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それは最悪な展開だった/青春物語45

その時だった。
「桜田さん、もう帰るの?」
その声に振り向くと小林さんが立っていた。
「あっ小林さん」
私は驚きの声を上げた。
今一番、居て欲しくない人だった。

「帰るの?」
「うん。ちょうど片付いたから」
「送って行こうか?」
小林さんは目の前の永尾さんが目に入ってないかのように言った。

「いいよ。まだ早い時間だし」
慌てて私は答えた。
「そう?送って行くのに」
「遠慮しないで送ってもらえばいいのに」
永尾さんがそう口を挟んだ。
その思いがけない彼の言葉が胸に突き刺さった。
「一人で帰るからいいよ」
私はそう言って二人の間をすり抜けた。

「じゃあ永尾への差し入れでも買いに行こうかな?」
小林さんはそう言って私に続いた。
私はその声が聞こえないふりをして更衣室への階段を駆け上がって行った。

永尾さんとの間を割って入ってきた小林さんに嫌悪感を抱いていた。
それは永尾さんだけには誤解されたくなかった私にとって最悪な展開だった。