安易に彼と関わりたくなかった/青春物語41
翌朝、会社でのラジオ体操後、小林さんが近づいて言った。
「おはよう。今日、ご飯食べに行かない?」
「今日はちょっと…早く帰らなきゃ」
「そう?じゃあ送って行くよ」
「えっいいよ。営業から戻って来れないでしょ」
「大丈夫だよ」
彼は私の返事も聞かず朝礼台の方へ小走りに向かった。
お正月に会ったことを後悔していた私はもう安易に彼と関わりたくなかった。
退社時間前の17時に彼は営業から戻って来た。
私は顔を合わせないように机に向かっていた。
やがて終業のチャイムが鳴り、挨拶もそこそこに更衣室へ行った。
彼と会わないように会社を出て足早にバス停に向かっていると後ろからクラクションが鳴った。
小林さんだった。
左ハンドルの窓を開け「乗りなよ」と優しく言った。
私は誰かに見られていないか警戒しながら急いで乗り込んだ。
「お茶ぐらいできない?」
「うん、ごめんね。今日は早く帰らなきゃいけないの」
私は嘘をついた。
「そっか。じゃあまっすぐ送って行くよ」
「ありがとう。小林さんって意外と大胆だね。会社の人が歩いていたかもしれないのに」
「だって桜田さん、朝送って行くって言ったのに帰っちゃうんだもん」
「早く帰りたくて。でも誰かに見られていたらどうしよう。小林さん、迷惑でしょ」
「いや全然。そう言えば永尾のことだけど…」
「えっ?永尾さん?」
私は驚いて彼の顔を見た。
気に入ったものがあれば、サポートしていただけますと大変ありがたく思います。 この先の執筆活動の励みになります。 どうぞよろしくお願い致します。