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スピリチュアルじゃ変われなかった


昨日、久しぶりに日本人のお友達と電話で話した。
お互いの近況報告で、私はここ2か月程で大きな変化があり、数年ぶりにカフェや映画館に行くことが出来たと報告した。
彼女もすごいねー、よかったねと喜んでくれ、あれこれ取り留めのない話をした後、自分は最近ある本に出会い、引き寄せの法則を実践しているのだと教えてくれた。
私の知らない著者名で、聞いたこともなかったが、実践の内容としては他の引き寄せの法則同様、自分の思考感情が現実になる。よって出来るだけポジティブなことを考え、いい気分でいることが大切。脳は現実と非現実を区別できないから、そうすれば自然とポジティブな現実を引き寄せ、幸せになれる、みたいな内容らしい。

彼女はこの本に出会い、内容を実践して約1週間。何となくいい気分でいることが出来ているそうだ。
優しい彼女は「イズミちゃんもやってみたら。さらに願望実現が加速して、念願の飛行機に乗って日本里帰りも思ったより早く実現するかもよ」とアドバイスしてくれた。

お言葉は本当にうれしいんですけど、でも・・・。
私はパニック障害になり、うつを併発していた時期も長いので、何とかよくなりたくてすがるように沢山のメソッドを試した。
心理療法的なものから、スピリチュアル、少しだけ宗教関係など救いを求めて手を伸ばしたものは数知れず。
一時期日本から取り寄せる本は、すべて心理療法かスピリチュアルメソッドのものばかりだったし、暇さえあれば、インターネットで気に入ったセラピストさんのホームページや成功談の多いメソッドを食い入るように読み漁っていた。受けたセミナーやセラピーは10指を超える。

自分がパニック障害であることをカミングアウトしてからは、心優しい人達が、○○がお勧めだよ、△△という手法が効くよ、といろんなアドバイスをくれるのだが、セラピージャンキーだった私ははっきり言ってそのほとんどすべてをもう試していた。そしてあまり変わらなかった。
新しいメソッドを試すことで、何かいいことをしている気になり、一時的に少し気分がよくなったことはあった。でもだいたい1,2週間しか持たない。そしてまた落ち込みが来る。そこにとどまっているのが怖いから、また次のメソッドを探す。今度こそ、次のメソッドこそが私を救ってくれるはず、次のセラピストさんこそが私にピッタリの人で、うまく行くに違いない。堂々巡りの空回りの日々。ハツカネズミが輪の中でくるくる回るようにあてどもなく探求を重ね、最後の方は探求疲れ。本当にあの日々にはもう戻りたくない。

引き寄せの法則だって、巷には成功談がたくさんあふれているから、合う人には合うのだろう。
私もドはまりはしなかったものの、少し実践してみたことはあったが、頑張ってポジティブな未来をイメージしたって、今の自分のギャップと比べてため息をついてしまう。
友達にそう言うと、「そう、だからこの本の作者も最初はなかなかうまく行かなかったの。それはイメージに感情が伴っていなかったから。うれしい楽しい気持ちでイメージングするのが大切なのよ」と教えてくれたが、そのうれしい楽しい気持ちを呼び起こすことがそもそも無理なわけで、うつやパニックで毎日どんよりとした気分の人にポジティブな気持ちを思い起こしなさいと言うのは、酷ではないだろうか。感情というのは勝手に湧いてくるわけで、それをコントロールしようとか、いい気分に変えるというのははっきり言って無茶だと私は思っている。
ただでさえ落ち込んでいる人に、いい気分でいることが大切って言ったってそれが出来ないんだから苦労しているんです!というのが本音ではないだろうか。

あまりたくさんの探求をしたので、最後の方は体が収縮して、常に神経が尖っていた。スーパーに足を踏み入れるのもパニックとの闘いだったし、家から10分の町に車で行くのにも気分が悪くなり、嘔吐恐怖が頻繁に起こっていた。よくなりたくて探求したのに、最後の方は探求に疲れていた。

というわけで、親切心から出た友達のアドバイスは全く耳に入ってこなかった。
逆に私にはこれだけ多くの人が引き寄せやその他スピリチュアルで変わったというのが不思議なぐらいなのだが。その人たちにはたまたまそれが合っていたのか、そもそもそれほど苦しみが深くなかったのか。
これだけ沢山成功談が溢れているのだからもちろん嘘ではないと思う。何にせよ、それが効果があって苦しみが楽になったのなら本当によかったと思う。
しかし私に関していえば、はっきり言える。スピリチュアルじゃ変わらなかった。

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