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119冊目:明治日本散策

本書は鎖国を終えた明治時代に東京を訪れたフランス人実業家「エミール・ギメ」と画家のレガメとの日本旅行の記録の一部になる。

当時の日本人の様子や街並みを文章や挿絵から感じることができて、また視点が外国人が見た日本なのでユーモラスに描かれている。読んでいると自分もタイムスリップしたような感覚になるし、勉強にもなるのですごく面白い。

江戸から東京へ

江戸が東京に改名された。そのことについてのギメの見解がまず面白い。

天皇の居住地の名は、西の首都(西京)である京都に対して、東の首都、東京とされた。
したがって、江戸はもはや存在しなくなった。一夜にして将軍の都は消されてしまったのだ。地図からも、政令からも、歴史上からも、また世界からも抹殺されることになったのである。…このようなわけで、読者の方は、もう誰の前でも江戸のことを口にしないほうがいい。話したところで誰も理解しないのだから。

本書p.22より

ギメは日本へ来る前に日本の事をそれなりに調べてきている。本書を読んでいると、日本人よりも詳しいのではと思うくらいにその土地の伝説や風俗を学び、その土地の慣習に従おうとする。

鉄道開通

歴史の教科書で新橋ー横浜間の鉄道が最初に開通したことは知っていても、その時の様子がどんなものかは知らなかった。それが、本書によると、開通式には天皇が参列し、それがいかに凄いことか一般人目線で描かれている。今でこそ天皇を目にする機会は足を運べば年に数回はある。テレビなどでも見れる。だけど当時のことを考えると確かに一生に一度も見れない神聖な存在だと改めて感じる。

この路線の開通式は、歴史的な出来事であった。というのも、かつて誰一人として、その姿を期間見ることすらなかった天皇自らが、人々の前に現れたからである。あたかも現人神が、汽車に乗るために天から舞い降りてきたかのようであった。それは今や世界を導く新しき神々に、古来の伝統が厳かに、敬意を表明しにやってきたかのようであった。神話が機関車に挨拶しに来たのだ。

本書p.27より

日本食

ギメとレガメは日本食を食べたが、その不都合さに嘆くシーンが面白い。

蓋つきの黒い漆の椀に入ったポタージュが運ばれてきた。このポタージュ(吸い物)は、煮魚が、フランのような四角い立方体(豆腐のことか)と小玉ねぎのいくつかとがともに液体に浮いているものである。これはとても美味しかった。だが、小さな箸で魚を切って、口に運ばないといけないし、魚の骨を皿が一杯になるほどたくさん口から出さないといけない。私たちは、あきらめて餓死せねばならないのか?
全く大変なことになってしまったものだ。

本書p.194より

魚を食べる大変さに「諦めて餓死」という発想が面白い。箸遣いも難しい上に、骨もある魚は確かに外国人には食べずらいだろうなと改めて思う。

仏教

ギメは仏像を見て、その手の形が気になった。そこで僧侶に尋ねたところ、私も知らなかった面白いことがわかった。

手の指はそれぞれ、一つの要素を表していると説明した。例えば、キリスト教の司教〔あるいは監督〕が祝福を与えるように、仏が人差し指と中指を上げれば、それは最も強力な身振りのひとつとなるという。なぜならそれは空気と火の結合であるからだそうだ。また、親指は空間を、人差し指は大気を、中指は火を、薬指は水を、小指は大地を表している。ときおり、親指が大地を意味し、順番が逆さになることもある。

本書p.330より

その他にも歌舞伎の話や、銀座の街並み、浅草で伝わる伝説、最後には日光に訪れた際の日記がある。日本について知らないことを知れるとても面白い本だった。

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