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【TOKYO2022 Phase II FINALE:第35回東京国際映画祭&第23回東京フィルメックス&November】1年の集大成ここにあり

こんにちは。ギルドです。
2022年も10月に入り、映画における大きなイベントが開催されようとします。
毎年恒例の東京国際映画祭と東京フィルメックスです。

今回の映画祭で鑑賞予定の作品について簡単にまとめます。

■過去の東京国際映画祭&東京フィルメックス

こちらに過去参加した記事をまとめています。

■第33回東京国際映画祭(2020)

■第34回東京国際映画祭(2021)&第22回東京フィルメックス

■TOKYO 2022について

東京は個人的に思い出深い場所の一つです。
今年は様々なイベントで東京に行く事が多いので、ちょっとしたお祭り感をつけて盛り上げようというのが目的です。

名付けてTOKYO2022

TOKYO2022 PhaseⅠ :2022/4/30〜2022/5/4
(イタリア映画祭2022、シャンタル・アケルマン映画祭、パリ13区、アンラッキー・セックス)

TOKYO2022 Phase1.5:2022/8/14〜2022/8/18
(地獄、女神の継承、ONE PIECE:FILM RED、BPLS2@EXBAR TOKYO+)

TOKYO2022 PhaseⅡ:2022/10/28〜2022/11/3←今回
(第35回東京国際映画祭、第23回東京フィルメックス、November)

今回も映画祭の概要、映画の概要をざっくりまとめよう、というのが今回の趣旨になります。

■第35回東京国際映画祭 


◆クロンダイク(マリナ・エル・ゴルバチ)

●概要

SYNOPSIS(英訳)
妊娠中のイルカは、夫のトリクとウクライナ東部のドネツク州の村に住んでいる。2014年7月、近くのロシアとウクライナの国境で戦闘が行われている。

家のリビングルームは、敵対行為の犠牲になって壁がなくなっています。そのため、戦争の舞台となりつつある不毛な風景が露わになっている。
それでもイルカは家を出ようとしない。分離主義者であるトリクの友人たちは彼の参戦を期待するが、イルカの兄は彼をウクライナへの裏切り者として非難する。

https://www.berlinale.de/en/archive-selection/archive-2022/programme/detail/202207692.html


●個人的なみどころ

2014年ウクライナ紛争を舞台に、ロシア国境に近いドネツク州グラボベ村に住んでいるある夫婦の壮絶な日々を追ったお話。
この映画は実話であるマレーシア航空17便撃墜事件から着想を得た映画で、サンダンス映画祭でWorld Cinema-Dramatic部門で監督賞を受賞した他、第72回ベルリン国際映画祭パノラマ部門エキュメニカル審査員賞、シアトル国際映画祭で最優秀賞を受賞している。
第95回アカデミー国際長編映画賞でのウクライナ代表に選ばれている作品でもあり、東京国際映画祭の中で最も注目している作品である。

ロシアとウクライナの緊迫した関係というタイムリーな題材でありながらも、この映画は海外メディアを観るに「爆撃による穴」が象徴的に描かれている。
爆撃による緊迫感、それが齎す現実世界とのリンクする様がどう化けるか?が楽しみです。

また、この映画を鑑賞する前に「ヌズーフ/魂、水、人々の移動」というシリア紛争を題材にした似た作品を観るので、その違いも楽しめればと思う。


◆波が去るとき(ラヴ・ディアス)

●概要

SYNOPSIS(英訳)
フィリピンの優秀な捜査官の一人であるエルメス・パパウラン警部補は、深い倫理的岐路に立たされている。
警察の一員として、彼は自分の組織が献身的に実施している殺人的な麻薬撲滅キャンペーンを目の当たりにしているのだ。
その残虐行為はエルメスの肉体と精神を蝕み、不安と罪悪感から重度の皮膚病を引き起こす。
そんな中、暗い過去が彼を苦しめ、やがて決着をつけようと戻ってくる。

https://www.labiennale.org/en/cinema/2022/program-cinema-2022-public/kapag-wala-nang-mga-alon-when-waves-are-gone-2022-09-01-10-00

●個人的なみどころ

ラヴ・ディアスはフィリピンの映画監督で、東京国際映画祭では彼の作品がよく上映される。(「北(ノルテ) 歴史の終わり」「昔のはじまり」「チンパンジー属」)
私は過去にラヴ・ディアスが脚本として参加した「マニャニータ」を鑑賞して「非暴力にスポットライトを当てる暴力映画」という主題に感銘を受けました。

