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教育系スタートアップがM&Aを選んだ理由  - より速く、もっと高く。

株式会社Libry(リブリー) 代表取締役CEOの後藤匠です。

私たちリブリーは、2012年に創業した教育系スタートアップで、中高生向けのデジタル教科書・教材プラットフォーム「リブリー」を開発しています。現在は、19社の出版社と提携し、全国の10校に1校以上の高校で導入いただいています。

当社はこの度、カシオ計算機株式会社によるM&Aを発表いたしました。

このnoteでは、リブリーに関わるみなさまや、今回のM&Aに興味を持ったみなさまに、当社がM&Aに至った背景や今後の取り組みについてお伝えします!


はじめに

まず、みなさまにお伝えしたいことは、

「後藤は、株主としても代表取締役CEOとしても残り続ける」

ということです。取締役TechLeadの中村も含めて、基本的にこれまで通りの経営体制を維持します。

「数年経ったら...」なんて考えも一切ありません!
リブリーのビジョンでも掲げる「一人ひとりの可能性を最大限発揮できる社会」を実現することが自分の使命なので、ブレずに教育業界に骨を埋める覚悟で、本事業や教育業界の発展に挑戦し続けます。

株式会社Libry 代表取締役CEO 後藤匠

M&Aに至った経緯

私たちはビジョン実現のために、「世界中の全ての人たちが、自分の可能性を愛し、自分や世界の未来にワクワクしながら、自分で自分なりの幸福を追求していける」ようなサービスにリブリーを進化させていこうと考えています。

現時点でも、全国の先生や中高生の皆さんから評価していただいているリブリーですが、実のところ、理想のサービスの1割も実現できていません。届けたい機能の構想が山のようにあるんです。

日本の教育の根幹たる「教科書」を預かる身として、安心して使っていただけるサービスを提供し続ける責務を十分に果たしながら、理想を追うために前へ前へ進んでいきたい。

その両立には、今の自分たちが持っているものだけでは、全然足りません。

では、変化が早いとは言えない教育業界の中で、このままじっくり事業を成長させて、時間をかけてビジョンを実現していくのか。

「もっと速く飛びたい。」

そんなことを考える中で、CASIO社との出会いがありました。

お互いに対話を重ねていくなかで、事業上のシナジーやビジョンの近さもあり、今回のM&Aに至ることなりました。

ここからは、その結論に至った理由について説明していきます。

理由1:お互いを高め合うシナジー

皆さん、CASIO社について、どういう印象をお持ちでしょうか?

G-SHOCKの印象が強い方も多いと思いますが、「カシオ計算機株式会社」の名前の通り、1957年に小型純電気式計算機を商品化したところからはじまり、現在は関数電卓や電子辞書の領域で、グローバルにも大きなシェアを持っています。

CASIO社の教育事業の2大商品

その歴史の中で培われてきたもののなかには、リブリーにとって喉から手が出るほど欲しいものがたくさんあります。

コミュニケーションを重ねるほど、リブリーとCASIO社は、お互いに欲しかったものを持っているとわかりました。ここには書けないものも含めて、ワンチームで相互補完していければ、とても高いところまで翔んでいけるのではないかと率直にワクワクしました。

①双方の事業で培われた学校や出版社とのリレーション
リブリーはデジタル教科書・教材の領域で、CASIO社は電子辞書の領域で、多くの学校や出版社と良好な関係を築いてきました。また、CASIO社は「ClassPad.net」で辞書のデジタル化も進めており、近い領域でお互いに補完できる事業を展開しています。

②グローバル市場での教育ノウハウ
私も詳しくなかったのですが、海外だと日常学習や入試で当たり前のように関数電卓が使われているようです。CASIO社の関数電卓は世界100ヶ国以上に提供され、世界の教育系の省庁や世界中の先生と連携して、教育の発展に貢献されています。

理由2:漠然とした不安が解消された

一方、実際にM&Aを考えるにあたって、「自分で創業した会社をM&Aする」ということに漠然とした不安がありました。特に私はビジョンに対するこだわりが強いので、現経営陣に舵取りを任せていただきながら、教育に心から愛情を注げる人たちと一緒に本事業を成長させていきたいと考えていました。

