ミャンマーと中国②中国の安全を脅かすミャンマー

①の記事では、ミャンマーと中国の関係は「独裁国家どうしだから蜜月」という単純なものではない事を書きました。今回の②はミャンマーがいかに中国にとって危険かを書きます。

中国の安全を脅かすミャンマー情勢

 中国とミャンマーは国境を接しているのでミャンマーの動乱が中国側に波及することがあります。2015年にはミャンマー軍による空爆の誤爆で中国側に死者がでました。2021年から始まったクーデターと内戦でも一部の中国系企業が焼き討ちにあったり、難民が中国側に流入したり、砲弾が中国領に飛来したりとその影響は多岐にわたります。

 他にもコロナ以後の情勢で指摘しておくべきはミャンマー北部やタイ国境地帯におけるマフィアによる詐欺や人身売買などの越境犯罪の存在です。これらの撲滅のため、ミャンマーと中国は協力し犯罪人の引き渡しなども行っています。つまりミャンマー情勢は中国のあらゆる安全を脅かす事態になっています。中国は台湾も含めて様々な紛争を抱えていますが、国境内の民間人に具体的に被害を及ぼしているのはミャンマーのみです。

中国・ミャンマー国境地帯軍事演習が意味するものとは?

 このように中国に具体的被害を及ぼすミャンマー情勢に対して中国は警戒感を高め実弾を用いた軍事演習を実施しています。

※2023/11/28日、台湾メディアによるミャンマー難民の中国流入と軍事演習の報道。

 この軍事演習はその後も定期的に行われます。中国人民解放軍の動向について情報発信している台湾人のジョセフさんは、2024年の4月に行われた軍事訓練について以下のように指摘します。「訓練の実施時間は短かったものの、実施している部署が雲南省人民政府から南部戦区へと移り参加している部隊の範囲が増えた。

https://x.com/JosephWen___/status/1775873542489526342

 実際に砲弾が飛び交い、実弾による軍事演習の準備も行っている中国・ミャンマー国境地帯情勢になぜ注目が集まらないのか不思議です。
 世間では中国による台湾武力統一や台湾有事に注目が集まりますが、台湾にとって中国は戦後からずっと脅威でした。そして兵役や防衛装備購入などパワーをつけ、半導体産業やソフトパワーなど中国を跳ね返すパワーがあります。しかしミャンマーはどうでしょうか。国家のパワーは弱小で西側諸国が中国を敵視しているからといって現在のミャンマーの体制では欧米からの支援も期待が薄いです。
 個人的には中国によるミャンマー内戦への介入の方に不安と懸念を感じてしまいます。

 
その他の参考資料

台湾メディアによるミャンマーなど舞台にした詐欺集団を追ったルポ。

https://www.zaobao.com.sg/news/china/story20231015-1442434

 ミャンマー北部やカンボジアの詐欺集団がいかにして形成されたかインタビュー記事。 東南アジア華僑の下地、台湾および中国の半グレ、コロナの経済苦境、そしてミャンマー、カンボジア、中国の政治体制が複雑に絡み合って形成された様子が伺える。



  


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