本作は第79回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション外で上映された作品でドゥテルテ政権による麻薬戦争の批判と正義に纏わるお話らしい。
「正義」の揺れ動く・問い直す主題は個人的に好みで、フィリピン映画界の怪物的映画作家と言われる彼がどのように悲痛を叫ぶか?が楽しみな一作です。


◆R.M.N.(クリスティアン・ムンジウ)

●概要

SYNOPSIS(英訳)
クリスマスの数日前、ドイツでの仕事を辞めたマティアスは、多民族が暮らすトランシルヴァニアの村に帰ってきた。

母親のアナに長い間預けられている息子ルディの教育にもっと関わりたい、そしてルディにつきまとう未解決の恐怖を取り除きたいと願っている。彼は、年老いた父親オットーのことで頭がいっぱいで、かつての恋人チッラにも会いたがっている。

シッラが経営する小さな工場で数人の新しい労働者が採用されると、地域の平和は乱れ、大人たちは根深い恐怖に襲われ、一見理解と穏やかさの薄皮をはぐように不満や葛藤、情熱が噴出する。

https://www.festival-cannes.com/en/festival/films/r-m-n

●個人的なみどころ

複数のエピソードから外国人労働者の置かれた境遇を描いたお話。

第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された作品。
最近盛り上がりを見せているルーマニア映画の中でもカンヌ国際映画祭常連組のクリスティアン・ムンジウ監督の最新作。

Cineuropaのインタビューによると2020年にトランシルヴァニア地方で実際に起きた事件から着想を得た「外国人嫌いの事件」に関するマイノリティの村社会に関する映画らしい。
ある街で集団に帰属し、他者を敵とみなし、何か問題が起きるとすぐに集団の外にいる者の中から罪人を見つけ出す必要がある…な話は第32回東京国際映画祭で観た「ファイアー・ウィル・カム」を彷彿とさせる。

部族的な人間について、そのコアにある将来に対する不安が複数の視点でどのように描かれるか?が楽しみです。


◆コンビニエンスストア(ミハイル・ボロディン)

●概要

SYNOPSIS(抜粋&英訳)
モスクワ郊外の小さなスーパーマーケットの奥の部屋で、ささやかな結婚式が行われている。
移民労働者の和気あいあいとしたコミュニティ、と思うかもしれない。しかし、ムハッバトの顔は困ったような顔をしている。
彼女は「Produkty 24」で働く移民労働者である。
妊娠中にもかかわらず、店主のザンナの鉄の掟のもと、労働者たちの疑似家族の一員として、昼夜を問わず窮屈な思いをして働いている。
逃げ出そうとする者は残酷な虐待を受ける。一方、警察は見て見ぬふりをし、店のものなら何でも、人間でも、ただで食べさせてくれる。
しかし、ムカバトはパスポートだけでなく、人生で最も大切なものを奪われたとき、脱走を決心する。

https://www.berlinale.de/en/archive-selection/archive-2022/programme/detail/202202347.html

●個人的なみどころ

コンビニエンスストアで働く外国人労働者の息詰まる生活を描いたお話。
狭い空間の身動きの取れない姿と外国人労働者が異国の地で苦しい生活を続ける姿とリンクする話らしくて、R.M.N.に並ぶ社会性溢れる映画だと感じました。

コンビニで働く店員は確かに観てて辛そうな姿を時々観るけど、どうもその姿を空間設計と絡めてなおかつギミックが存在するらしくてその姿を刮目できればと思う。


◆タバコは咳の原因になる(カンタン・デュピュー)

●概要

SYNOPSIS(仏訳)
悪の亀との激闘の末、「TABAC FORCE」と呼ばれる5人の自警団は、悪化した集団の結束を強化するために撤退を命じられる。

退却は順調だったが、悪の帝王レザーディンが地球を破壊することを決意する...。

https://www.allocine.fr/film/fichefilm_gen_cfilm=296128.html

●個人的なみどころ

カンタン・デュピューはフランス映画の中でもテーマ設定が面白くて、なおかつ短い時間で観れるのが特徴的な監督です。
殺人タイヤ、喋る革ジャン、若返りのヤバい穴、BIG蝿…など過去作品も面白いが今回は異色戦隊モノ。

タバコに含まれる物質が名前になってて
・ベンゼン
・ニコチン
・メタノール
・水銀
・アンモニア 
の5人レンジャーが合宿を行う戦隊モノらしい。

一貫して奇天烈な世界を堪能できる映画版 星新一の短編小説みたいな位置づけの彼がどんな世界を見せてくれるかが楽しみです。


◆ヌズーフ/魂、水、人々の移動(スダデ・カーダン)

