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【本】原田マハさん 「本日は、お日柄もよく」

言葉に力があることを疑う人は少ないと思う。

何度も聞いたことがあるような話を繰り返されれば誰だって眠くなるし、過去数えられないくらい聞いたはずの校長先生の話は、大人になった今一つも覚えていない。

一方で、心を揺さぶられる主張やストーリーはどんなに短いものでも記憶に残っているし、その場で鷲掴みにされた胸の痛みを、いまもありありと思い出すことだってできる。

原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」は、どこにでもいるような大手企業のOLが、失恋したと同時に、スピーチライターという職業と出会うところから始まる。

人の心を揺さぶるだけではなく、人の行動を変え、そして政治にも影響を与える。
それが言葉というものであり、スピーチであり、そのプロフェッショナルがスピーチライターなのだ。

この小説を読んでいて、私は自分がいかに言葉を、そしてそれを活用する機会のひとつひとつを活用しきれていなかったのか考えさせられた。

私は政治家ではないし、人前で頻繁にスピーチするような機会もない。
でも自分の主張をする機会はたくさんある。妻として、母として、一社会人として、管理職として。

自分の発言によって誰かや何かに影響を与え、を「変えたい」というわけではない。あくまでもそれは受け取る側の判断だからだ。

ただ自分の思いを正しく、熱意をもって、十分に相手に伝えるというのは、相当意識しないと難しいことのように思う。

この小説を読み終わった時、私は主人公「こと葉」と一緒に言葉のもつパワー、そしてそれを操ることの難しさと尊さ、何よりそれらすべての背景には発する人本人の想いや願いがあるのだということを改めて感じ、少し強く、優しくなれた気がした。

ちょっとパワーが欲しい時。
苦難を乗り越える後押しが欲しい時。
優しく寄り添ってくれるひとたちがたくさん出てくるこの一冊をおすすめしたい。

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