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海洋ゴミに対する対応策

海洋ゴミの現状

環境省の海洋ゴミ調査結果(2019年度)によると、漂流ごみのうち約半分が人工物で、その多くをプラスチックが占め、主に魚網・ロープやペットボトルなどであると報告されています。
日本国内では、年間約1,300tのポリエステル製魚網が廃棄されており、再利用できないものも多いため、埋め立て処分が主となっており、一部が海洋に流出することもあり、海洋環境への影響が問題視されています。

水産庁では、使用済みのプラスチック製漁具は漁業者が産業廃棄物として処理することが原則としている一方で、廃棄物処理費用が経営の大きな負担になっていることが問題でもあります。
この問題に取り組むべく、漁業と異業種とのコラボレーションが進められています。

具体的な事例

廃棄された漁網をリサイクルし、ポリアミド製品(いわゆるナイロン製品)へのアップサイクルビジネスが進んでいます。
ナイロンは、アメリカのデュポン社の商標ですが、日本では素材の名前としてナイロンが広く浸透しています。

国内事例

1) リファインバース社

使用済み漁網を主な原料とした再生ナイロンコンパウンド「REAMIDE(リアミド)」を展開
自動車や家電用部材に使用されており、新規ポリアミド原料を使うよりも80%程度CO2排出を抑制できると報告されています。

2) 三菱ケミカル社

廃棄される漁網を再利用した再生ナイロン樹脂を混合した新しいナイロン糸「KILAVIS™RC(キラビス™アールシー)」を展開。原料として、上記リアミドを使用しています。

三菱ケミカル社 報道発表資料より

3)帝人社 

居酒屋「はなの舞」を展開するチムニー社と共同で、魚網由来の再生ポリエステル樹脂製の配膳トレーを開発されています。

海外事例

1) ブレオ社
チリなど南米各国の沿岸で漁業組合と連携して海中に廃棄された魚網を回収し、独自技術で再生ポリアミド生産しています。製品は「netplus」という商品名で展開されています。

2) パタゴニア社
ブレオ社と協業し、netplusを用いた製品をリリースしています。
現在は帽子のつばや衣類に商品されています。


魚網の特性上、生分解性素材は適さない性質でありますが、回収スキームやリサイクル技術や川下のサプライチェーンが今後確立されると、廃棄魚網は原料となり、漁業関係者の負荷低減や海洋ゴミ削減、更にはCO2削減にもつながることが期待されています。

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