●概要

SYNOPSIS(英訳)
シリア紛争の渦中にあるダマスカスを舞台に、包囲された地域に残ることを決意した一家を描いた寓話的な女性解放物語。

14歳のゼイナとその家族が住む建物の屋根に砲弾で大きな穴が開き、彼らは突然外の世界にさらされることになる。

ある日、近所に住む少年が屋根の隙間からロープを降ろしてくれ、ゼイナは初めて自由を知ることになる。

父親は難民になることなく家に留まることを決意するが、この新しい窓は彼女と母親にとって想像を絶する可能性の世界を開く。

https://www.labiennale.org/en/cinema/2022/orizzonti-extra/nezouh

●個人的なみどころ

「クロンダイク」と似たテイストの穴あいちゃいました系作品。
戦争という地獄の中で、危険に晒されながらもその場に留まる人々を描く。

ウクライナの「クロンダイク」、シリア紛争の「ヌズーフ」で違いがあるとすれば御伽話的なテイストが加わるのかな?と思うがその違いを堪能しながら見れればと思う。


◆フェアリーテイル(アレクサンドル・ソクーロフ)

●概要

SYNOPSIS(英訳)
昔々、二人の浮浪者がいました...いや...三人... いや、4人だ... だが他にもいた 多くの異なる者達だ... 私は彼らを知っていた 長い間 でも でも窮屈だった
そして何かが起こり 彼らは姿を消した 夜になると 声が聞こえてきた 複雑な質問の断片や うめき声、何百万もの声の遠吠え... 言いようのない興奮に襲われ...

「あなたは情熱の運び屋であるサタンを 苦しみの神糸で絞め殺した」

- M22 K,4-4

https://www.locarnofestival.ch/LFF/locarno75/program-75/film?eid=75&fid=1294202

●個人的なみどころ

ディープフェイク・光学技術を用いてスターリン、ヒトラー、チャーチル、ムッソリーニ、イエス・キリストらの歴史上の人物がモノクロ映像の中で集結して対話する思考実験テイストな映画。

アレクサンドル・ソクーロフはアンドレイ・タルコフスキーに高く評価され、レンフィルム映画スタジオへの推薦を受けたロシアの巨匠らしい。
フィルモグラフィーを観るに、映像美と過去の断片的な記憶から歴史を紐解くような作家性が面白いと思った。

そんな本作は実験装置の中での虚構の中で歴史の真髄を辿るというコンセプトが面白く、霧がかかった歪んだモノクロ映像の映像美も予告編で惹かれるほど良くて御伽話の奇妙さがどう化けるか?が楽しみな一作。


◆バルド、偽りの記録と一握りの真実(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)

●概要

SYNOPSIS(英訳)
「BARDO, Falsa crónica de unas cuantas verdades」は、ロサンゼルスに住むメキシコ人ジャーナリストでドキュメンタリー作家のシルベリオが、国際的に有名な賞を受賞した後、祖国に帰らなければならなくなるが、この単なる旅が彼の存在を限界まで押し上げるとは知らずに、壮大で美しい映像で、没入型の体験ができる作品。
彼の記憶と恐怖は、現在を突き抜け、彼の日常を戸惑いと驚きで満たすことになるのです。
アイデンティティ、成功、死、メキシコの歴史、妻や子供たちとの深い絆など、普遍的でありながら親密な問いに、シルベリオは感動と豊かな笑いをもって取り組んでいる。
まさに、この奇妙な時代に人間であることの意味とは何なのか。

https://www.labiennale.org/en/cinema/2022/venezia-79-competition/bardo-falsa-cr%C3%B3nica-de-unas-cuantas-verdades

●個人的なみどころ

とあるメキシコ人ジャーナリスト兼映像作家がインポスター症候群に近い症状を患ってしまい、反芻と内省を繰り返すお話。

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥはメキシコの映画監督で
①「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」で、第72回ゴールデングローブ賞で最多7部門にノミネートされ、脚本賞・マイケル・キートンが主演男優賞 (ミュージカル・コメディ部門)を受賞、第87回アカデミー賞でも最多9部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、脚本賞、エマニュエル・ルベツキが撮影賞と4部門を受賞

