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【北米エンタメニュースまとめ】Viz Media、元Crunchyrollのライツ担当者を新設のVPに、「ベルセルク再開」は海外でも話題に、DCコミックス、NFTプラットフォームを立ち上げへ

※「北米漫画市場まとめ」あらため、「北米エンタメニュースまとめ」といたしました。漫画だけでなく、アニメ・ゲーム・音楽そしてそれらを支えるテクノロジー(主にWeb3、NFT)についての北米発のニュースをまとめ、解説していきます

北米エンタメ市場のニュースなどのまとめです。拾い切れていないものもあるのでぜひリクエストお待ちしております。感想も歓迎です

業界ニュース


Crunchyroll、アニメ・エキスポでの展示内容を公表

北米では徐々に夏にかけてコミコンシーズンがやってきます。各社の展示内容が注目される中、Crunchyrollは今年はかなり大規模に展示するそうです。コロナ禍で対面のイベントができなかった分、対面イベントが可能になる今年は存在感をアピールする狙いもありそうです。世界中からゲストを呼び、人気アニメにフォーカスしたパネルも。久しぶりの対面イベントということで盛り上がりに期待したいです。


https://www.animenewsnetwork.com/news/2022-06-12/voice-actors-natsuki-hanae-aoi-koga-to-attend-anime-expo/.186533

こちらはアニプレックスによるパネルプログラムを紹介した記事です。対面イベント復活ということで「鬼滅の刃」の俳優らが現地入りするそうです。

カカオの海賊版対策、数十億ウォン相当を救済

日本では海賊版対策が進んでいますが状況はWebtoonに沸く韓国も同様です。この記事では、カカオの海賊版対策がWebtoon作家に入2650億ドルを救済したという記事です。人気が出ればでるほど海賊版にも目を付けられやすくなるのはつらいところ。グローバルで対策が進んでほしい分野です。


Viz Media、元Crunchyrollのライツ担当者を新設のVPに

米国で日本のマンガの翻訳出版を手掛ける大手、Viz Mediaが配信会社のCrunchyrollでライツ事業を担当していた人を採用しました。しかも新たに「Vice President of Content(Animation)」を設けるという念の入れよう。Viz Mediaは現在は漫画が事業の中心ですが、この人の採用でアニメ部門の事業も強化するのかもしれません。
北米市場を見ると、漫画出版ではViz Mediaは圧倒的な強さですが、アニメの配信はもちろんアニメグッズの制作・販売では、日本企業の子会社に加え、Crunchyrollはうまくライセンスを得てオリジナルグッズなども販売しています。Viz Mediaの漫画はアニメ化からかなりの恩恵を受けやすいですが、直接的にアニメ人気のメリットを取りに行こうとしているとも考えらえます。


快進撃続く「Jump+」、Moriyamaさんインタビュー

元気な漫画市場の中で快進撃を続けるのが集英社の「ジャンプ+」です。そのジャンプ+を率いる編集者のMoriyamaさんの米国ファン向けのインタビューが掲載されました。ジャンプ+の作品の一部は「MangaPlus」として日本外のファンにもほぼ同時に配信されています。もちろん海賊版対策という側面もあると思いますが、世界中の人が同じ作品で同時に楽しめるという体験を作れるのは王者・集英社らしいと思います。というか、早くほかの出版社もこれに続いてほしい。

「ベルセルク再開」は海外でも話題に

日本でもさんざん話題になりました「ベルセルク再開」。惜しくも作者がなくなったことで中断された作品が周りの人の力で続きが読めるというのはファンとしてはうれしい限り。その思いは言語が違っても同じようです。
特にベルセルクはダークファンタジーの名作として英語圏の人気が高いのでこうした反応も当然かと思います。複数の英語メディアが取り上げていました。


テクノロジーニュース

DCコミックス、NFTプラットフォームを立ち上げへ

米出版社、DCコミックスがNFTのプラットフォームを立ち上げるというニュースです。NFTとは非代替性トークン、つまり仮想通貨などとは違い替えのきかないトークンです。DCコミックスはイーサリアム系のブロックチェーンを使い、取引コストなどを極力抑えるプラットフォームにするそうです。

DCコミックスはNFTとは無縁ではなく、これまでもファンイベントで無料でNFTを配布するなどしてきました。ここにDCのキャラクターのNFTが本格的に発行されることになったら、取引が一気に活発になりそうです。

先日、東京都内で開かれたNFT関連のギャラリートークに参加し、実際にNFTを発行している方の話を聞きました。高額な取引などが話題になるNFTですが、その本質はデジタル上で「そのモノが確かにある」と証明できることによるコミュニティの形成です。とにかく時間の流れがリアルの世界よりも早く、以前に通用していた戦略や戦術が次のタイミングには通用しなくなることも少なくない。実際に発行されている方の話からは、その中で「いかに自分の発行したNFTを支えてくれるコミュニティを維持し、大きくできるか」がポイントになるのだと思いました。DCコミックスのキャラクターはそうしたコミュニティ維持能力が高いものです。ここがうまくいけば、ほかのキャラクターを持つ企業の参入も見込めそうです。

NFTプロジェクト「Wagami San」の声優採用へ

なお、NFTの周りでは、DCコミックスのようなアメコミだけでなく日本の漫画・アニメへの関心も低くありません。こちらのニュースはNFTを販売するバーチャル上の店舗の店員の声優を探しているというもの。なんとその店員の名前は「Wagami San」で、80代の日本人という設定です。声優も日本人男性か、少なくともアジアンアクセントを持つ人を探しているそうです。NFTの世界に日本の要素が入り込んでいるのは興味深いです。


