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佐藤千亜妃、最新アルバム『KOE』に込めた並々ならぬ覚悟「これが最後の作品になってもいいと思っていた」

佐藤千亜妃の2ndフル・アルバム『KOE』がついに完成した。

今年に入り、彼女に関するトピックスは続々と舞い込んできた。1月に公開され大ヒットを記録した映画『花束みたいな恋をした』の中では、きのこ帝国時代の楽曲「クロノスタシス」が重要な役割を果たす。そして3月の「声」デジタルリリース、4月スタートのフジテレビ系木曜ドラマ『レンアイ漫画家』の主題歌として「カタワレ」が起用。

日に日に注目度が増している中での今作は、満を持してであり、「渾身」と呼ぶにふさわしい一枚となった。それは、この後語られる本人の発言からも十二分にうかがい知れることだろう。

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■徹底的に自分と向き合った

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「前作の『PLANET』を作る前から、“声”をテーマにした作品を作りたいという思いは持っていました。ずっと身近にあるものですし、アーティストとして“歌声”というものに向きあっていかないといけない。そうした音として聴こえる声だけじゃなく、人には言えないこと、コロナ禍で人に会えない中で抱えた悩みなど、“声にならない声”も裏テーマとしてありました」

レコーディングがストップしていた自粛期間中、「音楽をやる意味は何か」そもそも「自分は何のために生きているのか」まで内省していたと言うだけあり、1曲目の「Who Am I」しかり、パーソナルな感情が強く込められた曲が並ぶ。

「昨年はミュージシャンの友人が亡くなってしまうという出来事もありました。そんな『人間、いつ死ぬかわからない』っていう状況の中だったので、本当にこれが最後の作品になってもいいっていうぐらいの気持ちでは作っていましたね」

■人を愛することで同時に「死」を意識

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すなわち「佐藤千亜妃」というアーティストの感性が最大限に発揮されているということだが、興味深いのは、アウトプットされたものの多くが「ラブソング」という点だ。

「あえてそうしようとは思ってはいなくて、自然とそうなっていった感じですね。自分が愛する人のことを考える時って、『生と死』もセットになっているんです。もちろん、その逆もありますし。身近な人の死に接したことで、そういった曲が多くなったのかもしれませんね」

とくに8曲目に収録されている「棺」という曲は、タイトルももちろんだが、「私を生きさせることが出来るのは この世界でたったひとり、あなただけ」と、歌詞にも如実に死生観が現れた形になっている。

「『棺』は私も好きな曲で、まさに“愛と死生観”が表裏一体になっている曲です。これはコロナ禍になる以前に日常の日々の中で書いた曲なので、一番“素”が出ているんじゃないかな」

■佐藤千亜妃が考える「名曲」の定義

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今作には、ギターに名越由貴夫、ベースに新井和輝(King Gnu)、あきらかにあきら(THE ORAL CIGARETTES)、ドラムに石若駿、mabanuaなど、そうそうたるメンバーが集まっている。ただネームバリューでオファーするのではなく、一曲一曲、最適な人選を行っていったという。

「音楽って、いびつさが組み合わさったときが美しいと思っているので、あれこれ指示を出さず、その人がいつも通りに弾いてカッコいい、っていうのをやりたかったんです。きのこ帝国では、同じメンバーだったので完成図も想像しやすかったんですが、ソロになると、何の枠もなさすぎて(笑)。今回の作品では頭の中に考えたことをベストに表現したかったので、時間をかけて人選にはこだわりましたね」

以前、と言ってもまだアーティストになる前のこと。彼女は「一生の目標は、死ぬまでに名曲を書くこと」とインタビューで答えていたが。時を経て改めて考える「名曲」とは。

「これは明確にあって、聴いた人が『自分の曲だ!』って思ってくれたらですね。私自身、この曲いいなあって感じるときって、普段考えている感情がそこで歌われていて、心に響いた時なんです。なんで自分が経験した感情が歌われてるんだろう、って涙が出てしまうくらい共感したり感動する曲。だから聞く人によって『名曲』は千差万別なのかなと」

