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正体がわからない幸せ

あの日、すべてが透明感に溢れて見えた。
まるで雨上がりの風景のように、すべてが洗い流されてクリアだった。

現実を見れば、それまでの私の人生で一番のドン底にいたのだけれど、放浪の末に、胃痙攣を起こして駆け込んだ病院から退院した、あの日のあの瞬間間違いなく私は何かに包まれていて、大いなる何かと繋がっていた。  

大丈夫だと思えた。
私の深いところから、正体が分からない幸せが湧いてきて涙が溢れた。
そして、あの時のあの感覚が、間違いなくその後の私を支えた。

少しずつ人生が上向いていき、日常を取り戻し、その日常の中で流されそうになったり迷子になったりすると、あの時のあの感覚を思い出した。

そして、あれから、20年以上の月日が流れた。

最近、あの幸せの感覚が、
思い出さなくても私の根底に流れているように感じる。

〇〇があるから幸せとか
〇〇だから幸せとか
そういうものではない幸せ

力強い幸せだ。

海の向こうに沈む美しい夕陽を見たりする時はもちろん
音楽を聞きながら朝食を作っている時
洗濯物を干している時、愛犬ゆきまると散歩をしている時
何気ない日常の中でも、それはある。

そして、そこにより意識を向けると
何気ない日常の風景さえ、よりクリアに見える気がする。

自分が存在していることに対する幸せのような
人生に対する感謝と愛のような
大きなものに包まれている安心感のような…。


うまく言葉にならないのだけれど、
この幸せを抱きしめて生きていこう。

吉川美有紀の自己紹介とLIFE STORYはこちら


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