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母の主治医
公開することはないかもしれないが備忘録として記しておこう。
母の主治医に関することだ。
母の主治医には高齢の母親がいた。
いるではなく「いた」と書いたのは、お亡くなりになられたからである。
主治医の先生は、この数年、世界が煩わされている感染症の入院患者さんを受け入れる専門の病院ではなかったが、入院患者さんを受け入れることとなり、外来の診察を長期間休みにして入院患者さんの治療に専念していた。
主治医のお母様が亡くなられたのは、その最中であった。
先生は家にも帰れなかった。入院患者さんの治療をしていたから。
自宅外で宿泊し、葬儀の準備もすべて家族に任せるしかないまま、自分の母を見送ることもできないままだったそうだ。
親を看取れず、親を奪った病と戦い続けた主治医の胸中を思うと、穏やかではいられなくなる。ずっと私の母がお世話になっており、20年以上も関わり合いのある先生である。
そんな主治医の先生の事情を聞いた母から、聞いた。
だからこそ、我が家は感染対策の気をあまり抜かず手洗いうがい、消毒にマスクをなるべく続けている。ワクチン接種もした。
身近すぎるほど身近というわけではないが、20数年、月に一回とか2ヶ月に一回程度で顔を合わせていれば、友人でも家族でもないけれど、それなりに絆のようなものがある。そんなひとの悲しみを前にして、迂闊な死に様を見せてはいけないような気がした。
人間、死ぬときは死ぬかもしれない。
でもそれが、ノープラン・ノーガードで死んでいい理由にはならない。
ある程度はきちんと考えて生きているうえでの話だと思う。
時期的に、そのまますぐに火葬だったらしい。
だから、記憶の中のラストカットが母との別れのシーンになる。
きっとそれが今生の別れになるなんて思っていなかっただろう。
私も毎日、そんなことを思って生きちゃいない。
出し惜しみしていたら、恩を返せなくなるな。と思う。
こんな生活力のないクソ野郎が恩を返すとかいうまえに自力で生きろバカタレって話だが、まずは、自分自身をしっかり人生を立て直すところから始めなければいけないんだろうな。気が重いが、気が重い自分を救うのも自分自身しかいない。人生にヒーローは駆けつけない。世知辛い。
でも、母の主治医の無念をおもうと、少なくとも、感染対策くらいはしていこうと思う。医療費やお見舞いの交通費も節約できるしね。
健康は最大の節約って、誰かが言ってた。
言ってなかったら私の言葉にする。でもたぶん先人がいる。
あたり前のことだから。
さて、と。寝る準備でもするかな。
現在の時刻 2021/09/23 午後11時17分 木曜日
胸中 おだやかめ
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