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第33回東京国際映画祭

この記事では10/31〜11/9にかけて行われた東京国際映画祭のまとめを書きます。

見た映画も紹介しますが、その中の「アンダードッグ」という作品は11/27に日本で全国公開されます。スポ根✗日本社会情勢が融合した日本ならではの作品で多くの人に刺さると思います。

概要

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東京・六本木のTOHOシネマズ六本木ヒルズ、EX THEATER ROPPONGIにて第33回東京国際映画祭が行われました。

私は仕事の関係上、前半の11/1〜11/4にかけて上映された映画を見ましたので、その感想と一人でも多くの方にこのイベントに興味を持って欲しいとの想いを込めて記事を書きます。


1本目:皮膚を売った男(原題:L'Homme Qui Avait Vendu Sa Peau) ★★★

シリア難民のとある男が、芸術家によって背中に「VISA」と書かれたタトゥーを彫られて生活が一変する映画。

ウィム・デルボア「Tim」という実際の作品から着想を得た映画で「現代アート、法律解釈」について扱っています。

美術を見た観客の感想を持って成立する現代アートの特徴、実際に存在する作品としての現代アートの限界(例.ダミアン・ハースト「Mother and Child (Divided)」)、背中をアートにされた男の内面、法律の解釈の限界など…様々な切り口で語られる奇抜さが特徴的でしたね。

この映画はテーマの斬新さもさながら映画ジャンルが変化するところも面白い見どころでした。シャマラン作品的などんでん返しに驚愕されましたね(芸術でいう「贋作」でピンとくる人がいるかも)

去年で言うと「列車旅行のすすめ」、「動物だけが知っている」もストーリーラインの展開自体が凄く面白くて、そんな掘り出し物を探るところも東京国際映画祭の楽しみでもあります。


2本目:アンダードッグ ★★☆

元・日本ライト級1位、現・かませ犬(アンダードッグ)のボクサーが大物俳優2世タレントと戦う前編、ある因縁を持つ男と戦う後編で構成されているスポーツ映画。

TOKYOプレミア2020オープニング作品で、11/27に全国上映されます。Netflixの「全裸監督」で有名な武 正晴監督の長編作品で注目度の高い作品ではないでしょうか。

オープニング作品に選出されるだけあって熱くなれる作品だと思います。

随所のコメディ、熱演っぷりも見どころですがボクサーたちの背景を丁寧に映した末のボクシングはグッとくるものがありました。


王道作品「ロッキー」シリーズを踏襲しつつも、現代社会を交えた負け犬の再始動物語としてロッキー VS ロッキーの戦いは一見の価値があります。

個人的には後編の練習シーンからカットバックによる対比描写からのボクシング戦、同じ熱量を持つ者同士を映すカメラの追従を噛み締めながら見るとめちゃ楽しめました!

ドライさと燃え上がるギャップを持つ本作は多くの人にオススメしたい作品です。


3本目:スウェット(原題:Sweat) ★☆☆

カリスマ性あるインストラクターのSNS発信を怠らない一方、孤独を深めている姿を描いたヒューマンドラマ映画。

SNSをモチーフにした題材ですが「遠くの親戚より近くの他人」という言葉が似合う作品でしたね。

一瞬の幸せで輝ける姿、SNSという気軽に繋がれる一方で自身が求める欲求から反する一面も持つ一長一短、家族愛を超えてSNSでの繋がりがかけがえのないものになる…という題材ならではの一面を味わえます。

一方でSNSで演じる姿から集まる性的な視線、孤独を埋め合わせるSNS、SNSと家族とのギャップ…など語れる部分が多いにも関わらず、そのどれもが十分に深堀されないストーリーの薄さが気になりました。率直に言って面白くなかったです。カンヌに選出されたらしいが、選出されたのがよく分からない。

しかし、この映画の違った一面で「映画を見ること」の新しい発見をしました。

東京国際映画祭自体の見どころとして、映画を見るタイミングによってはトークサロンを聞くことが出来ます。今年はそれがオンライン上でいつでも見れるので、この映画の肌触りを感じやすいとも思います。

トークサロンでこの映画の趣旨を語る部分に面白さがあって、「作り手の狙いの面白さ≠映画の面白さ」であることがひしひしと伝わる意味で新しい発見が出来た一作でもあります。

参考:スウェット トークサロン

4本目:二月(原題:February) ★★☆

動物と自然を愛する寡黙な男の幼少期・青年期・老年期を描いたヒューマンドラマ映画。

ブルガリアの映画は初めてですが極限までセリフを削ぎ落とした硬派な映画でした。

自分の環境には逆らえない・自分には自分だけの道があるのだから自由に生きるのが人間らしさである、というメッセージを伝える作品です。それを直感で作り上げて自然のダイナミックさと一体化するところ・モノローグで静かに語るところに本作の良さがひしひしと伝わってて面白かったかな。

ブルガリア映画に限らず、特定の国(イタリア・スペイン・イランなど)は映画祭などのイベントでしか上映されないことが多いので、東京国際映画祭だからこそ楽しめる作品だと言えます。

FINAL:悪は存在せず(原題:There Is No Evil) ★★★

死刑制度について4つの独立したエピソードで語るオムニバス映画。

今年のベルリン国際映画祭で最高賞こと金熊賞を受賞した作品で期待度は高かったです。(それだけに席を予約することすら大変でした…)

実際に見ると本作の映画としての構成がとにかく面白いし死刑制度の裏側をドラマティックに映した上品さがありました。去年、JUST6.5というイラン映画を見たのもありますが、JUST6.5と同じイラン映画でありながら欧州映画のような叙情的な肌触りすらも感じましたね。

本作の中身について軽く触れると

1.とある死刑執行人の男の一日

2.兵役で死刑囚を連れて行く気弱な男の葛藤

3.兵役で死刑囚を殺した青年とその彼女の一日

4.兵役で死刑囚を殺した初老の男が娘に隠し続けた真実

というオムニバス形式で進みます。

それぞれ絵的に死刑という重みだとか真実を打ち明けられない苦悩を空間で表現したり、欧州映画のような大自然でアート映画のように映すところが良かったです。

けれども本作が何よりも優れている・面白いと思ったのは映画の構成にあると思います。一見すると異なるエピソードを直列に繋いだ映画ではあるが1のエピソードから死刑制度を通じた「人の尊厳」を得る⇔失うを交互に映した(2,3,4)ところが素晴らしいです。

おそらく日本でも全国公開される可能性が高いので多くの人に見てほしい作品です。

まとめ

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映画のイベントは年に一回だからこそ、貴重な体験が出来る場だと思っています。今年はコロナの影響で実施されるかどうかも怪しい上に最近になってコロナが猛威を奮い始めたのでタイミング的にはギリギリ良かったと実感しています。

映画は見ることも楽しみではありますが、映画を見たあとにトークショーを楽しんだり現地のシアターの空気感を楽しめるのも醍醐味かなと思っています。特に東京は映画の環境としては申し分ない場所なので、東京国際映画祭以外でも参加したいですね。(映画に限らずゲーセンも食事もそうかもしれません)

来年はコロナが落ち着いて気兼ねなく行けるといいね。

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