マスターカード、カード保有者のNFT購入可能に

いくら企業や個人がNFTを発行しても、個人がそれをかえなければ取引は活発にはなりません。現在多くのNFTは仮想通貨ベースで値付けがされ、実際の購入にはイーサリアムなどの仮想通貨が必要になります。単価が大きく変動率の大きい仮想通貨を常に保有してほしいのがあったらNFTを買うというのは個人にとって価格変動リスクが大きくなります。
こうした問題を解決するかもしれないのがクレジットカード会社の動きです。この記事では、カード会社大手のマスターカードが、カード保有者に対して直接NFTを買うことができる仕組みを検討していると伝えています。もし実現すればより多くの人にNFT購入の道を開くことになります。
もちろんNFTはプロジェクトの評価などにリスクが残り単価も高く、個人が気軽に買うにはリスクのある商品ともいえます。しかしアート作品やマンガ・アニメのグッズのような存在になるのであればカードで気軽に買えるようになるのは悪いことではなさそうです。

米当局、インサイダー取引容疑で元プラットフォーム従業員を起訴

こちらは、NFTを発行できるプラットフォームOpenSeaの元従業員がインサイダー取引で起訴されたという話です。

インサイダー取引とは、ある商品(例えば株式やコモディティ)を取引するときに内部関係者しかしらない情報に基づいて取引をすることです。株式など証券取引では法律で禁止されており違反すると罰則となります。今回NFTの取引でインサイダー取引で起訴されたということは、少なくとも米国ではNFTの取引は株や債券と同等に扱われるということです。

この議論は、「そもそもNFTとは何か」という定義と関わります。NFTはトークンの一種ですが、新しく誕生したプロダクトであるため、法律上は何として扱うのか各国でまだ決まっていません。(このあたりは米国などを中心に新たな法律ができ、徐々に方向性が決まり始めているところです)ただ、NFTは価格が高騰するなど投機性があることは事実。今回の米当局の動きを見る限り、発行者やプラットフォームの関係者は取引にあたって注意が必要なのかもしれません。

暗号資産規制を強める香港、次はNFTか

NFTの取引に厳しい目を向けるのは米国だけではありません。こちらのニュースでは香港が暗号資産への規制を強める中で、次はNFTに目を向ける可能性があると指摘しています。香港は自由経済の恩恵を受けてきましたが、ことNFTに関しては違うというのが記事の趣旨。NFTの取引は自由に国境を超えるからこそ、各国の法規制の動きには注意が必要です。

「Metaborg」新たなMangaのNFT

https://bitnewstoday.ru/news/nft/7777231/

では、NFTはリスクだけかというといろいろなところで指摘されているようにクリエイターとは非常に親和性の高いプロダクトです。すでにNFTで発行されたキャラクターをベースにしたMangaのプロジェクトも始まっています。「Metaborg」もそのひとつ。Giovanni Mottaという作家による、Jonny Boyというキャラクターが主人公の物語です。まだ1話しか公開されていないのですが、物語の公開が続くこと自体がNFT保有者のコミュニティを育てることになりそうです。
前述のギャラリーでのトークイベントに登壇したNFT発行者も、すでにNFTを保有する人が読めるようなNFTのキャラクターを生かしたMangaの発行を計画されているそうです。

MadManga、Manga創作のメタユニバースを提供

NFTを活用したMangaの公開を見越してプラットフォームも出てきそうです。こちらの記事はMadMangaがManga創作のプラットフォームを提供するというもの。このプラットフォームを通じて「Web3の集英社」を目指すそうです。具体的な作品名はまだでていませんが、すでにNFTは発行されており、600人程度のオーナーがいます。どのNFTも中に何かが眠っていそうな石の形をしている(なんか、どこかでみたことあるイラストもなくはないのですが)ので、ここからどんな物語が生まれてくるのか楽しみです。

俳優兼創作者のRob McElhenney、Web3上の共同制作の仕組みを立ち上げ

創作の動きはクリエイター側からも出てきています。こちらはMangaではないのですが、俳優兼創作者のRob McElhenneyという人が、Web3で共同創作のための仕組みを立ち上げたとのこと。しかも発行するNFTの保有者にIPからの売り上げなどをシェアする仕組みだそうです。最初は100人のクリエイターが選ばれ、それぞれのセッションの終わりに全参加者は「Core Character」と呼ばれるNFTを受け取る仕組みとのこと。そしてもしプロジェクトがうまくいって、生まれたIPがいろいろなメディアで使われ収益が発生すればNFTの保有者も一定のロイヤリティを手にできます。日本でいうと、アニメ制作などの委員会方式に近いですが、NFTで権利者や、ロイヤリティをあらかじめ確定できるのがブロックチェーン上でやる強みでしょうか。出てくる創作物と、その背景にいるクリエイターへの分配に注目したいです。

今週はここまでです。引き続きよろしくお願いします。

追記

https://note.com/lovebeer73/n/nd15e4229b5fb

毎週参考にしている菊池健さんのマンガ業界ニュースです。技術的にはスケブの「スケブコイン」参入が興味深かったです。アルトコインマーケットは今冷え切っていますが、スケブ利用者という潜在的需要を抱えてうまく離陸してくれればいいなと思います。

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