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内田先生のご講演を聴いて②「失敗したら滅び、成果が見えるまで長い時間がかかるのが共同体」

先日、内田樹先生のご講演を聴くチャンスがありました。
とても貴重な時間だったので、
心に残っていることを、
私の主観が混じりながら、
備忘的に記録しようと思います。その2です。


先生のお話:企業や政治家は交代できる

企業の役割はわかりやすい。
社長のもと、利益の最大化に向けて取り組む。
取り組めばいい。取り組むしかない。
その結果、利益が出なければその取り組みは失敗という評価に。
市場、マーケットの結果を見て、退場するしかない。
利益が出ればその取り組みは成功。
経済活動は、その売り上げ、利益で評価される。
プロセスはそれほど大切ではない。
だから、トップダウンでもよいし、
むしろトップダウンの方がわかりやすいこともある。

政治家も同じ。
言っていること、やっていることに対して
世論がNOといえば、選挙がNOといえば、
代わりの政治家が登場する。それだけのこと。

少しのエレメントが企業や政治家を動かす。
動いてしまう。

だから面白いと感じる、関心のある人が多い。
話題も面白いし、競争に加わりたい。

そういう価値観の人が多い。


それと役割が違うのは、教育、医療、司法、
私たちの共同体の財産。インフラといわれるものすべて。


先生のお話:共同体は継続的で安定的でなければいけない

共同体、私たちの社会は、失敗できない。
失敗はすなわち、滅びてなくなることだから。

学校、命というインフラは、機能停止してはいけない。
なぜなら、代わりがないから。

そういう意味で企業や政治家とは違う。

雨が降る、地震がある、火事がある。
変化があったとしても、その後には、
「学校」として人は集まり、勉強をしようとする。それが学校。
命を救い、次へつなげようとする、それが医療。

コロナがあっても、戦争があっても、震災があっても、
生きる人が一人でもいる限り、
教育、医療という普遍的なインフラは継続しなくてなならない。
むしろ、無くなることがない、無くなることが許されていない。

そのような役割を担うものと、
何かを投資して結果をすぐに求めるもの、
そして代替があるものは違うはず。

代替がないのに格付けされ、傾斜配分され、
選択と集中と言われ、教育や医療が選別されようとしている。
私財を投じた公共に対して、すぐに自分への結果を求める。
自らへのバック、リターンを求める。
結果がすぐに出ないのが、共同体の財産、インフラのはず。

教育なら、「成熟した大人に育ちました」というのが結果。
それは、失敗できないし、結果が出るまで長い時間がかかる。

先生のお話:そもそも地方公共団体が公共の役割を担っているのか

すぐに成果を求めるのは、教育に対してだけじゃなくなっている。
地方公共団体は企業ではない。
地方公共団体は、名前にもあるとおり「公共」。
パブリックを担うもの。
公共こそ、すぐにリターンがあるものではない。

教育と同じで、行政にもマーケットはない。
行政にとって失敗というのは、誰一人いなくなること。
消滅すること。
なのに、すぐに効果を求め、
私財の投資に対して、すぐにリターンを求め、
選択と集中だと言う、評価する、格付けをする。
早く早く早く早く早く。もっともっともっともっと。
公共の役割はなにか。

結果には長くかかるものがある。
それが共同体であり、公共である。


言葉を変えながら繰り返すワンテーマ

内田先生は冒頭、今日のテーマはなんだっけ?と
手元の資料を読み上げ始めた。
へえ~そうなんだ、とか言いながら笑いを誘いながら。

きっと、内田先生くらいにもなると、
信念は1つだけど、
見せ方のストックが豊富にあるんだと思う。

出席者の顔ぶれを見ながら、
共有する空間で、共有する話題で、流れをつくっていく。
誰一人飽きさせることなく。
求めていることのストレートな答えではなく。
自分で自分の答えに自力でたどり着けるようなヒントをちりばめながら。

そう、自立する大人は、答えを求めているのではない。
答えがあるとも思っていない。
仮にこれがあなたの求める答えよ、と言われても納得しない。

何度も考えながら、自ら選択すること。

生きていくって、そういうことなんじゃないかな。

何が幸せって、みんないつか一人で何も持たずに死んじゃうから、
自分で選び、決めること。それが幸せなんじゃないかな。 


先生のお話は、成熟した市民社会を目指そう、
というワンテーマだったように、私は感じます。
コミュニティを考えるという主催者のテーマにぴったり。

私たちは、コミュニティを生きている。
コミュニティでしか生きられない。

コミュニティでは、
成熟した市民がいきいきと、生活していてほしい。
公務員としての私の仕事は・・・
公共の役割をもっと意識しなければならないと感じました。




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