見出し画像

嘆きの行進:ムハッラム

シーアのムスリムにとって大切な行事、ムハッラム(Muharram)がコルカタでも営まれた。ムハッラム、地域によってはアーシュラー(Ashra)と呼ばれている。特にシーアが多くを占めるイランや中東地域などではよく知られた行事だ。もちろん、インドにもシーアのムスリムはいるが、インドのムハッラムにはスンニのムスリムも参加している場合が多い。

ターズィヤー(Taziya, もしくは、ターズィエーTaziyeh)@筆者撮影
風のように続く行進@筆者撮影

© 2013 Liem. All Rights Reserved.
ムハンマドの娘婿アリーの息子であるフサインがカルバラーという場所でヤズィードに殺害されたことを嘆くムハッラム。アリーの血筋しか指導者として認めないというシーアのムスリムにとって、フサインの死はこれ以上のない悲しみとして胸に刻まれている。その悲しみをともに分かちあうため、中には自らの身体をナイフや鎖で打ちつける者も多く、その嘆きの姿は度々マスコミでも取り上げられるので、目にした方も多いだろう。

棒術を披露する一団@筆者撮影

今回はターズィヤー(Taziya, もしくは、ターズィエーTaziyeh)の行進を紹介したい。インドでは、フサインの死を悼んで、廟や棺を模して造られた山車を引きながら、「ヤー、フサイン!」と叫び、行進する。この山車をターズィヤーと呼んでいる。ターズィヤーの行進中は道路が完全に封鎖され、歩行者天国と化す。私はデリーのターズィヤーも見学したことがあるが、コルカタのターズィヤーは小振りではあるものの電飾のついた細工が多く、巨大な三角旗を立てるのが特徴であるように感じられる。また、デリーでは昼間から夜中にかけて行進をみることができるが、コルカタは夕方から夜中にかけて行進がある。そのためか、ライトアップも華やかだ。旗手は憧れのポジションなのか、子供たちが集まっては交代をねだっている。また、どこかのグループで火を吹く妙技をする者が現れれば、同じような妙技を競ってみせるグループも。棒術のパフォーマンスや演奏隊など、嘆き・・・というよりもお祭りのムードが漂っている。

ライトアップが美しいターズィヤー(Taziya, もしくは、ターズィエーTaziyeh)@筆者撮影
大きな旗を先頭に進む@筆者撮影

このターズィヤーはどこへ行くのか。最終地で「埋葬」される。デリーでは土に埋められるが、コルカタでは池に沈められる。ここでも同じ行事でありながら、地域の特性が現れる。ムハッラムは、決して「お祝い事」ではなく、皆で嘆き悲しむものなのだが、これだけ騒々しいイスラームの行事も珍しいだろう。「コルカタといえば、ドゥルガー・プージャー」と、いう方。是非、ムハッラムも見学して欲しい。フサインを想う胸の痛みと団結力を肌で感じることができるだろう。

ターズィヤー(Taziya, もしくは、ターズィエーTaziyeh)@筆者撮影
ターズィヤー(Taziya, もしくは、ターズィエーTaziyeh)@筆者撮影


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?