見出し画像

子どもが欲しい色のランドセルと出会うまで

青色が大好きな子どもが、
「ランドセルは、ピンクがいい。」
と言ったのは、小学校入学1年前の春のことだった。

「ピンクかぁ・・・どんなピンク?」
と、私が好きな青じゃないのか?!という動揺を隠しながら聞くと、
「こういうピンク!」
といって示したのは、ショッキングピンクだった。

「6年間、同じ色のランドセルで小学校行くんだよ?」
「うん!大丈夫!この色のランドセルで毎日、学校に行くよ!」
と、勢い込んで返事をしたのだが、
「イヤになったから別の色にしたいって言っても、
 高いんだから、買ってあげられないよ。
 洋服や靴と違って、ランドセルは大きくなっても使えるように、
 6年間、ずーっと使えるように丈夫に作ってあるんだよ」
と私が言うと、え?という顔になった。
「まだ時間があるから、ランドセルいろいろ見てみよう」
と、提案し、もう少し考えることにした。

夏、水族館の入場待ちで時間をつぶすため、近くの百貨店に入り、
子どもと涼しい店内を歩き回っていると、
偶然、ランドセル販売の特設会場に通りがかった。
「ランドセル、何色がいいかな?」
と、私が聞くと、子どもは、
「虹色!!」
と元気よく答え、予想外の返事に呆然とする私の腕を引っ張り、
ランドセル売り場に向かった。

幸か不幸か、その会場に虹色のランドセルはなかった。
がっかりして、ぷりぷり怒っている子どもに、
「じゃあ、ペンキのスプレー缶を買って、ぷしーっと色を塗ろうか」
と、私が軽い気持ちで言うと、子どもは機嫌を直し、
「お空の虹色にしてね!」
と、喜んで言った。
素人がペンキでそんなこと、できるわけがない
プロに頼んだら、いや、そもそも頼めるのか?!
自分の言葉に頭を抱えた私は水族館の入場時間になるからと、
その場からも、ランドセルの色の話題からも離れることにした。

気に入らないモノは絶対に身につけない子どもの性格を考え、
本人が気に入った色のランドセルを買ってあげようと決めていたものの、
ピンクにするのか、虹色にするのか、自作か注文するのか、
色つきのランドセルカバーをそろえればいいのか、
考えあぐねている間に時間が過ぎていってしまった。

来月から小学生!入学式!という差し迫った3月半ば。
ショッピングモールのランドセル売り場を通りがかった。
「ランドセル、どうしようか・・・」
と、私が途方に暮れた気持ちと、
ここで子どもに選ばせないと、買う機会がなくなる!
と切羽詰まった気持ちでランドセルを眺めていると、
突然、子どもがたくさんあるランドセルからひとつを持ち上げて言った。
「これがいい!これ買って!!」

そのランドセルは、子どもの大好きな青色だった。

本当に、本当に、たくさんある青色のなかで、この色でいいのか、
そもそも、ショッキングピンクじゃなくていいのか、
虹色じゃなくていいのか、
と、子どもに聞くと、きょとんとした顔になった。
ショッキングピンクと言ったことも虹色と言ったことも、
覚えていなかったらしい。

その時、自分が悩んでいたことはなんだったのかと思うより、
子ども自身が気に入って納得したランドセルが見つかった、
その安堵感の方が大きく、早々に買うことにした。

1年生の終わり頃、子どもが、
「青色のランドセルは、たくさんあるけど、
 この青色は1年生で自分だけ」
と、自慢そうに教えてくれた。

いまになって、ふと思う。
「ランドセルを背負う小学生の自分」を明確に意識したから、
青色を選んだのかもしれないと。

子どもは、小学生になる期待というか、希望というか、
未来への気持ちを、ショッキングピンクや虹色という色で
表現していたのかもしれない。

<感謝の気持ち>
hananono  様、素敵なイラストありがとうございます。
たくさんのカラフルなランドセルのイメージにぴったりだと感じて使用させていただくことにしました。

この記事が参加している募集

#子どもに教えられたこと

32,942件

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。スキへのクリックをしていただけたら嬉しいです。 ※noteのアカウントをお持ちではない方も、スキへのクリックができますので、クリックしていただけたら幸いです。