②「レヴェナント: 蘇えりし者」で、第68回アメリカ監督組合賞の受賞

…と名実ともに巨匠として数えられる監督である。

本作は第79回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、Netflixに配信予定の作品である。
海外メディアを観るにリアリズムを基調とした普遍的な作品ながらも、個人的な内省と叙情詩によって日常から引き出される美しさを生み出すのが巧みらしい。
人間が持つ感情や社会的な情勢に対して反芻し、カメラワークによって現実と夢の間でマジカルな演出があるとのことで楽しみな一作。


◆第三次世界大戦(ホウマン・セイエディ)

●概要

SYNOPSIS(英訳)
シャキブはホームレスの日雇い労働者で、数年前の地震で妻と息子を失ってから立ち直れないでいる。
ここ数年、彼はろう者の女性、ラダンと関係を深めている。

そんな彼が働く建設現場は、第二次世界大戦中のヒトラーの残虐行為を描いた映画の撮影現場であることが判明する。
大きな困難を乗り越えて、彼は映画への出演、家、そして一人前になるチャンスを得る。
それを知ったラダンは、彼の職場に助けを求めにやってくる。

https://www.labiennale.org/en/cinema/2022/orizzonti/jang-e-jahani-sevom-world-war-iii

●個人的なみどころ

第二次世界大戦を扱った映画のヒトラー役の俳優が降板し、エキストラで参加していた日雇い労働者が代役に抜擢されるお話。

第79回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門で作品賞、男優賞を受賞しており、第95回アカデミー国際長編映画賞イラン代表にも選ばれている。
寓話性の強い映画で、いかにもB級映画な名前なのに賞をかっさらう姿…
初めて東京国際映画祭に参加して最初に観たサイード・ルスタイ「ジャスト6.5 闘いの証」を彷彿とさせる映画だなと思い、そこが楽しみです。
イラン映画はとにかくパワフルな演出が好きで、本作はブラックコメディながらも一定量の緊迫感・悲劇的な出来事が無数に絡む映画らしいのでそこを拝めればと思う。


◆アシュカル(ユセフ・チェビ)

●概要

チュニスの郊外。民主化運動の最中に工事が中断された建設現場で黒焦げの死体が連続して発見され、ふたりの刑事が捜査を始める。ジャンル映画に政治的メッセージを注入した異色の監督デビュー作。

https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3501CMP02

●個人的なみどころ

焼死体を発見した二人の刑事の捜査物語。

海外メディアを観るに事件捜査ものからチュニジアの置かれた政治的な事情を拡大していくような作品らしく、そのテーマ性と印象的な映像がどう展開していくか?が楽しみな一作。


◆アヘン(アマン・サチデーワ)

●概要

「宗教はアヘン」と言ったのはマルクスだが、コメディ、社会派、ディストピアSFなど様々なジャンルの5つの短編から構成された本作は、インドの宗教事情を多角的に浮上させようと試みている。

https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3502ASF07

●個人的なみどころ

インドの宗教事情を捉えたお話。

事前情報がほぼ無い映画ではあるが、インド映画自体は殆ど観たことがないので未知数そのものを楽しめればと思う一作。


◆マンティコア(カルロス・ベルムト)

●概要

『マジカルガール』(14)でサンセバスチャン国際映画祭最優秀作品賞を受賞したスペインの俊英カルロス・ベルムトの最新作。ゲームのデザイナーとして働く若い男性とボーイッシュな少女との恋愛の行方を描く。

https://2022.tiff-jp.net/ja/lineup/film/3501CMP10

●個人的なみどころ

ゲームデザイナーとボーイッシュな少女の恋愛話。

マンティコアは人間の顔とライオンの胴体を組み合わせた怪物で、マンティコアの換骨奪胎した造形が本作にも反映されているらしい。

いわゆるシャイで内気な青年で一種の他者との交流を積極的に望まないような陰キャ体質という部分に共感を覚える。
そんな彼の抱える思想のコアを追跡して、少女とのやり取りがどのように展開していくか?が楽しみな一作。


■第23回東京フィルメックス

◇No Bears(ジャファル・パナヒ)

●概要

映画監督ジャファル・パナヒの目を通して並行して語られる2つの愛と抵抗の物語。ここ十数年、芸術的自由に関する自己言及的作品を作り続けてきたパナヒの最新作。パナヒがイラン当局に拘束される中、ヴェネチア映画祭でプレミア上映され、特別審査員賞を受賞した。

https://filmex.jp/2022/program/specialscreenings/ss1

●個人的なみどころ

「人生タクシー」「ある女優の不在」などで知られるイランの巨匠ジャファル・パナヒ監督の最新作。

この映画は2つの軸で展開され、映画の中で映画を撮る「映画内映画」と「滞在する村での部族社会」が交錯する話らしい。

イラン映画は名作から新作までそれなりの数を追ってきたが、パナヒ監督の自己言及が異なる軸を通じてどう語られるか?が楽しみな一作。


◇ナナ(カミラ・アンディニ)

