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贅沢な3時間 演劇「ハイキュー!! 最強の場所(チーム)」

 マンガ『ハイキュー!!』の舞台版。春高予選の烏野高校の青葉城西高校と白鳥沢高校との対戦を描きます。

1作品で2試合って贅沢

 春高予選の準決勝と決勝戦。いずれも原作で数巻かけた物語を3時間にまとめられました。すごい贅沢。正直、「別々にやってもよかったのに」と思いました。(まあ、まとめたからこそ、「決勝戦を青城の及川さんと岩泉さんが見に来る」を演出できたわけなのですが。)

クラシックの青城とラップ風の烏野

 舞台版のハイキュー!!で私が好きなのは音楽担当の和田 俊輔さんです。これは第1作目からなのですが、「音楽とリズムでチームの違いを出して対戦させる」というのを意識的にやっているように思えます。

 それが準決勝の青城VS烏野ではクラシックVSラップになるわけです。青城は原作でもセッターの及川さんが指揮者に例えられるようにクラシックの楽団のように描かれるのですが、それが舞台でも音楽はややクラシック風。それに対抗する烏野はラップというかアップテンポの現代音楽です。これが絡み合うのが見事。

 原作を読んでいる方はご存知のように準決勝で青城は京谷を投入することで熟練の青城の雰囲気を変えるわけですよ。なのでもちろん舞台でも京谷が入ると青城の音楽の雰囲気がクラシックから少し変わる。いやもうね、すごいですよ。見事。

舞台の外も使う

 最近の舞台やミュージカルはもはや役者は舞台上にはとどまらず客席にも積極的に降りていきます。今回のハイキュー!!では準決勝、最後のラリーを田中先輩が取りに行くときぎりぎり舞台を降りるか降りないかのところまで走るんです。原作ではコート外まで走ると描かれていますがそれを舞台外を使って演出されています。


あのエピソードも!

 原作を読んでいた人は、準決勝のあとの青城のカバーしたのエピソードをご記憶されていると思います。あの「呪い」のエピソードです。もちろん全部のキャラクターは出ていませんが、舞台上でもきっちり描かれています。泣いたー。


舞台上での生演奏!

 「最強の場所」が画期的だったのは、音楽を担当した和田さんが舞台上で生演奏をしたこと。ミュージカル好きはご存知のように、ブロードウェイとかは生演奏なわけですよ。これは演奏者の負担はもちろん、役者が演奏にあわせ、ずれることを許されないという大変さもあります。(いつも思うけれども演奏がずれない、間違えないのすごい)

 これまでほとんどの2・5次元舞台は全部録音された音楽にあわせて演じていたわけですが、この生演奏でまた新しい可能性が開いたなーと実感しました。(なお、これより先に生演奏をやったのは舞台『さよならソルシエ』です。ピアノの生演奏、すごかった!!)

舞台とスポーツマンガは相性いい

リアルでお世話になっている人が以下のような文章を書かれていました。

スポーツマンガと舞台、謎の好相性。テニミュとペダステの成功の理由。

 今、2・5次元舞台になる原作はお客さんを呼べることを前提にもともとのファンが多い原作が取り上げられることが多いのは事実ですが、スポーツマンガは舞台にするとすごく映えます。

 それは舞台の演出家が試合をそのまま舞台にするのではなく、「舞台上でその試合の面白さを表現するにはどうすればいいのか」を考え抜いているからだと思います。『ミュージカル テニスの王子様』(テニミュ)でテニスボールが光で表現されたように、『ハイキュー!!』でも必ずしも公演中ずっとバレーボールが飛び交うわけではありません。演出上、必要なときはボールが出てきますが、そうでないときはエアボール。でも役者の動きでボールの動きが見えるからすごいのです。

 ということで、「ハイキュー‼」好きの方、漫画好きの方、ぜひ舞台も見てください。


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