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『消費文化理論から見るブランドと社会』が出版されました

編集と執筆を担当した『消費文化理論から見るブランドと社会』(中央経済社、2024年)が発行されました。Amazonでも販売が開始されましたので、紹介させていただきます。

8名の執筆者からなる共著です。「消費文化」という用語は他の学問領域でも広く用いられている用語でもありますが、私たちはマーケティングと消費の関係を研究しているマーケティング・流通の研究者です。今回、マーケティング研究において2000年代に入って急速に注目されるようになった消費文化理論を用いて、現代社会におけるブランドと消費との関係を中心に考察を試みました。 

各種の格差に象徴される多くの問題を抱えながら情報化が進展する社会において、人々の消費生活とマーケティングはどのように関係しているのか多角的に論じています。コミュニケーション資本主義やクリエイティブクラスといった現代社会を説明する概念を駆使しつつ、ノマドやスタートアップ企業に勤める人々の声を聞き、クリエイティブ都市における市場文化に接近したり、消費者アイデンティティを形成するために用いられるブランドにアプローチしています。

また消費文化理論の中から派生したカルチュラル・ブランディングというブランド理解の枠組みを用いて、ユニクロ、資生堂インテグレート、メルカリを題材にブランド戦略の分析を行っています。社会経済の歴史的な転換への対応が強力なブランドアイデンティティ構築における成否を分けることが論じられます。またミニマリストと呼ばれるライフスタイルにも着目しています。 

理論的には、多国籍企業による国際戦略を理解するフレームワークにおいて消費文化理論が果たしうる貢献について考察したり、伝統的商業経済論の延長線上で消費者情報システムをどのように構想するのかといった議論を展開しています。

私は、第3章の「ノマド消費とブランド:MacBookとStarbucks」の執筆を担当しています。リキッド化=流動化の傾向を強める人々のアイデンティティとその形成に導入されるブランドについて論じています。またプロローグとエピローグの執筆を担当し、プロローグでは、消費文化理論やカルチュラルブランディングについての概説と、現代社会における消費とマーケティングの関係を考察する際のキーワードをまとめています。 

もう少しマクロな視点で消費とマーケティングの関係について考えてみたいと思っていたとか、時代潮流に合わせたブランド戦略について考えてみたいとか、あるいは従来のミクロでマネジリアルなマーケティング論に物足りなさを感じていたとか、あるいはマーケティングは専門外だけどどうアプローチすれば良いかわからなかったという方にもおすすめです。


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