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書籍『安心な認知症』抜き出し無料公開(2)――「はじめに原稿」の全文

認知症になるのは、怖いですか?
家族が認知症になるのは、不安ですか?


いきなり、こんなぶしつけな質問をされたら、ドキッとしてしまう方も多いかもしれません。

私たちこの本を作ったスタッフは、この2つの問いかけに制作前はどちらも「はい」の回答でした。冒頭のマンガに登場した専門家の方々に取材する前、認知症になるのは怖かったですし、認知症になった家族をじょうずに介護する自信もなく、認知症に対しては、ただ不安しか感じていませんでした。

認知症になった父親の介護が始まった本書のライターのひとりは、「認知症の本人の気持ちに寄り添うこと」の大事さを頭ではわかっていながらも、日々の介護生活のなかで起こる本人の失敗に対して、ついつい感情的に怒鳴ってしまうこともありました。

また、認知症が進んで、医者の話をだんだん理解できなくなってきた父親の病院での診察にすべて立ち会わなければならなくなり、仕事と介護をどう両立させればいいのか悩み、これから先の不安な気持ちを隠せずにいました。

また、もうひとりの取材ライターは、実家に父とふたりで暮らす母親が認知症となり、老いた父による「老々介護」をサポートしていましたが、とうとう限界が来て、母親を介護施設に預けることになりました。

でも、それで状況が落ち着いたかといえばそんなことはなく、母親を施設に預けたあとの父が元気をなくすようになり、また、コロナ禍の状況で母親との面会もままならず、施設で本当に楽しく過ごせているのだろうか……と、心配のタネは尽きません。

加えて、慌てて施設を決めてしまったこともあり、介護費用が当初の想定よりもかかってしまい、このまま幸いにも元気で暮らせたら、今度はお金が足りなくなるのでは……という心配にも直面しています。

本書の担当編集者も、田舎に暮らす老親のもの忘れがかなり多くなり、認知症を疑い始め、これからの生活に対しての漠然とした不安を抱えています。

私たちはみんな、「ではどうしたらいいのか?」の新たな一歩を踏み出せず、忙しさにもかまけ、これから起ころうとしている問題に向き合わずにいました。

 果たしてこのまま、認知症から目をそらしていていいのだろうか――そう考えるなかで、〝認知症診療の第一人者〟である繁田雅弘医師に出会い、認知症についての新たな向き合い方を学ぶ機会を得ました。
 この本では、繁田さんを中心に、認知症の人とその家族を支える〝認知症プロフェッショナル〟の方々に教えていただいた内容を、あますところなく報告します。
 その方々への取材を重ねるなかで、最新の認知症医療の視点だけでなく、介護・看護の視点、介護保険サービス活用の視点、介護施設利用の視点、訪問診療の視点などを学び、私たちの知らない〝常識〟がたくさんあることに気づかされました。
 さまざまなプロフェッショナルたちの「認知症の不安を、安心に変えるアドバイス」は、心の持ちようから実践ノウハウまで、目からウロコのものばかりです。
 認知症の家族介護に直面している方々はもちろん、近いうちに直面しそうな方々、そして今はまだ他人事でもこれから先にきっと認知症に向き合うことになるであろう多くの方々に、本書の内容をお届けできれば幸いです。


主婦と生活社ライフ・ケア編集部


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