサ!バラードをかけて!」という強い声が聞こえてきました。

そして次に聞こえてきたのが、泣きのギターと「ちぇーえええんじざわー」とエリック・クラプトンの情感たっぷりの渋い歌声。
おばあさんとアレクサと”Change the World”のフレーズと音色がツボにはいって、しばらく鼻をつまんで笑いが止まりませんでした。

そのほか、アレクサの提案する呼びかけも、退屈しのぎに活用中。画面にランダムに呼びかけの提案の文が現れます。
例えば、



「アレクサ、今日の天気は」と言ってみて

「アレクサ、今日のおもしろトリビア」と言ってみて

「アレクサ、緊急事態宣言はいつまで」と言ってみて

など。

ふと気がついて気が向くと、声をかけているようです。

Googleカレンダーと連携するとリマインダーも使えます。が、実は使っていません。というのも「今日のリマインダーを教えて」と呼びかけなければならず、83歳にはあまりにも聞き慣れない言葉で定着しませんでした。

あとは1番の目的であったビデオ通話。これは本当にあってよかった! 最初は「不思議だね」と言っていましたが、2年も使っていると「そういうものだ」と受け入れてくれました。

実際、my母からアレクサでビデオ通話がかかってくることはほぼなく、主に私からかけています。外にいるときにかけて街の様子を見せたりもします。

しかし一度、my母から突然コールがあった日がありました。

どうやら携帯電話と固定電話の使い方がふとわからなくなったようです。電話番号を押す、登録番号を押す、ということがふとわからなくなり、不安になって、「アレクサ!◯◯に電話して!」と呼びかけたようです。火事場の△△力といいますか、急に別の記憶の小箱がぱっかーんとあいたのです。



こうしたことがあり、代替がきくので複数の通信機器をもっているのは便利だな、と実感しました。

認知症とてあきらめない

my母が認知症とわかってから、いろいろと苦労はあるものの、my母に対しては老いることへの発見の機会を与えてくれてありがたいと感じています。
私がそういう態度でいると、my母も自分の変化を楽しめる余裕が生まれているように見えます。そうするとこちらも楽しいのでwin-winです。

半年ほど前、認知症の専門医へ診察へ行ったとき、母が別室にいる間に母の様子を伝えました。

これとこれの記憶がなくなってきていて、しかし新しいこれとこれができるようになった、と。すると先生がこう言ってくださいました。

「高齢者が認知症となって、ご家族が”新しくこれができるようになった”という報告をすることは滅多にありません。あれができない、これができないと、嘆くようになってしまいます。
だから、”これができるようになった”という前向きな発見をしているのはとても良いことですよ」と。

センセ、褒め上手〜!と浮かれつつ、認知症専門医のお墨付きをもらったという自信になりました。

高齢だから、認知症だから、とあきらめないで、老いに時代を味方につけてよりよき世界へ。これからもmy母と新しいことを取りいれていきます。

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