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11代目『ピーター・パン』山﨑玲奈、憧れの高畑充希と同じ舞台へ「“嬉しさ”より先に“驚き”が来ました」

1981年に榊原郁恵が演じて以来、40年以上も再演されてきたブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』。バトンが受け継がれ、今回で11代目となるピーター・パンを演じるのは、第44回ホリプロタレントスカウトキャラバン「ミュージカル次世代スターオーディション」でグランプリを獲得した山﨑玲奈だ。
 
現在俳優として活躍する高畑充希、吉柳咲良などもここから羽ばたいていった、いわば「登竜門」とも位置づけられる舞台への抜擢。7月25日より東京国際フォーラム ホールCで初日を迎える前の心境を聞いたところ、充実した面持ちで答えてくれた。

■「私にしかできない『ピーター・パン』を作り上げます」

「小さい頃に、唯月ふうかさんがピーター・パンを演じられている公演を見たことがあって、それ以来ずっと出たい作品でした。でも、いざ『ピーター・パンやることになりました』って言われたときは、もう驚きの方が強くて、素直に喜びを表現できなかったです(笑)」
 
驚きの後に喜びが訪れ、そして歴史ある舞台の主役という現実に向きあう……まだ本格的な稽古はスタートしていないものの、乗り越えなければいけない壁はいくつもある。
 
「先日、4日連続でキャストのみなさんとワークショップをしたんですけど、もうすでに難しくて……。これまで私がミュージカルで培ってきたものが通用しない世界だったし、ピーター・パンになるにあたって、固定概念を全部捨ててイチからやらなきゃいけないんだなって思いました」
 
とは言いつつも、ピーター・パンを支えるキャスト陣とは打ち解けつつある様子で、パートナーとなるウェンディ役の岡部 麟(AKB48)は以前から面識もあったという。
 
「今年『ホリNS火曜祭』というイベントでご一緒させていただいて、すごく優しい方だったので、早く“ウェンディ”と舞台で会話したいです。フック船長役の小野田龍之介さんは……面白い方ですよね(笑)」
 
前任の吉柳咲良は、6年にわたって計5回ピーター・パンを演じており、毎年見てきた人にとっては、山﨑がどのように躍動するのか期待も大きいはず。もちろん、本人もそれも理解している。
 
「長年やられてきた吉柳さんからのバトンということでプレッシャーはあるんですけど、それが逆に燃えるというか、『自分にしかできないピーター・パンを見せるぞ!』っていう気持ちでみなぎっています」

■『アニー』のオーディションに落ちて火が付いた

彼女が舞台に興味を持つきっかけとなったのは、母親の存在が大きい。
 
「よく家でお母さんと映画を見ていて、『レ・ミゼラブル』とか、『ウエストサイドストーリー』『サウンド・オブ・ミュージック』とか、ミュージカルのジャンルが多かったんですね。それに影響されたのか、ずっと鼻歌を歌っている私を見て、『ミュージカルスクールに行ってみたら』って言われて。最初は習い事とか面倒くさいなって思ってたんですけど、1回見学に行ってみたら、すごく楽しそうだったので通い始めたんです。当時は愛媛に住んでいて、市民ミュージカルに出るので満足していました」
 
上京する転機となったのは、そのミュージカルの演出家に言われた言葉だった。
 
「『アニーの主演オーディションを受けてみたら』と言われたんです。ミュージカルは好きなんですけど、愛媛にいるし、一歩踏み出したらステージがガラッと変わっちゃうかなと思って、返事をはぐらかしていたんです。そのまま何ヶ月からしたら『いつ受けに行くの?』って言われて(笑)。じゃあ、良い経験だし試してみるかって受けたら、見事に落ちちゃいまして。それで、心の底から『悔しい』って思って」
 
ミュージカルではなく「アニーに出たい」という思いが湧き上がり、再度オーディションへ。その熱意は合格という形に結びついた。
 
「新国立劇場という、舞台の大きさにも緊張しましたけど、とくに出演者のレベルの違いを感じましたね。ただやりたくて集まっているわけじゃなくて、プロとしてやっていこうとする方たちが集まっているから、私も自然とミュージカルへの向き合い方が変わっていきました」