CASIO社のみなさまとコミュニケーションをとっていくなかで、そのような不安は解消されていきました。不安解消に至った主なポイントは以下の3点です。

①現経営陣に対する信頼
現経営陣を信頼していただき、リブリーの経営は引き続き現経営陣に任せていただくこととなりました。

②教育業界への理解と長期目線でのパートナーシップ
変化のスピードが速くなく、不確実性も高い教育業界において、教育市場やリブリーの将来性を信じていただけました。これで、長期目線で教育サービスの一丁目一番地を目指していけます。

③教育に対する姿勢の近さ
CASIO社は学校現場に寄り添い、こだわった商品開発をするカルチャーを持っています。その姿勢は、「教育をなめらかに変えていく」というリブリーの姿勢とも近いものがあり、安心感がありました。
また、CASIO社の掲げる「Boost Your Curiosity」という教育ステートメントからわかるように、学習者が主役であり、テクノロジーは学習者の潜在的な力を後押しするものだという考え方についても、リブリーの目指す世界との近さを感じています。

CASIO社のプロダクト開発に対する関わり

元々、自分にとって最も大切なことは、「リブリーの筆頭株主であること」でも「上場させること」でもありません。IPOやM&Aはあくまでも手段であり、一番大切なのは「ビジョンの実現」であり「教育業界への貢献」です。

それを最も早く確実に実現していくためにはどうすればよいのか考えました。その結果、CASIO社と一緒に、高速で本事業を成長させ、グループとしての価値最大化を図りながら、ビジョン実現に向かっていくべきだという結論に至りました。

後藤にとって大切なこと

これから何をやっていくのか

まずは、将来を見据え、サービス開発基盤を整えます。
この取り組みは目に見えづらい改善ではありますが、「サービスの安定性のさらなる向上」と「将来的な開発速度の向上」のために必要不可欠なものなので、着実に取り組んでいきます。

また、「教育データによる教育的価値の創出」は、リブリーにとっても、日本の教育にとっても非常に重要なテーマであるため、当社としても積極的に取り組んでまいります。2023年度の実証研究で良い成果も出ているので、それも近日中にお伝えしたいと思っています。

LibryとCASIO社で協業して実現することについては、具体的にはまだ申し上げられないのですが、ぜひ両社の動向を楽しみにしていてください!

結び

2011年、大学4年生で起業の準備をはじめた第一章。
2012年に学生起業するものの、教育業界に「1人1台情報端末」の環境が来る目処は立たず、水面下でサービス開発を進めつつ、業務委託で食いつなぐ苦しい日々を何年も過ごしました。

2017年、サービスを正式リリースしてはじまった第二章。
はじめてサービスの利用料が振り込まれた瞬間、これまでの苦しさが全て癒やされました。2018年に初めての資金調達を行い、その後も何度か資金調達をしながら、事業も組織も大きくなっていきました。非常に厳しい苦境に何度も立たされましたが、多くの方に支えていただき、なんとか乗り越えられました。そのおかげで、多くの出版社様とともに、全国の10%以上の高校に導入され、学校やユーザーのみなさまの日常を支えることができるようになりました。

そして、2024年。CASIO社と一緒に紡いでいく第三章。
きっと予想外のことも色々と起こると思いますが、本当に楽しみです。

夢と情熱しか持っていなかった大学生が、このように第三章を迎えられたのも、これまでリブリーを支えていただいた多くの方々のおかげです。
リブリーに関わってくださった全ての方々に御礼を申し上げます。
本当にありがとうございました!

…と、何かのエンディングを迎える雰囲気を出していますが、リブリーは変わらず全力で邁進していきますので、引き続き応援をよろしくお願いします。

私たちリブリーは、CASIO社という強力な翼を得ました。

私たちは先生や出版社のみなさまとともに、
子どもたちのためにビジョンに向かって、ツバメのように一直線に翔んでいきます。

より速く、もっと高いところまで。