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2020年3月、劇場からコロナウィルス集団感染は出ませんでした

結論としては表題の一文だけで、それ以上でもそれ以下でもありません。この記事は「劇場は安全なんだから早く公演やらせろ」「保障しろ」という主張ではありません。ただ、「演劇関係者はちゃんと対策した」し、「観客もそれに答えました」よね、というだけの話ですが、こういう混乱の中なのでちゃんと時系列とデータをメモしておこうと思って書きました。あくまでいち観客が状況をあとから振り返るために状況証拠的なものをメモしただけですので、科学的根拠が欲しい方にはこの記事はなんの役にも立ちません

■政府の自粛要請の期間について

時系列メモです。政府が最初に大規模イベントの自粛要請を出したのは「2月26日」ででした。期間は2週間ということで、つまり最初の自粛要請は3月10日までということになります。その後、その3月10日にふたたび「3月19日まで」を目処に自粛を、というコメントが出されました。3月20日に出た安倍総理のコメントは基本的には自粛を要請するものでありつつも、「主催者は慎重に判断を」「感染症対策のあり方の例も参考にして」と、「対策すれば開催してもいい」と受け取ることもできるものでした。

一旦は自粛要請が緩和されたように見えましたが、3月26日の小池都知事の記者会見で、「28日と29日の週末は不要不急の外出を控えるように」との呼びかけがありました。緊急事態宣言が出されて本格的な外出自粛を呼びかけられたのは4月7日です。

(参照:厚生労働省「イベントの開催に関する国民の皆様へのメッセージ」

■演劇興行の開催状況

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キャパ500以上の劇場で2020年3月に開催された主要な公演をカウントしてみました。上記の表で、ピンクが開催された公演、グレーが中止になった公演です。数字は一日に開催された公演数ですね(2はマチネとソワレで一日2公演あった日です)。もちろんチケットが完売してない公演もあれば、キャンセルもある程度は出たと思いますが、主だった興行だけでも132公演が開催され、その座席数は19万席を超えます(小さい劇場で開催された公演を含めたらもっと動員数は多くなるはずです)。劇団四季や松竹(歌舞伎)、国立劇場などは3月の興行をほぼ自粛していて、上記の表にはとても書ききれないほど多数の公演が中止となってしまいました。

一方、ほとんどの興行が公演中止にして自粛していた3月上旬から中旬にかけて、すべての公演を開催したのがNBS「パリ・オペラ座バレエ団」(東京文化会館)と御園座の「吉幾三特別公演」でした。御園座は名古屋の劇場で、この公演期間はまさに愛知県での感染者が増えた時期に重なっており、高齢者の観客も多いであろう公演を開催するのはかなり勇気のいることだったのではないかと思います(貸切公演は一部中止になったという話も聞いてますが、それ以外の公演は「公演規模を縮小して開催」と公式サイトに出ていましたので上記の表では概要通りにカウントしています)。パリ・オペラ座バレエ団も、この時期にこの規模の来日公演は非常に難しい状況だったことが容易に想像できます(毎日新聞の有料記事ですが一部レポートが読めます)。

そして、いくつかの劇場は政府の指示に従って3月19日までの公演を自粛し、3月20日から公演を再開しています。すべての劇場の状況を調べたわけではありませんが、各興行や劇場の公式サイトを見る限り、多くの劇場で「入口にサーモグラフィーカメラを設置、体温が37.5度以上の方は入場をお断り」「入口で手をアルコール消毒してもらう」「劇場スタッフは全員マスク着用」「観客にマスクの着用を呼びかける」「飲食物の販売は中止、ロビーでの飲食も禁止」「物販の縮小、あるいはグッズは通販のみの対応」「体調不良などの理由で観劇しない方はチケット払戻可能」などの対応をしていました。劇場によっては看護師も常駐させていたようです。

こうして3月20日〜27日はいくつかの公演が行われましたが、都知事より「3月28日、29日の週末は外出の自粛を」と呼びかけられ、ふたたび幕を下ろす劇場が増えました。この週末に千秋楽を迎えるはずだった興行のいくつかも、苦渋の選択で自粛を決めたところがありました。

そして、4月にはいってからは、ほとんどの劇場の灯が消えました。

私は3月に幕をあげた各劇場の状況を、祈るような気持ちで見守っていました。どうか劇場から感染者が出ませんように、と思いながら、それぞれの興行が終わってから2週間が経過するまで、ネットニュースをじっと見守って、クラスター化のニュースが出ないことを確認していました。演劇界以外にも東京事変の2/28の東京国際フォーラムホールA公演、3/22のK-1さいたまスーパーアリーナが開催され、いずれも批判の声が上がりましたが、4/16現在、これらの興行からコロナウィルスの感染者が出たというニュースは出ていません。

