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彼の言葉を信じよう/青春物語44

「田中さんと付き合ってるって本当?」
私はもう一度、永尾さんに恐る恐る聞いた。

「付き合ってないよ。部内だけの付き合いだよ」
彼は私の顔を見て笑った。

「それって本当?」
「本当だよ」
「ホントに?」
「ホントに。安心しろよ」
「わかった」
私はそれだけ言ってきびすを返した。

彼の言葉を信じよう。
彼のあの笑顔を信じよう。
そう私は思った。
これで十分だと机の上を片付け始めた時、彼が給湯室からまっすぐこっちにやって来た。

私の机の前に来て小林さんの部署を見ながら
「桜田さんだって小林と付き合ってるじゃない」
小声で彼はそう言った。

「な、なにを言ってるの」
私は自分の顔が赤くなるのを感じた。

「小林から聞いているよ」
「誤解だよっ」
「そう?昨日も送ってもらったでしょ」
「それは…」
「それは?」
「たまたま帰りが遅くなっちゃったからだよ。ただそれだけ」
私は周りを見ながら一生懸命、弁解をした。
永尾さんには誤解されたくなかった。



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