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【現代詩】はるけき君へ

涙して見上げる空に、虹は咲いているのだろうか
溢れる雫は足元の花を潤す
 
幾度となく牙を剥く歴史に立ちすくみ
振り返った道は積み上がった屍
名もなく顔もなき人々は、何を求めて高らかに腕を掲げる
いまだかつて味方になったことのない
世界、それは君の痛々しい悟り
 
獣たちの爪は研がれ、血を求めて振り回される
獰猛な形相に奪う準備はできている
奴らはもぎ取っていくーー
名前を、言葉を、時間を
歴史を、人生を、未来を
眠りを、笑みを、愛を
口を開けば下水口の悪臭
キーボードを叩けば殺しの刃
瀕死の稚児に文学的余白は何の用をなす?
踏み荒らされた血まみれの大地、そこは焼け野原
 
憎しみが生きる意志となるのなら、憎み抜くといい
怒りが進む燃料となるのなら、中指を立てるといい
しかしどうか自分を見失いなさるな
嵐が夢を見ないように、獣は詩を奪えない
蒼穹と海原、星座と潮騒、木漏れ日とせせらぎ
血に濡れた太陽は、それでも白い光を燦々と注がせる
 
革命ははるけき昔、跫音すら遠ざかり
折れかけの石壁に、暗愚の滝が打ちつける
収容所の死臭、処刑場の弾痕
生と死を分かつは科学と自然を騙った横柄な神話、いわゆる神の審判
ーー空虚なる虚構
 
それでも涙が乾いた後に花は芽吹き
荒波が過ぎれば凪は来る
はるけき君よ、打ちのめされ嘆き苦しんだとて
くすむ虹の輝きを待て


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