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なんて贅沢!あの伊藤若冲の、国宝「動植綵絵(どうしょくさいえ)」の絵本で遊ぼう

名画のなかで生きものたちがかくれんぼ

 いまや最もメジャーな日本画家ともいえる伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)。その代表作「動植綵絵(どうしょくさいえ)」は、2021年夏に国宝になることが決まりました。日本が誇るこの名画を惜しげもなく掲載しているのが『若冲の絵本 み〜つけた!』です。

 本に登場する絵は、若冲が40代のほぼ10年をかけて描いた動植綵絵30幅(ぷく)の作品(絹のかけ軸のようなもので、1幅、2幅と数える)から著者の結城昌子さんがセレクト。高さが約140㎝もある絵画が絵本の中にギュギュッと詰められて、本を開いた瞬間からその迫力に目を奪われます。鮮やかで緻密、時にユーモラスに描かれた生きものたちの登場に、子どもが夢中になることうけあい。鶏や小鳥、虫や魚、カエルがイキイキと飛び回り、絵本の中で大はしゃぎ。まるで木々や葉っぱ、大輪の花にかくれんぼして遊んでいるみたいです。

 「フフッ。いい場所みつけたでしょ?」 いまにも生きものたちのささやき声が聞こえてきそう。ページをめくるたびに、若冲の生きものたちへの愛情の深さが伝わり、物語の中にどんどん引き込まれていきます。

ボタンやコデマリの花と戯れるように、小鳥や小さな虫たちが。(牡丹小禽図)

著者・結城昌子さんからのメッセージ

 あらたに『若冲の絵本 み〜つけた!』が加わった「小学館あーとぶっく」シリーズ。遊ぶような感覚で、名画と小さな頃から親しんでもらいたいと願って作り続けてきました。私にとってはどの巻も大それた挑戦だと思いながら続けています。

 執念とも祈りとも思える濃密な若冲の画面に息づく生きものたちを見ていたら、いろいろな生きものと「この世界を分かち合っている」という実感がふつふつと沸き起こってきたのです。
 隅っこをみつけるのが大好きな子どもたちであれば、きっと若冲の絵を見ながら、自分も含め、生きているもの全てを愛せるようになるのではないかと思うにいたりました。
 美しく力強い「動植綵絵」の世界を、遊びながら子どもたちに知ってほしいと思います。

 穴のあいた葉っぱに沿うようにくっついているケムシ、
目から涙が出ているように見えるタイ、お尻だけ見えている水鳥……。
こうした細部を見つけた時に、昔遊んだかくれんぼの思い出と若冲の絵が重なってきました。

 この絵本は、かくれんぼを小さなストーリーにしているので、「あ、みつけた!」と言いながらお子さんと一緒に生きものたちをみつけてもらいたいと思います。おそらく、若冲もこの世界のなかに息づく生きものたちを見つけながら、「みつけたよ」と、つぶやいていたに違いないと信じています。絵の中の生きものたちに触れ合いながら、若冲と同じ視線を味わってもらえたら嬉しいです。

最近、平仮名とカタカナが読めるようになった5歳のカレンちゃん。最初はママに読み聞かせしてもらいながら隠れている生きものたちを探し、2回目は、「自分で読みたい!」と、一人で頑張って読んだそうです。ひょうたんに隠れたトンボや、ママの足にしがみつくタコの赤ちゃんに興味津々。


池の周りにも様々な生きものたちが。(池辺群虫図)


タイは涙している?(諸魚図)


アートは遊んでくれる! アートと遊ぼう!

 「小学館あーとぶっく」は、楽しみながらアートの感性を養う人気シリーズ。1993年の刊行以来30年近く版を重ねていて、外国語翻訳版を含めると累計発行部数が250万部を超えるロングセラーです。『ゴッホの絵本』『ピカソの絵本』など世界の名画編に続き、2019年から『広重の絵本』『北斎の絵本』を皮切りに日本画編がスタート! 熱烈なファンが多い伊藤若冲は、待望の新刊として仲間入りしました。子どもの目線に立った優しい眼差しと遊び心たっぷりの誌面づくりは、子どもはもちろん、大人たちを童心にかえしてくれます。


『若冲の絵本 み〜つけた!』

著・結城昌子 小学館 定価¥1,650円(税込) AB5判 32ページ


結城昌子(ゆうきまさこ)
アートディレクター、絵本作家。
「小学館あーとぶっくシリーズ」をはじめ、数々のアート書籍を出版。
子ども、大人を対象にしたアートのナビゲーターとして活躍中。
第47回小学館児童出版文化賞、第48回産経児童出版文化賞(フジテレビ賞)、第50回久留島武彦文化賞を受賞。
結城昌子オフィシャルサイト:https://www.artand.jp/






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