●概要

SYNOPSIS(抜粋&英訳)
1960年代のインドネシアは、スハルトのクーデターによりスカルノが追放され、反共産主義の激しい粛清が行われるなど、劇的な政変と混乱の時代であった。

優しく美しい若い女性ナナは、この紛争から大きな影響を受けている。彼女の夫は誘拐され、森に連れ去られた。

結婚を迫ろうとするギャングのリーダーからなんとか逃げ出したものの、この事件で父親は命を落とし、ナナは貧困に追い込まれる。

数年後、彼女はスンダの富豪の後妻として、メイドを雇い、新しい環境に適応するために悠々自適の生活を送っていた。しかし、ナナの過去は彼女の夢の中で再び姿を現す。

https://www.berlinale.de/en/archive-selection/archive-2022/programme/detail/202208899.html

●個人的なみどころ

一人の女性にフォーカスしたお話。

本作は第72回ベルリン映画祭コンペティション部門でワールドプレミア上映され、銀熊賞の最優秀助演賞を受賞した作品である。

前回のカミラ・アンディニ「ユニ」と似たテイストを感じた作品で、ウォン・カーウァイのような色彩設計を感じさせるアート性に寄せた映画らしい。

ユニが好きな映画で、本作は社会的な情勢とアート性を両立した部分がどう化けるか?が楽しみな一作。


◇地中海熱(マハ・ハジ)

●概要

SYNOPSIS(英訳)
鬱病を患いながらも作家としてのキャリアを夢見るWaleed。
彼は隣人である小悪党と関係を持つようになる。
その企みは思いがけない友情へと変わり、二人を暗い出会いの旅へと導く。

https://cineuropa.org/film/425599#:~:text=Waleed%20dreams%20of%20a%20writing,a%20journey%20of%20dark%20encounters.

●個人的なみどころ

作家になる事を夢見て慢性的なうつ病に陥る男性のお話。
第75回カンヌ国際映画祭では「ある視点部門」最優秀脚本賞を受賞していて、個人的にはキャラクター造形で深淵を辿る部分が楽しみです。


この映画はイスラエルの占領下に置かれたパレスチナ人のアイデンティティの問題が浮き彫りになっているダークな映画らしい。
印象的なのはカンヌ国際映画祭インタビューに書かれた監督自身が抱えるなじみある極端な思考を架空の人物に現出させた、という思想のコアを深堀りする部分。
アイデンティティの社会的な背景、キャリアを目指して慢性的なうつ病になる人物の深遠なる思想が他者との交流によってどのように変化するか?が楽しみな一作。


◇ソウルに帰る(ダヴィ・シュー)

●概要

韓国で生まれ、フランスで養父母に育てられた25歳のフレディが初めて韓国に降り立ち、実の両親を探し始める。エレガントな撮影と編集で、瞬間を生きるフレディの存在そのものが力強く迫りくる作品。カンヌ映画祭「ある視点」部門で上映された。

https://filmex.jp/2022/program/competition/fc3

●個人的なみどころ

異国で育てられた少女が母国に降り立って両親を探すロードムービーだけでもグッとくるものがある映画だと感じています。

先の読めない展開が多く、彼女の様子を長い期間捉え続ける「瞬間瞬間」の輝きがキーアイテムらしい。
第75回カンヌ国際映画祭では「地中海熱」と同様に「ある視点部門」にノミネートされており、複雑で奥行きのある作品であることを楽しみにしています。


◇自叙伝(マクバル・ムバラク)

●概要

SYNOPSIS(抜粋&英訳)
父は刑務所に、兄は海外に出稼ぎに出ている。幼いラキブは、インドネシアの田舎町で何世紀にもわたって仕えてきた一族の引退した将軍プルナの空き屋敷で、たった一人の家政婦として働いている。
プルナが市長選のために帰国した後、ラキブはプルナと親密な関係になり、プルナのアシスタントとして仕事と人生の天職を見出す。