■植物、コーヒー、牛乳……ステイホーム期間で“オタク気質”に火

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音楽のことから離れ、ステイホーム中に新たにハマっていたことについて聞いた。

「オーディション番組はかなり見ていましたね。いまだと『Girls Planet 999:少女祭典』
で、日中韓から集まった99人の女の子が一般投票で絞られていって、最終的に決まった9人でガールズグループとしてデビューするという趣旨の番組です。とにかく学ぶことが多くて、寝る時間も削って踊りを練習したり、ひたすらコツコツ頑張るんですよ。『これって意味あるのかな』って思うことも、彼女たちを見ていると『意味あるんだなあ』って思える。エネルギーを若い子たちからもらっています」

ほかにも、“オタク気質”と語る彼女らしい趣味が次々と口をついた。

「外出できないことから、緑に触れたくて『植物』にハマりましたね。私は根っこがぶっとい『塊根植物』を買ったんですが、強剪定をしたりして、形を変えて楽しんでいます。あとはコーヒーにも凝りはじめて、直火式のエスプレッソメーカーを買いました。ラテをよく飲むんですが、それに合う牛乳ベスト3も決定していて(笑)。日頃の小さな楽しみをどんどん深堀りしていましたね」

ライブ人数動員も徐々に緩和されているいま、今後実現していきたいイベントの青写真はあるのだろうか。

「きのこ帝国のとき、VJを合わせたライブがすごく良かったなあというのを、ふと思い出して。来年になるとは思うんですが、ソロでも映像を活かした企画は実現させたいですね」

【ライブ情報】
“KOE” Release Tour 2021「かたちないもの」
11.03(水祝)福岡 BEAT STATION
11.04(木)名古屋 ダイアモンドホール
11.12(金)仙台 Rensa
11.18(木)東京 Zepp Haneda
11.27(土)大阪 Zepp Namba


【作品情報】
2nd Full Album「KOE」
2021年9月15日(水)発売
通常盤(CDのみ): UPCH-20592 /¥3,300(tax in)
初回限定盤(CD + Blu-ray):UPCH-29408 / ¥6,380(tax in)
※映像のみプレイパス(R)対応
(プレイパス(R)…Blu-rayの映像をスマホで簡単にストリーミングもしくはダウンロード再生することができるサービスです。)

■CD収録楽曲
1. Who Am I
2. rainy rainy rainy blues
3. 声
4. カタワレ(フジテレビ系4月期木曜劇場『レンアイ漫画家』主題歌)
5. 甘い煙
6. 転がるビー玉(「NYLON JAPAN」創刊15周年プロジェクト映画『転がるビー玉』主題歌)
7. リナリア
8. 棺
9. Love her...
10. 愛が通り過ぎて
11. ランドマーク
12. 橙ラプソディー

■Blu-ray Disc収録楽曲(初回限定盤のみ)
1. PLANET
2. Summer Gate
3. Lovin' You
4. You Make Me Happy
5. リナリア
6. 橙ラプソディー
7. 転がるビー玉
8. 面
9. Spangle
10. lak
11. 空から落ちる星のように
12. 大キライ
13. キスをする
14. 春と修羅
15. 夏の夜の街


<『KOE』特設サイト>

<Music video>


【プロフィール】

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佐藤千亜妃(さとうちあき)
1988年9月20日生まれ、岩手県盛岡市出身。 2007年に大学の同級生とバンド「きのこ帝国」を結成。2019年5月に活動休止後、同年11月に初のソロ・アルバム『PLANET』をリリース。今作『KOE』を引っさげた全国ツアーは、11月3日(水・祝)福岡 BEAT STATIONよりスタートする。

Twitter Instagram 

Photo/持田薫
Text/東田俊介


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