【4/17追記】「K-1では感染者出たんじゃなかったっけ」という声がいくつかあったので追記しますが、『「K-1」観戦者に発熱症状 PCR検査へ』、という夕刊フジの記事はありましたが、Twitterにて結果は陰性だったと続報がありました。また、フジテレビは『“K-1の乱”今度は都内で開催か 東京で新たに40人以上感染 』という見出しで報道をしていますが、この報道は「K-1を3月28日に開催予定だが都が自粛を要請している」「都内では新たに40人の感染者が出た(この感染者はK-1とは無関係)」という内容です。見出しから「K-1から40人の感染者が出た」と誤読した方がいたものと思われます。

■宝塚歌劇団だけがなぜ批判されたのか

宝塚歌劇団の公演再開だけが大きく報道されたために演劇界を代表して叩かれてしまったような状況がありました。実際には宝塚は3月の公演のほとんどを中止していて「3月10日まで」「3月19日まで」という政府の要請には概ね従っているし、上記の表を見ていただければわかる通り、他の興行主と比べて突出して開催公演が多いわけではありません。おそらく、各スポーツ紙に宝塚歌劇の番記者がいるためか、公演再開がどうしてもスポーツ紙で報じられてしまい、それがヤフートピックスなどに出てコメントやSNSで叩かれる、という流れができてしまったのですね。

ただ政府の要請解除より一日早い3月9日、この日だけは退団者のいる公演の千秋楽で退団セレモニーがあるために、どうしても一日フライングして開催する必要がありました。劇団としても「千秋楽に来るファンはガチ勢だからコロナ対策に協力的である」という目算もあったのだと思います(千秋楽のチケットが取れるのは百戦錬磨のガチ勢だけですから)。飲食禁止や規制退場など、多少の不自由をお願いしても今日の観客はこたえてくれるはずだ、という劇団とファンの信頼関係の元に、この公演は開催されたと個人的には思っています。

もともと劇団から呼びかけられる前から、宝塚ファンは2月の時点で客席のマスク着用率が9割くらいはあったように思います。トイレの手洗い場でもいつもより念入りに手を洗うため軽い渋滞が発生したりという状況もありました。「どうせ劇場前にたむろするんだろ」みたいな批判コメントを見かけたこともありますが、私設ファンクラブも2月の早い時点から入待ち出待ちを自粛しています。これはコロナに限らずインフルエンザの流行期などでもよくある対応で、ファン側も「大事なご贔屓に感染させてはいけない」「客席にウィルスを持ち込んではならない」という緊張感を持って従来から観劇やファン活動をしている印象があります。2月下旬〜4月のお茶会(=ファンミーティング)も公演中止が決まる段階のかなり前から中止が決まっていて、ファンも粛々とそれを受け止めていました。

また宝塚は全国の映画館で開催する予定だった月組御園座と雪組東京公演千秋楽のライブビューイングも中止しています。この時点で映画館はまだ普通に営業していて、ライブビューイングを中止する必要はなかったと思われるのですが、劇団としては「劇場を無観客にして2〜3万人のライブビューイングをするくらいなら、ライブビューイングを中止にしてでも2千人の観客の前で劇場公演を行いたい」という気持ちだったのでしょう。代わりに雪組千秋楽公演はCS専門チャンネルで生放送するという異例の大英断がありました。劇団としてファンのためにできることはすべてやってくれた、と個人的には思っています。劇団はこの決断で約3万人のファンを見事にSTAY HOMEさせることができたのですから。

(なお、3月9日の再開で宝塚が叩かれてしまいましたが、その後の3月20日での再開のタイミングについては、一部の団体に批判が集中しないよう各興行主が連携して横並びで開催を決定したと聞いています。劇団☆新感線だけ一歩早い19日になっているのは、この日のマチネとソワレで全国ライブビューイング上映があったため、影響範囲が大きかったためと思います)

■SNSで見る演劇ファンの空気

この段はなんのソースもないですが、SNS経由でみたファンの空気感ということで、あくまで個人的な印象ですよと前置きしてメモしておきます。2月に大規模イベントの自粛を要請された時点ではまだ日常生活に大きな影響は出てない状況で、エンタメファンは総じて「なんでエンタメだけ?」と、悲しみと同時に怒っていた方が多いと思います。この頃は劇場の再開を願う声が多かったですね。

