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新しい形態の店舗、コンビニエンスストアで働く

ここ数ヶ月、仕事や出展などが立て込んで怒涛の日々を過ごしており、noteの投稿が止まっていました。
少し落ち着いたので、はるか昔、10代の頃に数ヶ月経験した怒涛のアルバイトについて書こうと思います。

コンビニ自体が新しかった

それは高校の卒業が近づいた頃。近所に新しくできたコンビニで、デザインの専門学校入学までの期間限定で始めたアルバイト。

「コンビニエンスストア」という形態自体がまだまだ新しい頃の話です。
大昔のコンビニ創成期。

職場となったコンビニは家の近くの商店街にできた新しいお店で、それまで付近にコンビニはなく、客として入ったこともあったかどうか…なレベルなので、オーナー店長からアルバイトまで全員コンビニで働くのは初めて(たぶん)。

オープン前には本部からトレーナーが来て研修がありました。

レジ打ちもバーコードがなく、値段をひとつひとつ打ち込んでいきます。間違った時の対応も練習しました。

コンビニの走りだったせいか、住宅街のわりと寂れた通り沿いの店なのに、カウンターでの品揃えはほぼフルラインナップ。アイス(サーティワンみたいなシステムで、20〜30種類くらいずらりと並んでた)から始まって肉まんあんまん類、フランクフルトソーセージ、おでんなど。チキンとかもあったかもしれない(他にもあったような気がするけど昔すぎて思い出せん)。もちろんその他にタバコなどもありました。

とにかく全部投入した感じ。コンビニ自体が新しかったので、いろんな検証がちゃんとされていなかったのかも。これが後々仕事の負担になります(少なくとも夜のアルバイトには)。

高校生、夜ひとりで働く

高校生だったのでバイトを始めた頃は授業があり、学校から帰って夕方から入り夜までのシフトでした。

コンビニという概念が新しかったせいか、はたまた「夜だから」という理由なのか(夜買い物する人は少ないよねという昔な感覚?)、経費節減なのか、引き継ぎの時間を除いてほとんどアルバイト一人だけ。深夜近くまで働いていましたが、そんなに遅くまで女子高生一人なんて、防犯上からも今ではちょっと考えられないですよね(今でもあるのかなあ?)。まあ平和な時代だったということなんでしょう。

ところがその時間帯は他のお店が閉まったあとで、仕事帰り、飲んだ帰りの人もいるため、かなり混むのです。散歩でふらっと訪れる人もいます。とにかく一軒だけ明かりがついている時間帯なので、人がどんどん入ってきます。

レジは度々長蛇の列になり、値段を一つ一つ打ち込みながら、お弁当を温めながら、アイスを懸命にすくいながら(ものによって硬いのがあったりして、これがものすごい大変だった)、値段を打ってお釣りを渡して…現役高校生なので処理速度はかなり速かったと思うけど、それでも全部手打ちなので当然打ち間違いが出て焦って訂正したり、怒り出して商品を投げつけるおじさんがいたり。

やっと波が引けたと思ったら少なくなったフランクフルトや肉まんなどの補充が待っています。コンビニが珍しいこともあったのか、まわりにアイスクリームの洒落た店もないし、こういうものは結構売れたんです。

毎回怒涛の(aka地獄の)数時間。これで時給たしか480円ほど。安かった…(子どもの頃の養鶏場より高給だったけど)。

昼の店の様子に衝撃をうける

とはいえ、まだ若かったしお金も必要だったので、働くってこんなもんかと思っていました。

でもある日の昼間、客として店に行って衝撃を受けました。

同じ店で働いているのはおばさまたち数人(ひとりじゃない)。レジにも何人か(ひとりじゃない)、品出しをしている人たちも何人か(ひとりじゃない)。

おしゃべりしながらのんびりゆっくり和気あいあいと働いていて、お客さんも数える程。夜の客数より圧倒的に少ない。

なんなんだこれは……ゆるい。同じ店とは思えない。

夜のあの殺伐とした緊張感は全くない。

いらついて怒り出す客もいない。

しかも当時は同一労働同一賃金という考え方は一般的でもなく、「高校生(子ども)は最低ランクの賃金」で時給が安く(夜でも)、ゆるい働き方でも、このおばさま方は私よりもたくさんもらっていたんですよね。「若い子はそれだけで薄給が当然」の時代であっても、さすがにこの違いっぷりに頭がクラクラ…

ただ、それも4月に専門学校が始まるまでの数ヶ月。割り切って気を取り直してがんばりました。

慣れてくると、毎日雑誌を立ち読みにくるジャージ姿の男とか、毎日決まったものをひとつだけ買っていく人とか、人間ウォッチ的な楽しみもできてきました。人の購買行動は定点観察で見てるとちょっと面白い。

