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住宅・不動産業界におけるDXの現状


みなさんこんにちは。
リブ・コンサルティングの篠原です。

先日は不動産テック協会さんからカオスマップも発表されましたね。
様々なサービスが新しく出現を続ける中で、今まで住宅・不動産業界テックの事業成長にフォーカスをあてた内容をお伝えしてきました。
今回は着眼点を少し変え、住宅・不動産業界におけるDXの現状について触れていきたいと思います。

住宅・不動産業界に特化したコンサルティング機能を有しているからこそ見える「業界のリアル」となりますので、攻略する企業のイメージ醸成に活用頂けたらと思います。

住宅・不動産業界が置かれている状況


まず何よりお伝えしたいのは、今後も続くであろう原価上昇トレンドです。建築費は過去30年において上昇トレンドが続いており、具体的には木材・鋼材・建築資材の各価格は数十パーセントの上昇幅となっています。
また昨今のコロナショック・ウクライナショックは当然ながら、継続的な成長を続ける海外各国に対する日本の資材購買力が弱まってしまっているのが現状です。
そして追い打ちをかけるのが円安、、、。

以上の内容をまとめると、以下の4点に整理することができます。

1.長期トレンドとしては、日本以外の成長国の購買力向上により、有限の建築資材の購買コストは上昇すると想定される

2.短期トレンドとしては、世界不均衡に端を発した資材・エネルギーの不足、輸送費の上昇の影響を受け続け、その解消は世界不均衡の解消と連動することが想定される

3.さらには、円安の加速も進んでいる

4.つまり、原価上昇の継続を前提にした経営施策が必要となる

続いて挙げられるのは寡占化の流れの加速です。
不動産業界は必ずしも当てはまるとは言えませんが、住宅業界ではこの流れが顕著となっています。ただでさえ着工戸数は年々減少していくにも関わらず、500棟以上の着工戸数を誇る企業の市場占有率が上がってきています。
住宅・不動産業界の特徴として「地域ビジネス」があり、それゆえに小規模工務店がこれまで生き残ることができましたが、現在はビッグビルダーといわれる企業のシェアが高まっており(弊社調べでは、上位6%の企業で55%のシェアを獲得しています)、今後もこの傾向は継続するといわれています。
そのため、今後の市場環境で生き残っていくためには、従来通りの取り組み方ではダメで、機能そのものをアップデートする必要があるのです。

以上の内容に加え、デジタルネイティブなエンドユーザーも増加していることから、住宅・不動産業界の企業は生産性や事業そのもの、マーケティングなどの観点より、DXを推進することが求められている状況です。

住宅・不動産テック企業のみなさま、めちゃくちゃチャンスです。

DXの取り組みの実際のところ


とはいえこれまでの記事で散々お話してきましたが、この業界、レガシーです。
上記の状況変化もあり少しずつ耳を傾けるようになってきているのは事実です。
とはいえ、弊社でアンケートを取ったところ、全社レベルで取り組んで成果が出ているのは16.7%程度。まだ全くDXに取り組んでいない企業も4分の一程度存在します。
そこで、「実際、この業界の企業ってどうやってDXに取り組んでんの」を3つにまとめてみましたので、ご一読頂けたらと思います。

①    経営陣と現場の熱感GAP
②    全社のDX推進を束ねられる人材の不足
③    結局、スモールスタート

①    経営陣と現場の熱感GAP
こちらは、経営陣は全社のDX推進に熱心である一方、現場がその意義をなかなか感じることができずに発生するケースです。
具体的には、経営陣が販管費削減や業務効率化を狙ってDXを導入したとしても、現場メンバーにはその目的や意義がなかなか伝わらず、サービスそのものが素晴らしくとも、形骸化してしまうケースです。
これは両者の見ている指標が異なっていることが起因しており、つまり経営陣はPLの営業利益への対策でDXを導入しているものの、肝心の推進する現場メンバーは、PLはほぼ関与しないため、経営陣が「やれ!」と言ってもなかなか使ってもらえないケースが多々発生しています。
こうなると、サービスを導入しても「成果」が出ず、チャーンリスクが高まってしまいます。

②    全社のDX推進を束ねられる人材の不足
組織・人の問題です。多くの会社は上記の通り経営陣が導入の意思決定をしますが、残念なことに、全社レベルでDXを推し進められる体制や人材がこの業界のほとんどの企業で存在しないという現状です。ほんとにいないんですよね。
住宅・不動産業界では中堅サイズの企業でもIT部門そのものが存在しない企業がほとんどですし、知見を持ち合わせていないことがあったりします。とはいえ、「ITに強い人を採用するのだ!」ともならず(そもそもそういう人がこの業界で働こうともしない)、結論として誰も進められる人がいないのです。

③    結局、スモールスタート
上記2点の掛け合わせにより、落ち着いてしまいがちなのが「スモールスタート」、もしくは「なにもやらない」です。経営陣としてはDX化を進めたほうが良い気がする一方で、現場メンバーのリテラシーや熱感が上がらず、結果として新しいサービスの導入は進まず「一旦、既存のやり方で頑張りますわ。」となり、半年後も同じ状況・・これが実状です。

そんな中でも導入され始めているツール・サービス


そんな中でも特に関心が高く、導入が進んでいるのはやはり「集客支援系」や「営業支援系」です。
売上にダイレクトに繋がるイメージが持てるので投資し易いし、現場も生活のために1件でも多く受注を決めたいので入りやすいんですね。
加えて「施工系」です。ANDPADさんの頑張りも大きいですが、人材不足や原価高騰などもあり、メスが入りやすいです。
「仕入れ系」は良いサービスがあればという感じですが、まだサービス自体がそこまで充実していない領域でしょうか。
IoTやVR/AR、電子契約などについては、まだまだ全体的に「本当に良いの?」と様子を見ている印象です。
ここらへんは機会あればもう少し細かくまとめようと考えています。

おわりに


外部環境の変化によって着実に関心が高まってはいるのですが、企業そのものの準備が整いきっていないがゆえに導入が難しかったり、チャーンリスクの高まりやクロスセルアップセルの難しさがどこまでも付きまとったり・・というのが業界のDXの現状です。

今回記載した状況などにも感情移入をした上で、業界に寄り添い、ゴリっと変えていただければと思います。

なかなか業界全体のDXの実現はまだまだ程遠い道のりですが、皆さんと力を合わせて全力で進めていきたいと考えています。

ありがとうございました。

株式会社リブ・コンサルティング
住宅・不動産インダストリーグループ
マネージャー
篠原健太


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