書籍『安心な認知症』抜き出し無料公開(4)――「本文Q7」の全文
【認知症を診てくれる医師の見つけ方】
Q7)
医者に診てもらうことにしました。
どんな病院・クリニックに行けばよいでしょうか?
A)
通常、最初はかかりつけ医に相談することが一般的で、認知症の疑いがあると診断されると、より専門的な診察や検査ができる医療機関を紹介してくれます。
原則としてはこうした回答になるのですが、「本当にすべてのケースで必ずかかりつけ医に相談するのがいいのか? 認知症の専門医のほうがいいケースもあるのではないか?」と問いかけられると、難しい問題です。それは、受診を希望している人の年齢、合併症の有無、臨床症状、医療機関までの交通の便などによって異なると思います。
65歳未満で若年性認知症が疑われる人は、最初から専門医を受診したほうがよいかもしれません。
若い人であれば、できるだけ早期に診断を受けたほうが、傷病手当金や障害年金などの社会資源を利用することもできます。神経心理学的検査に加えて、脳の形態画像検査、機能画像検査をしっかり受けたほうがいいでしょう。有病率が低くまれな疾患になりますので、認知症のエキスパートに診てもらう必要があります。
現在、本人や家族からの若年性認知症に関する困りごとや悩みごとの相談に対して解決に向けた支援をする若年性認知症支援コーディネーターが全国で活躍しています。彼らに最初に相談するのもありだと思います。
もともと生活習慣病や心臓疾患、呼吸器疾患などを合併している高齢者は、まずはかかりつけ医に相談しましょう。
高齢になってくると、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病に加えて、心房細動や慢性心不全などの心疾患や、COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患を合併しやすくなります。
夏場で急に認知機能が低下したようにみえる人のなかには、ベースにある身体機能の低下に、脱水が加わったり感染症が合併したりして、認知症のようにみえる場合があります。まずは、身体的状況をきちんと評価する必要があります。
よく勉強しているかかりつけ医は、認知症に詳しくない精神科、神経内科、脳神経外科の医師より、認知症のことをよく理解しています。優秀なかかりつけ医は、専門医にもこころよく繋げてくれるでしょう。
かかりつけ医がいない場合は、下記の相談機関などで、認知症の診断・治療をしている医療機関の情報を提供してもらってください。
あるいは、お住まいの地域にある地域包括支援センターに問い合わせて、その地域の近くにある認知症疾患医療センターを教えてもらうという方法もあります。
認知症疾患医療センターは、認知症に関する詳しい診断や専門医療相談などを行う医療機関です。地域の中で認知症の人やその家族に、適切な専門医療を提供する役割を担っています。認知症の診断、治療、助言などを行う認知症の専門医や臨床心理士、精神科ソーシャルワーカーがいて、介護関係機関などとの連携も行っています。
自ら認知症の専門医を探そうという場合には、「日本認知症学会」 「日本老年精神医学会」などの学会で専門医を認定しているので、その情報を手がかりに探す方法もあります。インターネットの検索サイトで、前述のどちらかの学会名に「専門医」 という言葉を加えて、2語で検索して調べると、それぞれの認定医リスト情報にたどり着けます。
認知症は一般的に経過の長い疾患のため、主治医を選ぶときに大事なことは、医師との相性です。
本人や家族への説明を十分にしてくれるか、本人や家族の話、相談にきちんと応じてくれるか、本人や家族の生活状況まで考慮してくれるかといったことが、医師を選ぶ重要なポイントになります。とくに、本人や家族がその医師に質問しやすいか、受けた説明に納得できるかといった感覚が大切です。
診察を受けた医師の接し方に納得がいかなかったときには、医師を変更することも一法です。医師に率直に話をして、別の医師への紹介状を書いてもらいましょう。それを依頼したときに不機嫌になる医師は、かかりつけ医であっても専門医であっても、その後、関わらないほうがよいでしょう。
なお、「だれに聞いても評判の良い医師」はいません。また、「だれからも評判の悪い医師」もいません。まわりの意見に振り回されず、自分たちが信頼できる医師を見つけることが大切です。自分たちに寄り添い、信頼できる医師が見つかれば、診断後も本人や家族は安心して暮らしていけます。
<担当編集者が驚いた! 目からウロコの注目情報>
◉地元の認知症診療の情報は、地元のケア専門職が詳しい⁉
かかりつけ医が、認知症のことをしっかりわかってくれていればいいのですが、そのあたりはケースバイケースなのが現実……。認知症を診てもらう医者を自分でみつけなければならなくなった場合、どうしたらいいのか?
本文でガイドしているように、ネットを使って専門医を探す方法もありますが、もし、本文でも紹介している「若年性認知症支援コーディネーター」であったり、地元で認知症カフェに参加されている専門職(介護士、看護師、ケアマネジャー等)の方につながることはができるのであれば、その人たちにまずは相談してみるのも、ひとつの手かもしれません。
ちなみに、私の場合、老父の認知症診察に関して、地域包括支援センターで教えてもらった、最寄り駅から2駅先にある認知症疾患医療センターでの情報と、父の住む実家の近くで開かれていた認知症カフェで出会った介護士(ご自身で認知症の家族介護を体験済み)の方のアドバイスが、非常に有用でした。
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