■「本当は緊張するタイプなんです」

その後、出演予定だった『スクールオブロック』が中止になったことを受け、「ホリプロタレントスカウトキャラバン」を勧められ、グランプリ受賞。審査員の鴻上尚史氏は「満場一致、ダンス・芝居・歌、パーフェクトだった」、そして宮本亞門氏も「全身に鳥肌が立った。正直に言うと、天才です。世界中に行ける力を持っている」と手放しで称賛した。目標は、憧れのあの俳優だ。
 
「事務所の先輩でもある高畑充希さんが大好きなんです。ドラマを見ていたときに、すごくお芝居が素敵だなと思って、お母さんに、『この人誰!?』って言ったのを覚えています。その後調べたら、舞台出身っていうのを見て、舞台もドラマも高いレベルで両立できる方っているんだって思って、それ以来憧れを持っています」
 
所属事務所も、そして『ピーター・パン』への主演にしても、高畑充希と同じコースを歩んでいる山﨑。“舞台とドラマの演じ方”には、いままさに悩んでいることだという。
 
「舞台に出演した後にドラマ現場に行くと、動きが必要以上に大げさになっちゃうんです。抑えめにしていても、ずっとムズムズしちゃって……。そこは今後鍛えなきゃいけないところですね。」
 
高校の友人にはおおっぴらに芸能活動をしていることを言っていないようだが、「もうバレてはいて、『今から映画(※2022年公開『劇場版おいしい給食 卒業』)見に行くね!』って連絡が来たことがありました。いちいち言わなくてもいいのに(笑)」と、徐々に周囲の認知度も高まってきた。

「上京してから舞台はまだ4本しか出てないんですけど、『結構出てますよね』って言われることがあって。知っていただけるのはありがたいんですけど、まだまだ経験不足なので、いろんなことを経験していって、いろんなことを知りたいです」
 
どんな質問にも、ハキハキとした答える様子を見ていると、およそ16歳とは思えない。「緊張しないタイプなんですね」と聞いたところ……。
 
「いや、本当に緊張するタイプなんですよ!いろんな人に『緊張してないですよね』って言われるんですけど……気づかれにくいタイプなんですかね。とくに『ピーター・パン』が決まってからは緊張がマックスなので、そう見えなくても『あの子緊張しながらやってるんだな』と頭の片隅に入れていてほしいです(笑)」

【リーズンルッカ’s EYE】山﨑玲奈を深く知るためのQ&A

Q.最近の“ハマりごと”を教えて下さい。

A.ずっと『スプラトゥーン3』をやっています。バトルゲームばかりで、ほっこりとしたゲームにはハマらないんですよね。家で『よっしゃ!』とか言いながらストレスを発散しています。放っておくと2時間以上は余裕でやってしまうので、お母さんに強制的に止められています(笑)

<編集後記>

舞台からこの世界に入ったからか、受け答えのレスポンス、声質、声量すべてがインタビュアーにとって心地よい。振り返ってみると、何百人とこうして仕事で接してきて、一番ではないだろうか?そう思うほど際立っていたし、会ってみると、不思議な魅力に引き込まれる。「不思議な魅力」をどうにか言語化したいのだが、最適な表現がイマイチ見当たらない。画面の向こうからでもそれはわかることだが、一番は生の舞台が顕著だろう(『ピーター・パン』に誘導しているみたいになったが、書いていたら偶然そうなったのであしからず)

<「ピーター・パン」プロデューサー談>

彼女に初めて会った時の印象は、純粋無垢な中に無限のエネルギーを持っていること。やわらかな雰囲気だと思いきや、持ち前の明るさとポジティブ思考で、周囲を引き込む力強さがあります。初めてのピーター・パンできっと不安なこともあると思いますが、それを微塵も感じさせずしっかり前を向いているので、とても頼もしいです。そんな彼女と一緒に、新しいピーター・パンを一緒に創り上げたいと思います。

<撮影の様子はこちら!>

<公演情報>
青山メインランドファンタジースペシャル
ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』
期間:2023/7/25(火)~8/2(水) 
場所:東京国際フォーラム ホールC
ホリプロステージにて、チケット好評販売中! 

【プロフィール】
山﨑玲奈(やまさき れな)
2007年1月28日生まれ。愛媛県出身。第44回ホリプロタレントスカウトキャラバン「ミュージカル次世代スターオーディション」グランプリを受賞。ミュージカル「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」リン役など。特技は、歌・ピアノ・モノマネ・ドラム。
Instagram

取材・文/東田俊介
写真/武石早代

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