社会人のための世界史~~「学びなおし」におススメの本
世界史講師のいとうびんです。
さて、今回はちょっと毛色が異なったテーマで。
と言いますのも、つい先日に「世界史を学び直すのにオススメの教材はありますか?」とのコメントをnoteでいただきました。
この手の質問まあまあ良く受けます。そしていただくととっっっっても嬉しい質問のひとつです。ありがとうございまぁす!!
では早速紹介していきましょう!
まずは……
はっはっは! そうはいかねェ!
……ハイ。。
いや、意地悪とかではないんですよ、これが。
実は「世界史を勉強しなおす」にあたって、ぜひとも気を付けていただきたい点があるんです。
というのも、「世界史の学びなおし」を近年よく目にしますが、
この学びなおしって意外とハードル高いんです。というより結構いろいろと問題があります。
今回の記事では、まずこの「世界史の学びなおし」に潜む問題点から見ていくことにします。
0.はじめに:「学びなおし」の罠
さて、先にオチから言っておきますと、
私は「社会人の学びなおし」を否定するつもりは毛頭ありません。むしろ、世界史の学びなおしの「こういうところに気を付けてください」という注意喚起のようなものが今回の趣旨です。
なぜ注意喚起をするかと言えば、社会人のみなさんが生徒だったころと同じ罠に陥ること必至だからです。つまり、生徒のころと同じアプローチを気付かぬうちにしてしまい、結果同じ結末を迎えるということが容易に想像できるからです。
せっかく社会人になってから学びなおすのであれば、もっと自由に気楽にやりたいじゃないですか! ところがみなさんはある呪縛にとらわれているため、意外と自由に気楽にできないんです。
まずはみなさんのとらわれしその呪縛を解いていきましょう……
1.学びなおしを妨げる「呪縛」
そもそも、学びなおしをしようと考えている方の大半が、「世界史が苦手だった」あるいは「世界史をほとんど習ってなかった」という方だと思います。
で、社会人でやり直すんだから!と息巻いているあなた、そう、そこのあなたです。そのまま始めると失速する可能性が大ですよ。
こういってしまうと難ですが、みなさん高校までの授業を真面目に受けてましたか?? ちなみに私はいたってクソ「不」真面目に受けてましたよ、大体寝てましたし。
おそらく興味関心も持てないまま卒業してしまった方が大多数だと推測しますが、世界史って学校や塾・予備校で習っても結構な割合で挫折する人はいます(残念ながら、いえすみませんすみませんすみません)。
……人に習っておきながら挫折する、いわんや独学をや、です。
また、世界史はどうしても知識量が絶対的に多いんです。だからこそ手あたり次第に取り掛かると泣きを見ます。
例えば、『あさきゆめみし』という漫画をご存じでしょうか? 源氏物語を漫画化したものですが、この漫画は原作を忠実に再現しているため登場人物があまりにも多く、登場人物の人物関係を追いかけながら読まないと途端に混乱します。
私も文庫版で全巻読みましたが、各巻の頭についてる人物相関図と本編とを往復しながら読んだものです。これと同じような現象が、世界史の学びなおしでも起こり得るのです。前提知識が完全にゼロで「世界史総復習」的な本を読もうとすると、途端にこのような混乱が生じること請負です。
とまあ、こう言うと「あのときはやる気がなかったから……」とおっしゃる高尚な方がおられます。
いいですか! やる気なんてね! なくて当たり前なんですよ!!
そもそも「やる気」なんてものは脳科学的に存在しないという研究発表もあります。少なくとも出そうと思って出るもんじゃないんです。
この「やる気」こそが高校世界史、いえ高校までの勉強の最大の呪縛の正体です。少なくとも高校の時にできなかったのはあなたのやる気のせいではないです。ひょっとすると授業者の責任も結構あるかもしれないです。
私自身は、生徒が「できない」理由の6~7割は自分のせいであると考えています。謙遜ではなく本気です。
いずれにせよ、世界史という教科はその特性上、「やる気」で済まされる問題ではありません。これはどの教科にだって言えると思いますが。
というわけでして、学びなおしにしたってとりあえずなんかやってみようと手を出すと、結構辛いものがあると思います。
2.世界史の学びなおし方
ようやく本題です、お待たせ致しました(大陳謝)。
では一体全体、世界史の学びなおしはどうすればいいのか?
そこでおススメしたいのが、「テーマを決める」ことです。
世界史は時代も長ければ、西洋史、東洋史、アフリカ史、オセアニア史といった地域史に政治史、経済史、社会史、軍事史などなどジャンルの多岐にわたり、とても全部を追いかけることはできません。
しかし、この多様さを逆手に取ればいいと思います。すなわち、自分の好きなテーマを選んでその本を読んでみることです。
興味関心のあるテーマなら、何といっても取り掛かりやすいはずです。
こうして「面白そう!」と感じたテーマを拾い読みしていき、だんだんと間隔、すなわちミッシングリンクを埋めていくようにしていくと、長続きしやすいと思います。
社会人の学びなおしであれば、必ずしも先史時代や古代から順にやり直す必要はありません。
1つのテーマに絞ってみながら、
原因や背景、影響などを考察していくことに面白みがありますよ!
3.おススメの文献一覧
……さて、「好きなテーマを選べ」と言われても困るっつーの! というみなさま、ご安心ください! ここではそのヒントとなるであろう本やシリーズを紹介します。
① 創元社 「知の再発見」双書
めちゃめちゃおススメのシリーズです。わかりやすい文章にちょうど良いボリューム、そして何といっても豊富な図版のおかげで取り掛かりやすいです! そして選ばれるテーマもまたいいんですよねぇ! 『文字の歴史』『アレクサンダー大王』『錬金術』『紋章の歴史』『アーサー王伝説』などなど非常に面白い切り口のタイトルが目白押しです。
② イースト・プレス 『まんがで読破』
世界史だけでなく、歴史の授業で出てきた文学作品や著作。いわゆる「文化史」のジャンルですが、苦手って人多いですよね……
でも実は読んでみるとどれもこれも面白い! まずは学びなおしのきっかけに1冊手に取ってみては?
③ ウィリアム・H・マクニール 『世界史』
手っ取り早く世界史をかっさらいたい、という人にはこちらを。なんだかんだでしっかりとした通史の本です。そもそも、世界史全部を1人で書ける研究者ってなかなかいないですからね。日本の歴史にも触れられたりしているので面白いですよ!
……色々紹介しましたが、まずはご自身の直感を信じてあげてくださいね。
「何やこれ面白そう!!」という感覚が大事ですよ!
いかがでしたでしょうか。
では今回はここまで、読者の皆様のお役に立てましたら幸いです。
* * *
ここで、 重 大 な お 知 ら せ !!
……さて、この度(2023年3月)、「世界史の学びなおし」をテーマとした書籍を、なんと私自身が著すことになりました!
それがこちら ↓ です!!
この、『歴史の本質をつかむ「世界史」の読み方』では、
・そもそも「古代」とか「近代」って何??
・「帝国」と「王国」のちがいは??
・「産業革命」ってどゆこと??
といった、世界史を見る上で欠かせない、「概念」から見ていくというコンセプトになっています!
詳しくは、以下の記事をご覧ください。
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この一冊も、ぜひ世界史の学びなおしのおともにいかがでしょうか。
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