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書籍『安心な認知症』抜き出し無料公開(3)――「本文Q5」の全文


【認知症の可能性がある人の特徴】

Q5)
高齢の母がもの忘れをすることが増えています。
認知症でしょうか?


A)
認知症初期のもの忘れと、老化(加齢)によるもの忘れの境界は、じつはあいまいです。
たとえ医師でも、軽度認知障害(MCI)や認知症の初期のころは、老化(加齢)によるもの忘れと区別することは難しいともいわれています。

また、認知症の人は自分のもの忘れを自覚していない、自覚しているうちは認知症ではない、という話もよく見聞きします。しかし、最近では、自分のもの忘れを気にしてひとりで医療機関を受診し、認知症と診断される人も増えています。

*1: 研究論文:Ballard et al.Management of agitation and aggression associated with Alzheimer disease.Nat Rev Neurol.2009 May;5(5):245-55.doi:10.1038/nrneurol.2009.39.


認知症によるもの忘れと、老化によるもの忘れの大きな違いは、もの忘れが進むスピードです。
老化によるもの忘れの場合は、症状が始まったあとも同じような状態が続き、急激に悪化することはまずありません。一方、認知症によるもの忘れの場合は、数か月〜1年単位で症状が悪化していき、日常生活に大きな支障を来すことが増えていきます。

認知症は、原因になる病気の違いによって症状が異なります。認知症を引
き起こす病気のなかで多くを占めるアルツハイマー型認知症の場合はもの忘
れ(記憶障害)が代表的な症状ですが、レビー小体型認知症や前頭側頭型認知症などのように、もの忘れが目立たないタイプの認知症もあります。

服用している薬の影響や、体の病気やうつ病などの心の病気が原因で、もの忘れが現れたりすることもあります。


「もしかしたら認知症かも?」―家族が最初に感じた違和感

● もの忘れがひんぱんになった
● 同じことを何度も言ったり聞いたりするようになった
● 物を置き忘れたり、物をなくしたりすることが増えた
● 家事、仕事、車の運転などのミスが増えた
● 料理の味つけがおかしくなった
● 好きだったこと(趣味など)に興味がなくなった
● 外出することが減り、ふさぎ込むようになった
● ささいなことでイライラするようになった
など

※ 出典:「認知症初期の暮らしと必要な支援 認知症の人と家族からの提言」(公益社団法人 認知症の人と家族の会)、「もしも気になるようでしたらお読みください 認知症について 違和感があるあなたへ そして、ご家族へ」(社会福祉法人東北福祉会認知症介護研究・研修仙台センター)より改変


もの忘れだけでなく、本人の言動で気になることがないかどうか様子をみ
てみましょう。上に示した項目で該当するものが多くある場合は、認知症の
可能性もあります。

<担当編集者が驚いた! 目からウロコの注目情報>

◉「軽度認知障害(MCI)」に対する誤解

「軽度認知障害(MCI)」は、認知症予防関連のニュースや記事でよく出てくるキーワード。私はてっきり認知症の一歩手前の状態、あるいは認知症と正常の間のグレーゾーンの状態だと思っていましたが、それは正しくありませんでした。

厳密には、「認知症の疑いがある状態」、「認知症になるリスクが高くなった状態」のこと。

認知症の疑いがあって専門医を受診した場合に、日常生活にこれといった支障がなくても、記憶力が衰えた、仕事の手際が悪くなったなどという訴えがあれば、MCIと診断される可能性はあるそうです。

1回受けた認知機能を調べるテストの成績が悪かっただけでMCIと診断される人も……。テストを受けたとき、たまたま集中力が低下していたり、ストレスがあったりして成績が振るわず、テストを再び受けたら好成績だった人もいるとのこと。

MCIの判断はさまざまな要因によって影響を受けるので、医師による診断にもばらつきがみられるそうです。


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