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社員旅行って無礼講だって言うよね/青春物語13

朝、掃除当番の私はみんなの机を拭いていた。

「よっニューフェイスたち!研修の成果を発揮してくれよ」
隣の部署の部長がそう叫んだ。
顔を上げると永尾さんたちが朝食を終えて食堂から戻って来ていた。

「おはよう」
彼はそう言って私の方へ近づいて来た。
「おはようございます」
「研修の成果なんて何もないよ。富士山がきれいだっただけ」
そう小声で笑いながら言った。

「来週、旅行だったよね」
「そう。ちょっと楽しみ。今年はどんな風かな?」
「いつも怖い部長たちがエロオヤジになるらしいじゃん」
「そうそう。お酒がはいると無礼講だなんて言って人が変わるの。見ものだよ」

1週間後、私たちの支社と3つの営業所の合同社員旅行だった。
途中サービスエリアで3営業所と合流するので他のバスに乗っていた彼の部署が私たちのバスに移動する手はずだった。
休憩後バスに戻るとすでに彼が1番後ろに座っていて私に手を振った。

次の休憩でドヤドヤと降りて行く中、彼は立っている私の前で立ち止まり「入れよ」と頭を押した。
そして私の後にステップを降りた途端、痛っ!と言ってうずくまった。
「どうしたの?」
「俺、大学の時 膝を故障したんだ。古傷がこの間の研修でぶり返しちゃって」
「早朝マラソンで?」
「そう。やんなっちゃうよ。ちょっとカバン持って」
彼はそう言いながら膝にサポーターをつけ始めた。

「俺の自慢はね、この膝で入院した時、まだ順大相模だった田原と同室だったってことなんだ」
「え〜うそ〜。田原くんだったら個室じゃないの?」
「ホントだってば。いろいろ話したんだよ」
「サインはあるの?私、大ファンなんだけど」
「それが何もないんだよ。今ほど有名じゃなかったから」
「ホントにホント?」
「ホント、ホント。カバンありがとうな」
それが嘘か本当かわからないけど、そう言って彼はニヤッと笑った。