3月20〜22日の連休、いくつかの劇場が再開した頃は、主に医療従事者や重症化リスクの高い家族を持つ人々の中で、自主的に観劇を諦める人も出てきました。この時点ではまだ「チケットがある限り這ってでも観劇にいくぜ」というガチ勢は対策を取りつつも劇場へ向かう人が多かったように思います。ただ観劇を決めた人々も、「自粛明けの浮かれた気分」などでは決してなく、どちらかといえば気持ちをひきしめて「観劇日まで絶対にウィルスに感染してはいけない」「観劇後も2週間はうかつに風邪をひけない」といったような一定の「覚悟」をもって劇場に向かっているような雰囲気がありました。うかつに劇場で咳払いでもしようものなら顰蹙を買うことは間違いないわけですから、例年のインフル流行期よりも緊張感が段違いでした。世間が3連休でお花見外出に浮かれているのとは違った雰囲気だったことは書き添えておきたいです。

そして、この3連休の後くらいから、医療従事者から医療崩壊の危機にある悲鳴のようなコメントがあちこちのSNSで流れてくるようになり、3月28〜29日の週末を迎える前にはガチ勢ですら「もし公演が開催されていても行くかどうか悩む……」「むしろ中止してくれてホッとした」とこぼすようになっていきました。このあたりで観客の中でも潮目が変わった感じはありました。3月の後半からはもう公演中止の報に悲しみの声はあれ、怒る声は皆無だったと思います。

■個人的な雑感

2月中旬から下旬にかけて大阪の4つのライブハウスで感染者が報告され、3/20の渋谷LOFT HEAVENでのライブでの出演者から感染者が出るなど、複数のライブハウスでコロナウィルスの感染が報告されています。2月の時点ではまだコロナがどのような状況で感染するかもよくわかっていなかったために、この大阪の件がきっかけでエンタメ興行がすべて中止になってしまったのだろうと思います(ただライブハウス興行がすべて危険かというとそうでもなくて、観客がもみくちゃになる激しいものもあれば、ゆったり座って飲食しながらというタイプのものもあり、全てを一律に公演中止としてしまうのも個人的にはどうなんだろうと思っています)。

後から考えれば演劇・ミュージカルやクラシックコンサート、映画のように「換気機能の整った会場」での「声を出さずに黙って鑑賞するスタイル」の興行は、こんなに早い段階で中止にしなくても良かったのではないか、現にクラスター化してないじゃないか……と、正直ちょっと思いました。実際に感染者が報告されているのは「接待を伴う飲食業」だったりカラオケボックスだったりライブハウスだったりするわけで、「大人数が集まる」ことよりも「至近距離で声を出して話す」ことがまずいんじゃないのか……と思ったりするわけです。このあたりは後々ちゃんと専門家を交えて検証してほしいところではあります。なぜなら、声が出るのがまずいのであればシリアスな芝居はOKでも、どっかんどっかん笑えるようなコメディの上演はアウトになってしまいます。三谷さんもKERAさんもクドカンも真面目な芝居しかやれなくなったらどうしましょう(困る)。クラシックやバレエの公演からはブラボーおじさんに退場してもらわねばなりません(これは歓迎されそう)。歌舞伎の大向うさんも幕見席での立ち位置を客席から2m離してもらう必要があるでしょう(そんなスペースあったっけ??)。

劇場内は安全でも「多くの観客が県をまたいで移動する」のがマズイ、というのが自粛要請の理由、というのももちろんわかるのですが、それがダメなのであればそれはもはやエッセンシャルワーク以外の通勤も制限される段階なのではないかと思います。観劇のために使う電車は殆どの場合、時間帯的に通勤ラッシュほどは混んでいないわけですから。

今、外出自粛が求められている今の4月の状況で「劇場を開けろ」とはとても言えませんし、この状況では幕が上がったところでスタッフ・キャストが感染しないか心配になってしまい、安心して楽しめない状況なのも確かです。観客が仮に大丈夫だとしても、舞台の上の役者さんはソーシャル・ディスタンスを保てないわけですから、観ているだけで不安になりますよね。客席よりもむしろ稽古場や舞台上が心配でやきもきしてしまいそうです。