ある日、プルナの選挙ポスターが破壊されているのを発見したラキブは、迷わず犯人を突き止め...。

https://www.labiennale.org/en/cinema/2022/orizzonti/autobiography

●個人的なみどころ

一昔前のインドネシア軍事独裁体制下の社会で生きる青年のお話。

第79回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で上映され、同部門と批評家週間を併せたカテゴリーの国際映画批評家連盟賞を受賞した。

社会情勢の骨格を捉えつつ、ヒューマンドラマとして奥行きある構成や自然光・奇妙なカメラワークで暴力と欺瞞の軍事独裁体制を描いているらしく、その力強さを体感できればと思う一作。


◇石門(ホワン・ジー&大塚竜治)

●概要

SYNOPSIS(英訳)
リンは客室乗務員になるための訓練を受けている20歳の勤勉な女子大生。

そんな彼女に、妊娠と母親の多額の借金が発覚し、人生を変える決断を迫られる。

https://whatson.bfi.org.uk/lff/Online/default.asp?BOparam::WScontent::loadArticle::permalink=stonewalling&BOparam::WScontent::loadArticle::context_id=

●個人的なみどころ

妊娠が発覚した女性を追ったお話。

ホワン・ジー&大塚竜治さんは過去に「卵と石」(2012年)が大阪アジアン映画祭、「フーリッシュ・バード」(2017年)がアジア・フォーカス福岡映画祭で上映されていて、東京フィルメックスは初めてとのこと。

過去作品から一貫して描く「ひとりの女性の姿」を通して現代の中国社会の現実がその暗部を重層的に捉えており、その奥行ある凄みを堪能できればと思う一作。


■シアター・イメージフォーラム

★November(ライナル・サルネ)

●概要

エストニアのとある寒村。貧しい村人たちの最大の悩みは、寒くて暗い冬をどう乗り切るかだ。村人たちは“使い魔クラット”を使役し、隣人から物を盗み合いながら、必死になって生きている。クラットは牛を鎖でつないで空中に持ち上げ、主人の農場に届ける。クラットは農具や廃品から作られたもので、操るためには「魂」が必要となる。「魂」を買うために森の交差点で口笛を吹いて悪魔を呼び出しては、取引をするのだ。悪魔は契約のために3滴の血を要求するのだが、村人たちはそれすら勿体無いと、カシスの実を血の代わりに使い悪魔をも騙す。

11月1日の「諸聖人の日(万霊節」。死者が蘇り、家に戻ってご馳走を食べ、貴重品が保管されているかを確認する。死んでもなお、欲深い村人たち。若くて美しい娘リーナも死者の一人である母親と束の間のひと時を過ごす。リーナは村の若者ハンスに恋をしているが、そんなことは露知らず、強欲な父親は豚のような農夫エンデルに、リーナとの結婚を約束してしまう。一方、ハンスはドイツ男爵の美しい娘に一目惚れ、リーナには歯牙にも掛けない。ハンスが別の娘に夢中なのを知ったリーナは村の老いぼれ魔女に相談をする。魔女はリーナに矢を渡し、これを娘の頭に刺せば脳みそがこぼれ出るだろうとほくそ笑むのだった。

ある夜、男爵の館の様子を伺っていたリーナは、館の屋根に夢遊病者のような状態で歩いている男爵の娘を発見する。リーナは屋根から落ちてしまいそうな娘を黙って見過ごすことはできずに助け出す。そんな時、ハンスは雪だるまのクラットを作り、3つのカシスを使い悪魔を騙そうとする。その策略に気づいた悪魔はクラットの魂をハンスにくれてやる代わりに、ハンスの魂を奪い取る。ハンスはクラットを使って男爵の娘を連れ出そうと試みる。だが、クラットは「人間を盗むことはできない、できるのは家畜と命を持たない物だけだ」と悲しげに答えるのみ。絶望したハンスは、すべての「愛」を変えてしまう「ある行動」に出るのだった──。

https://november.crepuscule-films.com/

●個人的なみどころ

東欧系のダークでファンタジーなラブロマンス映画。
この映画だけは映画祭ではないものの、かねてより前から気になっている映画で東京に滞在している期間で鑑賞できればと思う。

ライナル・サルネは学生の頃から映画作りにおいて類まれなる才能を発揮して、本作は「アニミズム」という思想と異教の民話・キリスト教神話を換骨奪胎した作品である。
2018年アカデミー賞外国語映画賞のエストニア部門に選出され、第10回京都ヒストリカ国際映画祭でも上映されている。

予告編・ポスターからも分かるレベルのモノクロ映像の圧倒的映像美が素晴らしく、独創的な映像を堪能できればと思う一作。


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