3学期になると高校は週一で行けばよくなったので、昼は校正のアルバイト、夜はコンビニ。(冬休み中は郵便局のバイトと掛け持ちしてたと思う)
このふたつのバイトを比べると、昼間の仕事の時給は100円以上高いし、学生、主婦など関係なく同一賃金で同じペースでの仕事を要求される納得感がありました。入社(?)試験までして獲得したバイトだけのことはある感じ。IT系だったので時代の少し先を行ってたのかもしれない。

引き止められる

さて、やがて3月になり、専門学校が始まるのでバイトを辞めますとオーナーに告げたところ、採用の時にその話をしていたにもかかわらず「よく働いてくれるからぜひ続けて欲しい、残って働いてくれないか」とまさかの引き止め。

私が行く専門学校は夜学。学校諦めてコンビニでバイトを続けてくれということ?最低の時給でよく働くから?時給の良い昼のバイトを辞めてってことかなあ?……何を言っているのだろう?とさすがに思いながら丁寧にお断りしたのでした。

余談その1 ひどい話

オープン前からオープン後しばらくの間、本部からトレーナーが来ていたのですが、ある日他に誰もいないバックヤードで業務のことで話をしていた時、突然なにかぶつぶつ言いながら(衝撃でよく覚えていないけど不気味なナンパ的な内容だったと思う)両手で手を握られたことがありました。

今で言うセクハラというやつ(だけどこの気持ち悪さはそんな言葉では軽すぎる)。

あまりの気持ち悪さにうへっと思ってさっと手を引っ込め足早にそこを去り(逃げ)、そのあとすぐにこんなことがあったんですけど!とオーナーに訴えました。

すると彼女は眉をひそめて「ごめんね、気持ち悪かったね…」と同情したように言ったものの、それだけで終了。そのあとも本部に苦情を言うでもなく、本人に釘を刺すでもなく。特に何もしなかったんですね。そのトレーナーはそのあとも来ていました(なるべく近寄らないようにするしかなかった)。

中年男性に手を握られただけでも女子高生にとっては十分気味の悪いことだし、誰もいないバックヤードで…というところも考えたら結構危険(かなり大柄な男だったし)。あの時代なのでというのもあると思うけど(女子高生の言うことなんか誰もちゃんと聞いてくれなかった)、同性のオーナーなのにと心の底からがっかりしたのを覚えています。

今のコンビニはこういう訴えがあった時はちゃんと対応することになっていると思うけど(だよね?)、そんなわけで引き止められた時も(学校のない夜に続けるということも考えられなくはなかったけど)都合よく使って守ってもくれないところに長くいられるわけないと高校生ながら思ったのでした。

余談その2 切ない話

当時バーコードはなかったので、レジでは商品についている値札を確認して値段を打っていました。打数節約で0が複数あるキーもありました。

前述の通り、私のシフトの数時間は会社帰りの人たちや夜出歩く人、飲んで帰る人が買い物に寄る時間帯で、何度も波があり、その度に長蛇の列ができていました。皆さんただカゴに入った商品を買うだけでなく、カウンターのいろんな食べ物を一緒に注文したり、お弁当を温めるように頼んだり。お弁当を温める間待ってもらって次の人の精算をして、アイスをすくって、その間にお弁当が温まって…とそれすべて時間差×同時進行で対応していきます。大抵の場合、たったひとりで。

あまりの客数(と注文のバラエティさ)にだんだん訳がわからなくなってくることがあり、ある日00のキーを勢い余ってたくさん打ちすぎ、受け取った金額を100万で打ち込んでしまいました。そこまでならありそうですが、頭が追いつかずに「99万9千…のお返しになります」とそのまま言ってしまってから間違いに気づき、「あ!違…」となったんですが……

列に並ぶお客さんはまっすぐ私の顔を見たまま、ニコリともしてない。全員ただじっと怖い顔して待ってるんですよね。いや、間違った私が悪いんだけど。

せめてひとりくらい笑って欲しかった…と思ったけど、混雑時間帯に高校生一人が奮闘してたら、もう少しやさしくしてくれてもよかったんじゃない?と今は思う。この時じゃなかったかなあ、商品投げつけられたのは。

専門学校に入るまでたった数ヶ月。仕事としてはかなり短い部類だけど、強烈な印象が数十年経った今でも残る職業経験。

今でもカウンターのあちら側の気持ちがよくわかる気がして、コンビニやスーパーのレジでは人間らしく対等な感じでいたいなあと思っているのでした。


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