いずれにせよ、まだコロナについてわかってないことが多いこの4月中旬の時点では、公演を中止したこと、あるいは開催したこと、のどちらがどうだったのかを結論づけるにはまだ早すぎるでしょう。おそらくどちらも完全に100%の正解ではないでしょうし、どちらの決断も大きな勇気がいることで、どちらも大きな痛みを伴っているからです。そして、それを検証できるのは、もっと時間が経ってこのウィルスが収束してからだと思うので、私は「どこがどの期間に公演を開催してました」ということ、そして「それらの劇場から集団感染が出たというニュースは現時点ではない」、ということだけをまずは記録しておこうと思います。

今は、ひとまず、これだけの劇場がこの3月に幕を上げていたにも関わらず、集団感染を引き起こさなかったことに関して、「興行主・劇場スタッフのみなさんの対策のおかげです!ありがとう!」「感染に気をつけて健康を保ってくれた観客のみなさんもありがとう!」と素直に感謝して、ふたたび劇場の幕が上がる日を待ちたいと思っています。


【追記1・4/17】タイトルちょっと断定的に言い過ぎでしたね。「2020年3月、劇場からコロナウィルス感染者は出ませんでした」から「2020年3月、劇場からコロナウィルス集団感染は出ませんでした」に変更しました。


【追記2・4/21】リプライや引用RTを見ていると「世の中がみんな自粛している中で公演を強行するなんて非常識だ」といった反応があるのですが、2020年3月27日までの時点ではっきりと自粛を要請されていたのは大型イベント公立の学校だけでした。自治体が運営する図書館などの施設では小中学校の休校と同じ3月上旬頃から休館しているところも多くありますが、他の民営の事業は3月27日まではほとんど自粛を要請されることはなく、日常通りの営業をしています。居酒屋などの飲食店も各種ショッピングモールもカラオケボックスも映画館もパチンコ屋も、営業時間短縮などの措置はありつつも、休業せず営業を行っていました。かなり早い時点で集団感染が出たことがわかっているスポーツクラブでも、一部のチェーン店が約一週間程度休業したのみで、その後は対策を取りつつ営業を再開しています。

3月28日、29日の週末に都内での外出自粛をよびかけられ、この時点で初めて一部のシネコンや駅ビルなどが営業休止していますが、このタイミングでは既にK-1も宝塚も、他の演劇興行の多くも世間同様に公演中止していることは書き添えておきたいと思います。大手商業施設のいくつかの休業日程を、参考までに下にメモしておきます。

■緊急事態宣言対象7都府県の各種商業施設の休業状況

ルミネ:4月4日(土)、5日(日)、4月8日(水)以降(一部食品ショップは営業)

ららぽーと:4月8日(水)以降

ビッグエコー(カラオケ):3月28日(土)、29日(日)、4月8日(水)以降

カラオケまねきねこ:4月3日(金)以降

TOHOシネマズ(映画館):3月28日(土)、29日(日)、4月4日(土)、5日(日)、4月8日(水)以降

109シネマズ(映画館):3月28日(土)、29日(日)、4月8日(水)以降

コナミスポーツクラブ:4月8日(水)以降

セントラルスポーツ(スポーツクラブ):3月3〜10日休業、11日再開、4月8日(水)以降休業

カーブス(スポーツクラブ):3月8〜15日休業、16日再開、4月11日以降休業

鳥貴族(居酒屋):4月4日以降

ワタミ(居酒屋):4月8日以降

マルハン(パチンコ):4月8日以降

ダイナム(パチンコ):都内10店舗を4月4日(土)、5日(日)休業、7都府県55店舗を4月7日(火)より休業










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コメント (2)
失礼します。
おっしゃる通りですね。
僕もここまで自粛する
必要はないと思います。
心身の健康を整えるには
娯楽も必要です。
科学的根拠に基づいて言うべき「集団感染した人はいなかった」ということを安易に断言をしているにも関わらず、
「あくまでいち観客が状況をあとから振り返るために状況証拠的なものをメモしただけですので、科学的根拠が欲しい方にはこの記事はなんの役にも立ちません。」
と逃げを打つのはとても卑怯です。

無症状で感染を広げ、移した先の人が発症しているかもしれません。
感染していてクラスターを形成していても、経路不明で見逃されているだけかもしれません。

観劇は3密で、感染拡大の時期にイベントを行うのは褒められたことでないことには変わりはありません。
愛するものを守りたい気持ちはわかりますが、主張すべきことを取り違えています。

開催者と観客は見た目に感染者が出なかったということに胸をなで下ろすことは許されますが、ドヤ顔で「集団感染は出さなかった!」と主張すべきではないと思います。

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